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原著名出版年月表題作者その他
物語29-2-91922/08海洋万里辰 俄狂言王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
鏡の池
あらすじ
 高姫は鏡の池の神霊の威力に打たれて倒れてしまった。一同は高姫を懸橋の御殿に運び介抱する。常彦と春彦は高姫に改心を迫るが、高姫は我を通す。国玉依別はあきれているばかりだ。
名称
国公 国玉依別 高姫 竜公 玉公 玉竜姫 常彦 春彦 別公
アール アルナ姫 大八州彦命 国治立命 言依別 木の花姫神 皇大神 鷹依姫 竜国別 月照彦 日の出神の生宮 桃上彦 竜宮さま
天津祝詞 天の御柱 アリナの滝 自転倒島 鏡の池 懸橋の御殿 国の御柱 黄金の玉 底の国 テーナの里 テルの国 天教山 如意宝珠 根の国 反魂歌 ヒルの国
 
本文    文字数=12320

第九章 俄狂言〔八三一〕

 神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直し聞直し
 過ちあれば宣り直す  三五教の神の道
 神の恵の大八洲  彦命のまたの御名
 月照彦の神霊は  随時随所に現はれて
 三五教の神司  信徒等は云ふも更
 四方の民草悉く  恵の露にうるほひつ
 心の雲を吹き払ひ  晴れ渡りたる大空に
 天の御柱つき固め  掃き浄めたる村肝の
 心の土に惟神  国の御柱つき固め
 千代に八千代に神人の  身魂を永遠に助けむと
 現はれますぞ尊けれ。  皇大神の御恵みも
 アリナの滝の上流に  誠を映す鏡池
 堅磐常磐の岩窟に  神の御言を蒙りて
 夜なきヒルの神の国  テーナの里の酋長の
 誠アールやアルナ姫  桃上彦の昔より
 三五教の御教を  今に伝へて奉じたる
 尊き血筋の酋長は  家の宝と大切に
 親の代より守り居る  黄金の玉を取出し
 鏡の池に納めむと  数多の里人引率し
 遠き山坂打渉り  心も清き白旗に
 玉献上と書き記し  珍の御輿を新造し
 黄金の玉を納めつつ  縦笛横笛吹き鳴らし
 天然自然の石の鉦  磬盤法螺貝鳴らし立て
 谷を飛び越え川渡り  山鳥の尾のしだり尾の
 長々しくもヒルの国  テルの国をば跋渉し
 漸く此処に安着し  鷹依姫や竜国別の
 神の司の目の前に  恭しくも捧げつつ
 誠か嘘か知らね共  鷹依姫の神懸り
 仰せのままを畏みて  正直一途の酋長は
 国玉依別、玉竜姫の  神の命と夫婦連
 御名を賜はり千丈の  滝の麓に御禊して
 一日一夜を明かしつつ  アリナの滝を後にして
 鏡の池に往て見れば  豈図らむや鷹依姫の
 神の命を始めとし  三人の司は雲と消え
 行方も白木の玉筥に  種々様々神の旨
 書きしるしたる嬉しさに  アール、アルナの両人は
 草の庵を永久の  住家と定め池の辺に
 朝な夕なに神言を  声高らかに宣りつつも
 四方の国より詣で来る  善男善女を三五の
 誠の道に導きつ  神の御稜威も日に月に
 輝き渡り身を容るる  所なきまで諸人の
 姿埋まる谷の底  是非なく茲に信徒は
 大峡小峡の木を伐りて  山と山とに架け渡し
 八尋の殿を築きあげ  黄金の玉を奉斎し
 国玉依別、玉竜姫の  神の司は勇み立ち
 懸橋御殿に現はれて  教を開く折柄に
 玉に心を奪られたる  三五教の高姫が
 自転倒嶋を後にして  太平洋を打渡り
 テルの湊に安着し  常彦、春彦伴ひて
 金剛不壊の如意宝珠  その他の玉の所在をば
 アリナの滝を目当とし  現はれ来り村肝の
 心の善悪映すてふ  鏡の池の前に立ち
 相も変らぬ減らず口  傍若無人に罵れば
 数千年の沈黙を  破つて鳴りだす池の面
 ブクブクブクと泡だして  ウンウンウンと唸り声
 月照彦の神霊と  名乗らせ玉ひて五十韻
 珍の言霊並べつつ  高姫一同を訓戒し
 身魂を救ひ助けむと  計り玉ひし尊さよ
 自負心強き高姫は  持つて生れた能弁に
 負ず劣らず五十韻  アオウエイよりワヲウヱヰ
 ただ一言も洩らさずに  一々神に口答へ
 月照彦とは詐りぞ  ドン亀、鼈、蟹神と
 頭ごなしにけなしつつ  言葉の鉾を常彦や
 春彦の上に相転じ  生宮気取りで諄々と
 脱線だらけの託宣を  まくし立つれば池中の
 声は益々高くなり  大地の震動恐ろしく
 流石頑固の高姫も  色青ざめて慴伏し
 歯をかみしめて黒血をば  吐きつつここに平伏し
 次第々々に息の根は  細りて遂に玉の緒の
 生命の糸も細り行く。  あゝ惟神々々
 善悪邪正を明かに  心に映す鏡池
 底ひも知れぬ神界の  深き心ぞ尊とけれ
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ。

