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原著名出版年月表題作者その他
物語28-3-161922/08海洋万里卯 盲亀の浮木王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
泰安城
あらすじ
 シヤーカルタン、トロレンスの民軍とセールス姫、セウルスチン、サアルボース、ホーロケース、タールスの一派、ツーレンス、ナンダールス、ビヤセールの城の重臣の一派は三角同盟軍を作り泰安城を占領して、カールス王をはじめテールスタン、ホールサース他の大将株を捕虜にして、淡渓上流の岩窟に閉じ込め拷問した。
 泰安城はセールス姫を女王とあおぎ、シヤーカルタン、トロレンスは左守、右守の司となり、サアルボース、ホーロケース、セウルスチンは重要な職についた。セールス姫の一派は「バラモン教の勢力を樹立しよう」と、三五教の日月潭に攻め寄せる。
 玉藻山の聖地では、マリヤス姫を神軍の将となし、日楯、月鉾、ユリコ姫、テーリン姫、照代姫、八千代姫がわずかの従者とともに戦った。5,6千人の敵軍の先鋒に対して、神軍が大蛇の鏡を使うと、鏡は強度の光輝を発し、敵軍は一人も残らず眼くらみ、心戦き、脆くも一戦をも交えずして、その場に将棋倒しに倒れてしまった。将のセウルスチン、サアルボース、ホーロケースも総崩れとなり泰安城に退却した。
 マリヤス姫は、倒れた敵軍の兵士を宣伝歌の言霊で目を癒して帰順させる。これらの兵士は神軍に加わった。
 マリヤス姫、日楯、月鉾は、帰順した兵士を率いて泰安城に進軍した。泰安城ではセールス姫以下サアルボース、ホーロケースの軍も防戦に努めた。三五教軍は、八千代姫の使った大蛇の鏡の威力で、敵軍全員を眼くらませ盲目にして帰順させた。マリヤス姫は大蛇の赤、白の玉でセールス姫を照らした。セールス姫は金毛九尾の悪狐と還元し、その他従臣も悪鬼、悪狐となって中空に逃げ去る。
 これよりマリヤス姫は城内に留まり、日楯、月鉾を淡渓の岩窟に向わせ、カールス王、ヤーチン姫、真道彦命を救った。一行は王を奉じて泰安城に戻る。日楯は盲目となって苦しむ数万の軍勢を宣伝歌の言霊で癒し、改心させた。
名称
悪鬼 悪狐 アンデーヤール ユウトピヤール ウラール エール オーイツク カーネール姫 カールス王 カントン キングス 金毛九尾の悪狐 サアルボース シーリンス シヤーカルタン セールス姫 セウルスチン タールス ツーレンス 月鉾 テーリン姫 テールスタン 照代姫 トーマス トロレンス ナンダールス ニユージエール ハール ハーレヤール 日楯 ヒユーズ ビヤセール ホールサース ホーロケース マーシヤール 真道彦命 マリヤス姫 マルチル ヤーチン姫 ヤールス姫 八千代姫 ユリコ姫
国治立大神 醜の曲霊 常楠 直日の霊
アーリス山 大蛇の鏡 向陽山 折伏の剣 真如の月 日月潭 摂受の剣 泰安城 玉藻の湖 玉藻山 淡渓 十曜の神旗 新高山 バラモン教 真澄の鏡
 
