出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語32-4-241922/08海洋万里未 冷氷王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
ウヅの館
あらすじ
未入力
名称
国依別 高姫 鷹依姫 竜国別
カール 言依別 末子姫 神素盞嗚大神 松若彦
身魂の将来 大和魂 竜紋氷室
 
本文    文字数=8382

第二四章 冷氷〔九一五〕

 高姫は国依別の室を立出で、応援を求めてこの目的を達せむと、鷹依姫、竜国別の一室を訪問した。
『御免なさいませ……鷹依姫さま、竜国別さま、何とマア親子仲のよいこと、あなたも孝行な息子を持つて幸福ですなア。私のやうな独身者は親子睦まじう、さうしてござる所を拝見致しますと、実に羨ましうなつて来ました。本当に親子の円満なのは見よいものですワイ……時にお二人さまに至急御相談したい事があつて参りました。どうぞしばらくの間御邪魔をさして下さいませ』
『それはマアよう来て下さいました。伜の竜国別が孝行にしてくれますので、私も全く神様のお蔭だと思ひ、朝な夕なに感謝を致して居ります。若い時には随分極道で、何べんも親を泣かせたものでございますが、年の薬でこのやうな孝行な息子になつてくれました。子が無うて泣く親は無いが、子があるために泣く親は、世界に沢山ございますでなア。私は神様のおかげで、子があるために日々勇んで暮して居ります』
『それは何より結構でございます。しかしお二人さま、一つ聞いて貰はねばならぬことが突発して来ました』
竜国『高姫さま、ソリヤ大方国依別さまのお目出度い話でせう。本当に結構ですなア。不断から一寸変つた偉い男だと感服してゐましたが、ヤツパリ栴檀は二葉より馨し、蛇は寸にして人を呑むとやら、ヤツパリ身魂の性来は争はれぬものですワイ。私は今迄心易い友だちとして、ワレかオレかでつき合つて来ましたが、モウこれからは態度を改めねばならなくなつて来ました。本当に人の出世は分らぬものですな……高姫さま、あなたは国依別さまの結婚について御祝をしたいから、どんな物を送つたらよからうと云ふ同情ある御相談でせう……なアお母アさま』
『何から何まで、耳から鼻まで、目から口までつきぬけるやうな高姫さまがござるのだから、メツタにおつしやる事に抜目はありませぬ。高姫さまの御意見に御任せしなさい』
『ハイ』
『コレ竜国別さま、お前さまのお母アさまのおつしやつた通り、何事も私の意見に従ふのだよ』
『ハイ、従ひますよ。何を祝うたらよろしいでせうなア』
『エヽ辛気臭い、お祝ひ所の騒ぎですか。国家の興亡危機一髪の間に在り、地異天変の大騒動、何を気楽な、悠然として控へてござるのだい。マアよう考へて御覧、女たらしの御家倒し、家潰しの国依別のやうなガラクタ身魂と、誠水晶の生粋の大和魂の末子姫様と夫婦にでもしようものなら、それこそ白米の中へ砂を混ぜたやうなものだ。どうにもかうにもママになりませぬぞや。何とかしてこの縁談を冷す工夫をせなくては、国家の一大事だから御相談に来ましたのぢや』
『冷す相談ですか? この暑いのに俄に方法もありませぬワ。何しろ百度以上に逆上せ上つてゐるのですからなア。しかし冷さぬと腐敗の虞がありませう。あなた御苦労だが、一つ竜紋氷室へ走つて行つて、百貫目ほど氷を買つて来て下さいな』
『コレ竜どの、氷の話ぢやありませぬぞや。お前さまはこの暑さで氷の事ばかり思つてゐるものだから、何を云つても皆氷に聞えるのだよ』
『チツとカチワリにして、細かう云つて下さらぬと、氷解することが出来ませぬワイ』