 懸橋御殿の神前に朝な夕なに奉仕する三五教の神司、テーナの里の酋長アール、アルナの夫婦は、月照彦神より、国玉依別命、玉竜姫命と名を賜ひ、朝な夕なに真心を籠めて、教を伝へつつありしが、茲に三五教の高姫が鏡の池に現はれて、堆く供へ奉れる諸々の玉を持帰らむとするを、国と玉との鏡の池及び狭依彦の宮に仕へたる神主は驚いて、懸橋御殿に急報し、教主夫婦と諸共にこの場に現はれ、高姫一行に向ひ、来意を尋ぬる折しも、傲慢不遜の高姫は、鏡の池の神霊が威力に打たれて打倒れ、殆ど人事不省となりければ、国、玉、竜、別などの神司と共に、常彦、春彦を伴ひ、懸橋御殿に担ぎ入れ、水よ薬よと介抱をなし、天津祝詞を奏上し、一二三四五六七八九十の神示の反魂歌を奏上し、漸くにして高姫は正気に復り、稍安心の胸を撫で下ろしたり。
 因に云ふ。アール、アルナの夫婦はその実、鷹依姫、竜国別の故意を以て、月照彦の神示と偽り、国玉依別、玉竜姫の名を与へたれ共、やはり惟神の摂理によつて神よりかくの如く行はしめられたるものにして、決して鷹依姫、竜国別の悪戯にあらず、全く神意によりて、両人は夫婦に神名を与へた事と、神界より見れば確かになつて居るのである。
 高姫はキヨロキヨロと四辺を見まはし、木の香かをれる新しき殿内に吾身のある事を訝かり、首を切りに振りながら、元来の負惜み強き性質とて……ここは何処ぞ……と問ひ尋ぬる事を恥のやうに思ひ、荐りに考へ込んで居る。常彦、春彦は高姫の左右に寄り添ひ、
『モシ高姫さま、お気が付きましたか。余り貴女は自我を立通しなさるものだから、とうとう池の神様に戒められ、人事不省に陥り、殆ど息の根も絶えむとする所、御親切にも、この御殿の主人、国玉依別様、玉竜姫様の御介抱と御祈念により、生命を助けてお貰ひなされたのですから、サア早く神様と、お二人に御礼を申しなさいませ』
高姫『妾がいつ……人事不省などと、汚らはしい、死にかけました。そんな屁泥い高姫ぢやございませぬぞえ。お前は神界の事が分らぬから、日の出神の生宮が、池の底の神の正体を審神するため、肉の宮を一寸立出で、幽界探険に往て居つたのですよ。それだから、心の盲と云ふのですよ。ヘン……阿呆らしい。神の生宮は万劫末代生き通し、アタ汚らはしい、人事不省に陥つたなどと、お前等と同じように人間扱ひをして貰ふと、チツと困りますぞえ。コレコレお前は国依別、玉治別、竜国別と云つたぢやないか。何時の間にやらこんな所へ魁してやつて来て、世間をごまかさうと思つて、国と玉とが一つになつて国玉依別だとか、玉竜姫だのと、そんなカラクリをしたつて駄目です。キツとそんな名前がついてる以上は、この館に国、玉、竜の宣伝使が潜んでるに違ない。また言依別も隠れて居るだらう。モウこうなつたら百年目だ。サア女の一心岩でも通す。金剛不壊の如意宝珠その他の神宝を撿めて、自転倒嶋の聖地へ持つて帰らねばおきませぬぞえ。コレコレ国玉依別とやら、お前は国や玉や竜の、蔭から糸を引く操り人形だらう。そんなこたア、チヤンと、この高姫の黒い眼で睨んだら一分一厘間違ひはありませぬぞや。ここに三五教の神館を、お前さま等が寄つて集つて建てたやうに思つて居るが、国治立命の御指図で、日の出神が片腕となり、竜宮さまの御手伝ひで出来上つたのですよ。日の出神の生宮だからチヤンと分つてる。ここの神司はそれが分つて居ますかな』