本文    文字数=15000

第一六章 盲亀の浮木〔八一六〕

 一旦三五教の真道彦の神軍のために潰走し、各地に潜伏して、捲土重来の時機を伺ひゐたるシヤーカルタン、トロレンス、セールス姫、サアルボース、ホーロケース、セウルスチン、タールス、ツーレンス、ナンダールス、ビヤセールの一派は三角同盟軍を作つて泰安城に夜陰に乗じ、鬨を作つて攻めかけ、石火矢を放ち、さしも堅固なる金城鉄壁も、一夜さの内に脆くも陥り、カールス王を始めテールスタン、ホールサース、ホーレンス、ユートピヤール、ツーレンス、シーリンス、エール、ハーレヤール、オーイツク、ヒユーズ、アンデーヤール、ニユージエール、ハール、カントン、マルチル、ウラール、キングス、トーマス、マーシヤール、ヤールス姫、カーネール姫の大将株を始め悉く捕虜となり、淡渓の上流なるカールス王が一旦陣取ゐたる岩窟城の暗き牢獄に残らず繋がれ、日夜の苛酷なる責苦に苦めらるることとなつてしまつた。
 一旦取返されたる泰安城は、セールス姫を女王と仰ぎ、シヤーカルタン、トロレンスは左守、右守の神となり、サアルボース、ホーロケース、セウルスチンは各重要の職に就き、再び新高山以北の地の政権を掌握し、勢に乗じて三五教の聖地日月潭を始め、国魂神の祭りたる宮殿を占領し、バラモン教の勢力を樹立せむと、セウルスチンを将となし、サアルボース、ホーロケースは副将となり、数万の軍卒を率ゐ、アーリス山を、旗鼓堂々として乗越え、今や玉藻の湖水の間近くまで押寄せて来た。
 茲に玉藻山の聖地よりは、マリヤス姫を神軍の将となし、日楯、月鉾、ユリコ姫、テーリン姫、照代姫、八千代姫は僅の従者と共に、この大軍に向つて、言霊戦を開始すべく立向うた。敵の先鋒隊と三五軍の一隊とは玉藻湖の畔で出会し、セウルスチンの率ゆる数多の軍卒は、少数の敵と侮りて、マリヤス姫の小部隊に向つて、竹槍の穂先を揃へ、獅子奮迅の勢にて吶喊し来る物凄さ。マリヤス姫は直にユリコ姫に命を降し、大蛇の鏡を取出さしめ、寄せ来る猛卒に向つて射照らさしめた。ユリコ姫の取出したる鏡は忽ち強度の光輝を発し、敵軍は一人も残らず、眼眩み、心戦き、脆くも一戦をも交へずして、その場に将棋倒しとなつて倒れてしまつた。
 セウルスチンは鏡の威徳に眼眩み、生命カラガラ部下に助けられ、何処ともなく遁走してしまつた。大将セウルスチンのこの見苦しき戦敗を見て、左右の副将サアルボース、ホーロケースは軍容を紊し、吾れ先にと泰安城指して、一目散に退却してしまつた。
 先鋒隊として此処に進みたる猛卒は、殆ど五六千人に及んで居た。一人も残らず目を失ひ、処狭きまでに打倒れて呻吟しつつ、手探り、足探りに逃げ行かむとしては、谷に顛落し、互に衝突して混乱を極め、その惨状目も当られぬばかりであつた。マリヤス姫は直ちに言霊を以て彼等を帰順せしめむと、声も涼しく宣伝歌を歌ひ出したり。

『神が表に現はれて  善と悪とを立分ける
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直せ聞直せ
 身の過ちは宣り直せ  朝日は照る共曇る共
 月は盈つ共虧くる共  仮令大地は沈む共
 セールス姫の軍勢は  如何に勢猛く共
 仮令幾万攻め来共  誠の神の御教を
 守りて立てる三五の  神の軍は悉く
 寄せ来る敵を打払ふ  心の眼を失ひし
 セウルスチンを始めとし  セールス姫の率ゐたる
 百の軍は悉く  心の眼のみならず
 肉の眼を失ひて  玉藻の湖畔に呻吟し
 のた打まはる憐れさよ  誠の神は世を救ふ
 吾はマリヤス姫の神  セウルスチンの軍人
 吾言霊を聞き分けて  誠一つの三五の
 神の教に立返れ  正義に刃向ふ刃なし
 神は吾等と倶に有り  汝の身にも神ゐます
 一時も早く真心に  なりて前非を大神の
 御前に悔いよ諸人よ  人は素より神の御子
 神に受けたるその身魂  研けば元に復るなり
 あが言霊の曲耳に  通ひし者は逸早く
 三五教の大神の  尊き御名を謹みて
 褒めよ称へよ神の御子  神の誠に通ひなば
 汝の眼忽ちに  月日の如く明らけく
 万の物を眺め得む  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』  