『コレコレお前さまは私がこれほど熱心に話をしよるのに、頭から冷かすのかいなア』
『高姫さま、今冷さうと云つて来たぢやないか。さうだからお前さまの意見に従つて、冷かしにかかつて居るのだよ。冷笑冷罵の言霊を一つ進上致しませうか。今朝から井戸の中へ吊り下しておいたのだから……』
『エヽ訳の分らぬ男だなア。西瓜の事を誰が云つていますか!』
『コレコレ竜国別……勿体ない、高姫さまに向つて、さうツベコベと口答するものぢやありませぬぞえ……なア高姫さま、若い者と云ふものは、実に側に聞いて居つても、氷の側に居るやうに、ヒヤヒヤするやうな事ばかり申します。どうぞ冷静にお聞き下さいませ』
『高姫さま、お前さまは善言美詞の言霊を忘れましたか? 国依別さまがモウ一息で成功すると云ふ間際になつて、昔のアラをさらけ出したり、反対運動をすると云ふやうな非人道的な事がございますか。私は左様な相談には真平御免ですよ』
『私だとて国依別のアラをさらけ出すのは実に辛い、熱鉄を呑むやうな心持がするけれど、多勢の人民と一人とには替へられませぬから、止むを得ずイヤな事を云はねばならぬ因果な身の上……コレ鷹依姫さま、高姫の心の中を推量して下さいませなア』
『御尤もでございます。しかしながら神素盞嗚大神様の御所望により、言依別神さま、松若彦の神司のおきめ遊ばしたこと、吾々がどうかう申す権利もなければ場合でもございませぬ。どうなるのも皆神様の御仕組でございませうから、吾々としてはただお目出度いと御祝ひ申すより外に道はなからうかと存じます』
『エーエ、親子共、揃ひも揃うて分らぬ人だなア。これでは何程変性男子の系統……オツトドツコイ、これは云ふのぢやなかつた……高姫が、シヤチになつてきばつても、この濁流はせきとめる事は出来ないかなア……アヽ惟神霊幸倍坐世。どうぞ神様、早く善と悪とを立別け下さいまして、神素盞嗚大神様の貴の御子の結構な身魂を、国依別の泥身魂が汚しませぬやうに、夜の守り日の守りに守り幸はひ下さいませ。偏に御願申上げ奉ります』
『高姫さま、今となつて、何程ジリジリ悶えをしたつて駄目ですよ。私も余り国依別さまの悪口をきかされて、腹が竜国別となつてしまつた。サアサア一時も早く此処を竜国別として下さい。これから国依別さまの所へ御祝ひに行かねばなりませぬ……お母アさま、高姫さまに失礼して、親子揃うて、このお目出度い結婚の前祝に行つて来ようぢやありませぬか』
『どうなつと、御勝手になさりませ。後で後悔せぬやうに一寸気を付けて置きますぞえ』
『後で後悔どころか、最早この結婚の話は前以て公開された筈だ。アハヽヽヽ』
 かかる所へカールは勢ひよく走り来り、
『今言依別様の御居間へ招かれて行つて来ました所、タカとか鳶とかの雌鳥がやつて来て、畏れ多い大神様の思召によつて成立つた結構な結婚問題を冷かさうとして、百万陀羅泡を吹いて帰つたと云ふことでございましたよ。何れ鷹依姫様や竜国別様の御宅へもタカがケチをつけに行くだらうから、お前一つタカや鳶が出て来ても相手にならず、ぼつ返せとおつしやいましたからお使に出て参りました。グヅグヅしてると、タカや鳶に油揚をさらはれ、アフンとしても後の祭りだから、一寸言依別様の御命令によつて御知らせに参りました……オツトドツコイ、此処にタカとか高姫さまとか云ふ御本尊がござつたのかなア……大神様、どうぞ神直日大直日に見直し聞直し下さいませ。アヽ惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』

(大正一一・八・二四 旧七・二 松村真澄録)



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