常彦『ナント徹底的にどしぶとい婆だなア、これだけお世話になつておきながらヨーモ ヨーモ、こんな憎たれ口が叩けたものだ。喃春彦、穴でもあつたらモグリ込みたいやうな気がするぢやないか』
春彦『開いた口がすぼまりませぬワイ』
と云つた限り、余りの事に呆れ果ててポカンとしてゐる。
常彦『イヤもうし、国玉依別御夫婦様、かくの通りの没分暁漢でございますから、自転倒嶋の聖地においても、皆の者が腫物にさはるやうに取扱つて居るのでございます。吾々だつてこんな腫物に従いて来たい事はございませぬが、気違を一人おつ放しておきますと、どんな事を致すやら分りませぬ。虎を野に放つやうな危険でございますから、吾々両人は世界のために犠牲となつて、精神病者看護人の積りで、はるばるとやつて参りました。何れ癲狂院代物ですから、必ず必ず御心にさえて下さいますな。何卒神直日大直日に見直し聞直し下さいまして、高姫の無礼をお赦し下さいませ』
と気の毒さうに述べ立てる。国玉依別は、
『実にお気の毒ですなア。決して決して気にはかけて居りませぬ。あなた方こそ、本当に御苦労お察し申します』
高姫『コレ常、天教山より現れませる日の出神の生宮を、天教山代物とは何だい。余り無礼ぢやないか。宣り直しなさい』
常彦『癲狂院に現れませる、鼻高姫命か、天教山に現はれませる木の花姫神のお使、日の出神の生宮様か、但は二世か三代か、男か女か、凡夫の吾々にはテンと判断が付きませぬワイ。アハヽヽヽ』
高姫『アヽさうだらうさうだらう。テンと判断がつかぬと云ふのは道理ぢや。偽らざるお前の告白だ。この日の出神の正体が、お前達に分るやうな事なら、この高姫も万里の波を越えて、こんな所まで来は致しませぬわいな。お前のやうな没分暁漢が世界にウヨウヨして居るから、実地の行ひを見せて改心させるために神の御用で来て居るのだぞえ。サアこれから肝腎要の言依別の盗み出した宝玉を受取つて帰りませう。お前もここまで従いて来たのだから、玉のお供位はさしてあげるぞえ。有難く思ひなさい。……コレコレ茲の宮番夫婦、早く玉を渡す手続を一刻も早くしなされや。グヅグヅしてゐなさると、神界の規則に照し、根の国底の国の成敗に会はさねばなりませぬぞえ』
 国玉依別は藪から棒の高姫の言葉に何が何やら合点が行かず、
『ヘー』
と云つたきり、穴のあくほど、高姫の顔を打ち見守つて居る。国、玉、竜、別、依の幹部を始め、常彦、春彦までが高姫の顔をジツと打眺め舌を巻き居たりける。

(大正一一・八・一二 旧六・二〇 松村真澄録)
(昭和一〇・六・八 王仁校正)



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