と歌ひ終るや、数千の目を失ひたる軍卒は叶はぬ時の神頼み………と云ふやうな按配式で、一生懸命に両手を合せ、声を揃へて、
『惟神霊幸倍坐世』
と幾回となく、繰返し繰返し奏上した。その声は四辺の山岳も動揺するかとばかり思はれた。しばらくにして目を失ひたる敵の将卒は、残らず目を開き、マリヤス姫その他の神軍に向つて跪づき、感謝の涙を滝の如く流しながら帰順の意を表し遂には三五軍に従ひ、泰安城の言霊戦に従軍する事となつた。
 マリヤス姫、日楯、月鉾は、偉大なる言霊の力を今更の如く喜びかつ驚きながら、俄に数千人の味方を得て、十曜の神旗を秋風に翻し、旗鼓堂々として泰安城に立向ふ事となつた。
 二男五女の神将を先頭に、数千の帰順者を引き連れ、泰安城の間近く押寄するや、サアルボース、ホーロケースは複横陣を張つて、防戦に努めた。この時八千代姫は右翼のサアルボースの軍に向つて、大蛇の鏡を射照らし、照代姫はホーロケースの左翼軍に向つて、同じく大蛇の鏡を差向け射照らせば、またもや一人も残らず盲目となり、ホーロケース、サアルボースまでも、眼くらみてその場に平伏し、独りも残らず帰順を表した。
 されどマリヤス姫は両軍の平伏する間を目もくれず、直に表門に向ひ、城中に日楯、月鉾を従へ、深く進み入り、セールス姫その他の侍臣等に向つて、赤、白の宝玉を差出し、これを射照らせば、セールス姫は忽ち金毛九尾の悪狐と還元し、その他の侍臣等は残らず、悪鬼、悪狐となつて、雲を起し、何処ともなく、中空に煙の如く消えてしまつた。
 これよりマリヤス姫は城内に止まり、照代姫、八千代姫、ユリコ姫、テーリン姫と共に玉藻の湖畔にて帰順したる兵士と共に、警固の任に当り、日楯、月鉾をして淡渓の上流なる岩窟の牢獄に遣はし、カールス王を始め、ヤーチン姫、真道彦命を救ふべく出張を命じた。
 日、月の兄弟は帰順せし兵士を四五百人ばかり引率れ、岩窟の牢獄指して進み入り、数十の番卒を片つ端より玉の威徳に帰順せしめ、自ら牢獄内に入りて、先づ第一にカールス王を救ひ出だした。カールス王は髭蓬々と長く延び、色青ざめ、身体骨立して、恰も死人の如く、見るも憐れな姿となつてゐた。日楯、月鉾はこの態を見て、同情の念に堪へ難く、吾父を先に幽閉したる憎きカールス王として、今迄怨み居たりし心もどこへやら消え失せ、ただ同情の涙にくるるのみであつた。
 カールス王は真道彦命の二人の子に救はれ、一層その慈愛深き兄弟の心に感じ、固く二人の手を握つて涕泣感謝に時を遷した。カールス王は漸くにして、潔く口を開き、
カールス『汝は日楯、月鉾の両人に非ざるか。汝が父の真道彦命は壮健なりや』
と問ひかけた。二人は口を揃へて、
両人『ハイ、吾父はあなたに幽閉されてより、未だこの牢獄に呻吟致し居る様子でございます』
カールス『早く汝の父を救ひ出せよ』
 二人はこの言葉にこの場を離れ、彼方此方と牢屋の外を巡りながら、
両人『日楯、月鉾の兄弟、父の真道彦命を救はむために参り候。願はくは在処を知らせ玉へ……』
と呼ばはつた。この声にヤーチン姫は間近の獄室より、細き手をさし出しながら、
ヤーチン姫『ヤアそなたは日、月の兄弟、よくマア救ひに来て下さつた。真道彦命様はこの隣室におゐで遊ばします。どうぞ早く救ひ出して上げて下さい』
 二人は父の在処の分りたると、ヤーチン姫の声とを聞きて、且喜び且驚きながら、直に牢獄の錠を捩切り、ヤーチン姫を救ひ出し、次に父の牢獄の戸をねぢ開け、進み入つて見れば、悲しや、真道彦命は痩衰へ、呼吸さへも碌に通つて居ないやうな瀕死の状態に陥つてゐた。二人は父の手足に取り付き、あたりを憚らず、嬉しさと悲しさに号泣するのであつた。この声幽かに真道彦命の耳に通じけむ、やつれ果てたる身を起して、力なげに目を見開き、
真道彦『アヽそなたは日楯、月鉾の両人、よくマアどうして此処へ来られたか。……アヽやつぱり、夢ではあるまいか』
と不思議相に兄弟の顔を見つめてゐる。兄弟は、
両人『父上様、決して夢でも現でもございませぬ。……実は斯様々々の訳……』
と有りし次第を、こまごまと物語つた。真道彦はこれを聞いて、俄に元気づき、旱天の草木が雨に会ひたる如く、顔の色さへ俄に冴えて来た。それよりカールス王、ヤーチン姫、真道彦命は日楯保護の下に、泰安城に一先づ入城する事となり、数百の軍卒に送られて、この牢獄を立去つた。
 月鉾はテールスタン、ホーレンスを始め、その他のカースル王に仕へ居たる重臣共を、悉く牢獄より救ひ出し、泰安城指して帰り行く。
 日楯はカールス王、ヤーチン姫、真道彦命を守つて、漸く泰安城の馬場近くになつた。ホーロケース、サアルボースの軍勢は大蛇の鏡に照らされて目を失つたまま、四つ這ひとなつて、蟻のたかつたやうに馬場を這ひ廻つてゐる。カールス王はこの態を見て、不審に堪へず、
カールス『彼は何者なりや』
と日楯に尋ねた。日楯は直ちに、
『ハイ、彼はセールス姫の家来にして、ホーロケース、サアルボースの部下の軍卒でございます。向陽山の大蛇の鏡の威徳に照らされて盲目となり、進退谷まつて、あの通り盲目のまま、暗路に迷うてゐる亡者共でございます。吾々は向陽山の常楠仙人より賜はりたる赤色の玉を以て、折伏の剣に応用し、弟月鉾は白色の玉を以て摂受の剣に応用し、数万の敵を彼の如く、一人も残さず、神の威徳に降服させ、セールス姫は金毛九尾の悪狐と正体を露はし、空中高く姿を消しました。実に稀代の神宝でございます。この神宝さへあらば、カールス王が泰安城にあつて、世を治め玉ふは実に易々たる事業でございます』
と玉、鏡の効用を略物語つた。王を始めヤーチン姫、真道彦命は首を傾け、この話を感に打たれて聞いて居る。
 茲に日楯は数万の盲軍に向つて言霊歌を宣り与へた。その歌、

