出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語30-4-181922/08海洋万里巳 日暮シの河王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
日暮シの河
あらすじ
 国依別はマチとキジを従え日暮シの河へやって来た。一行が日暮シ山にあるウラル教の岩窟を訪れる相談をしている側を、アナンとユーズに率いられ、ヒルの都に攻めかけるウラル教の宣伝使・信徒の一団が通り過ぎる。
名称
キジ 国依別 マチ
アナン 石熊 ウラル彦 皇大神 盤古神王 ブール 桃太郎 ユーズ
荒しの森 ウラル教 軽生重死 高照山 竜の顋 チルの里 テルの国 バラモン教 日暮シの河 日暮シ山 否定の闇 ヒルの都 御倉魚 御倉山 三葉葵 琉球島 霊光
 
本文    文字数=8297

第一八章 日暮シの河〔八六〇〕

 三五教の宣伝使  国依別は御倉山
 社を後に立出でて  山河渉り野路を越え
 漸くチルの村外れ  荒しの森に辿りつき
 息を休むる折柄に  日暮シ山に岩窟を
 構へて教を開きたる  ウラルの彦のその一派
 ブール教主を始めとし  ユーズ、アナンの両人を
 左右の力と頼みつつ  数多の部下を引連れて
 荒しの森に出で来り  国依別を取囲み
 ただ一討ちにせむものと  群がり来る可笑しさよ
 国依別は泰然と  心豊に口の内
 生言霊を宣り終へて  琉球島に打渡り
 竜の顋の宝玉を  受取り球の神力を
 己が身魂に納めつつ  天下無双の神人と
 成り済ましたる今日の旅  数多の敵に打向ひ
 右手の拳を握りつめ  示指を差し伸べて
 押寄せ来る敵軍に  向つて霊光発射せば
 威力に打たれて一同は  雪崩をうつて逃げて行く
 国依別は只一人  脆くも逃げ行く敵の影
 目送しつつ高笑ひ  神の威徳を感謝する
 時しもあれやスタスタと  現はれ来る人の影
 マチ、キジ二人の信徒は  国依別の前に寄り
 両手をついて語るやう  私はチルの国人で
 ウラルの神を奉じたる  マチとキジとの両人ぞ
 饑饉の厄に苦みて  玉の命は今日明日と
 迫り来れる苦さに  国魂神を祀りたる
 社の下の谷川に  神の使の御倉魚
 姿を眺め手を合せ  無事安全を祈る折
 ウラルの道の宣伝使  数多引つれ出で来り
 軽生重死の教を説く  さは去りながら吾々は
 肉の命のある限り  パンをば外に神の道
 上なく尊くあればとて  現当利益あらざれば
 やはか諾ひまつるべき  如何はせむと、とつおいつ
 否定の暗に悩む折  実にも尊き宣伝使
 三五の月の御教を  御空も清く明かに
 宣らせ玉ひて神代より  神の禁ぜし御倉魚
 捕へて食ひ玉の緒の  命をつなぎこの世をば
 天国浄土と相見做し  尊き命を永らへて
 現世に永く働けと  思ひもかけぬ天来の
 救ひの道の福音に  吾等一同甦り
 歓喜の雨は忽ちに  涙となりて谷川に
 流れ注ぎし尊さよ  あゝ惟神々々
 かかる尊き神人を  吾等はいかでおめおめと
 このまま見逃しまつらむや  命の限り御後を
 慕ひて君の教言  さし許されて天国の
 清き教を四方の国  草の片葉に至るまで
 恵の露を与へむと  吾等二人は諜し合ひ
 故郷を後にしとしとと  御後を慕ひ来りけり
 国依別の神司  何卒吾等が願をば
 清く許させ玉へかし  大御恵みの万分一
 酬いまつらむ吾々が  固き心は千代八千代
 五六七の世まで変らじと  心定めし益良夫の
 誠受けさせ玉へよと  涙と共に頼み入る
 国依別は稍しばし  思案にくれて居たりしが
 あゝ是非もなし是非もなし  神の教の取次は
 一人の旅と大神の  定め玉ひし道なれど
 汝が切なるその願ひ  無下に断る由もなし
 しからば吾に従ひて  三五教の御為に
 皇大神の御尾前に  仕へまつれよマチ、キジよ
 天津大神国津神  国魂神に相誓ひ
 汝が願ひを許すべし  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませと  生言霊を宣りつれば
 マチ、キジ二人は雀躍し  神に任せしこの体
 仮令野の末山の奥  千尋の海の底までも
 神に仕へし神司  国依別の宣言は
 一つも背かず村肝の  心に銘じて守らなむ
 あゝ惟神々々  神の御蔭に預りて
 今日は嬉しき旅の空  国依別の生宮が
 御弟子となりて仕へ行く  天地開けし始めより
 誠の神に巡り合ひ  恵の露にうるほひて
 夜露に宿る月影を  伏し拝みつつ進む身の
 吾等は如何なる果報ぞと  喜び狂ふぞ勇ましき。