『神が表に現はれて  善と悪とを立別る
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直せ聞直せ
 身の過ちは宣り直せ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 誠一つの言霊の  珍の力は世を救ふ
 神は吾等と倶にあり  人は神の子神の宮
 神の心に叶ひなば  仮令数万の曲津神
 鬨を作つて一散に  勢猛く攻め来とも
 いかで恐れむ敷島の  神の恵は忽ちに
 吾身の上に降りまし  直に開く胸の暗
 玉や鏡は非ずとも  心の玉を研きあげ
 神の賜ひし胸中の  真澄の鏡を照らしなば
 今見る如く曲神は  一人も残らず神力に
 恐れて大地に平伏し  神の御前に帰順して
 産の心に立帰り  心の盲も忽ちに
 開けて肉の眼さへ  月日の如く照り渡る
 あゝ惟神々々  神の御稜威を目のあたり
 カールス王やヤーチン姫の  珍の命の御前に
 只今明かし奉る  あゝ諸人よ諸人よ
 汝が心に潜みたる  醜の曲霊を追ひ出し
 神より受けし真心の  直日の霊に立返り
 国治立大神の  守り玉ひし三五の
 誠の道に従ひて  怪しき心を立て直せ
 あゝ惟神々々  あが言霊の一息に
 咫尺も弁ぜぬ盲目の  悩みは忽ち晴れ渡り
 真如の月は汝等が  心の海に輝かむ
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  神の御前に二心
 必ず起す事勿れ  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』  

と声も涼しく歌ひ了るや、今迄大地に盲目となつて呻吟しゐたる数万の軍勢は、一斉に目を開き、四人の前に両手を合せ、天津神の降臨かと感謝の涙に咽びつつ、心の底より帰順するのであつた。
 日楯は一同に向つて、三五の道の教を細々と説き諭し、各々一先づ家路に帰らしめ、カールス王その他と共に泰安城の奥殿に悠々として進み入るのであつた。

(大正一一・八・九 旧六・一七 松村真澄録)
(昭和一〇・六・八 王仁校正)



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