 キジ、マチの新入信者は国依別に従ひ、ヒルの都を指して、涼しき夜の道を喜び勇んで進み行く。日暮シ山の渓谷より流れ来る大河の辺に辿り着いた。広き河中に清流ゆるやかに流れて居る。されど永日の旱魃に河水は細り、今は川の一方のみ帯の如く、水が、お定目的に流れて居た。国依別は立止まり、
国依『ヤア、これが有名な日暮シの河だなア。随分に広い河だが、この頃の大旱魃にて河水も余程減じたと見える。こればかりは人間として如何ともすることが出来ないなア』
キジ『宣伝使様、この川上には日暮シ山の霊場と云つて、ウラル教の一派が大なる岩窟を掘り、其処に盤古神王の霊を祀り、非常な勢力でございましたが、テルの国の高照山の麓にバラモン教の石熊と云ふ宣伝使が現はれ、非常な勢力にて、ウラル教の勢力範囲に喰ひ入り、数多の信徒を作りましたため、この頃では余程衰頽した様子でございます。この間御倉山の谷川に現はれ、あなたの言霊に辟易して逃帰りたる教主のブールと云ふのが、この水上なる霊場に割拠して居ります』
国依『あゝさうであつたか。随分難所だらうな』
キジ『非常な難所でございますが、いつもこの日暮シ川は清い水が深くゆるやかに流れて居りますので、その山麓まで帆かけ舟が参ります。さうして交通を円滑にやつてゐましたが、こう川に水がなくなつては、大変に不便でございます。私も一二回、ウラル教の信者として参拝した事がございますが、それそれは実に立派な岩窟で、目も届かぬやうな広いものでございます』
国依『一度探険に往つて見たいものだなア』
マチ『そりや余程面白いでせう。あなたを桃太郎とし、キジ公が雉子の役をつとめ、私はマチと云ふ名のついた犬になつて御案内を致しませう。しかし猿の役をつとめる者がないので、一つ困りましたなア』
国依『アハヽヽヽ、そりやよい思ひ付きだ。しかし随分遠いだらうな』
マチ『里程は人の噂によれば、八里だとか、十里だとか、中には十三里あるとか、マチマチの噂ですから、その中を取つて先づ九里位にして置いたら如何でせうなア』
キジ『そんな道寄りをやつてゐますと、ヒルの都へ行くのが遅くなります。何れヒルを済まして、ゆるゆるお越しになつたら如何でせう、猿の役を勤める者がまたヒルの都で出来ませうから……』
国依『あゝそれも良からう。どつさりと金銀珠玉、珊瑚樹、瑪瑙、しやこなどあらゆる宝玉を満載して、桃太郎の凱旋も面白からう』
と笑ひ話に耽つてゐる。
 かかる所へ川上の方から、月の光に瞬きながら、幾十旒とも知れぬ白旗に、三葉葵の紋を赤く染め抜いて、夜風に靡かせつつ、幾百とも知れぬ人影、蜈蚣の陣を張りながら川に沿ひ、足許騒がしく、忙しげに此方に向つて進み来る一隊があつた。これぞアナン、ユーズの引率せるウラル教の宣伝使、信徒の一団がヒルの都に向つて攻め行く途中である。

(大正一一・八・一六 旧六・二四 松村真澄録)



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