出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語28-2-81922/08海洋万里卯 混乱戦王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
淡渓カールス王の館
あらすじ
 ホールサース、マールエース、テールスタンの主戦論に押し切られ、真道彦命は出陣を決めた。三万人が竹槍を持ち泰安城へ向った。
 エールがセールス姫の間者達と一緒に、途中で、真道彦命の軍を待っていて、「シヤーカルタン、トロレンスが淡渓のカールス王の館を攻めている。サアルボースは王を奪われるくらいなら、王を弑すかも知れない」とカールス王を救うことを願う。テールスタンはそれを聞き、淡渓へ軍を向ける。
 トロレンスの一派に押されたサアルボースは、「王に自殺を迫り、従わない時は弑逆しよう」としていた折に、大火光が飛来して、サアルボースの前で爆発し、サアルボースはその場に倒れた。
 トロレンスの一派は突然現れた三五教軍に驚き、敗走した。サアルボースも気がつき、三五教の軍勢に驚き逃走した。カールス王はエールとテールスタンに感謝して二人を重く用いることとなる。
 泰安城では、セールス姫、セウルスチン、ホーロケースと、淡渓から逃げ帰ったサアルボースが、シヤーカルタンの民軍と戦っていた。そこへ、三五教のテールスタンの一隊と、真道彦命の軍が攻め寄せたので、大混乱となり、セールス姫の一派もシヤーカルタンの民軍も敗走した。その後、テールスタンの一隊と真道彦命の軍が、三五教同士で衝突した。
 テールスタンは形勢不利と見るや、カールス王の下に引き返し、虚実こもごも真道彦命の暴状を王に報告した。カールス王は怒り心頭に震える。一方、真道彦命はそんなことを知らず、泰安城に入り、戦勝の祝いをする。
 真道彦命は「王を泰安城に迎えよう」と、何人かの使いを送った。しかし、怒った王は使いを牢に閉じ込めていた。ついには、真道彦命自身がヤーチン姫を伴って王の元に向う。
名称
アンデーヤ ユウトピヤール ウラール エール オーイツク カールス王 キングス サアルボース シーリンス シヤーカルタン セールス姫 セウルスチン ツーレンス テールスタン トーマス トロレンス ニユージエール ハーレヤール ヒユーズ ホールサース ホーレンス ホーロケース マーシヤル マールエース 真道彦命 マルチル ヤーチン姫
月鉾 日楯 マリヤス姫
アーリス山 日月潭 泰安城 泰嶺 竹槍 玉藻山 淡渓 チユーリツク 天嶺 新高山 民軍 無抵抗主義 六菖十菊
 
本文    文字数=11599

第八章 混乱戦〔八〇八〕

 エールは乱暴を働き、大勢に取巻かれ、進退谷まつて、捷しこくも満座総立となつて立騒いで居る人々の股をくぐり、聖地を後に、二三の知己と共に、アーリス山を越え、泰安城の間近の山に身を忍ばせ、形勢如何にと窺ひつつあつた。
 一方八尋殿においてはホールサース、マールエース、テールスタン、ホーレンスその他の幹部連は再び議論の花を咲かした。テールスタンは立上りて、決心の色を面に現はし、満座に向つて云ふ。
『満場の諸君よ、一時も早く出陣を致さうではござらぬか。グヅグヅ致して居れば、シヤーカルタンやトロレンスの一派のために、泰安城を占領せられ、彼が手によつてカールス王を救ひ出す事あらば、吾等が今迄の希望も苦心も全く水泡に帰すべし。六菖十菊の悔を後日に残すよりは、若かず、一刻も早く衆を率ゐ、破竹の勢を以て、旗鼓堂々と泰安城に押寄せ、セールス姫の一派を撃退し、かつカールス王を救ひ、シヤーカルタン、トロレンスの一派に先鞭をつけ、本島の統治権を掌握致すは、今を措いてまたとある可らず。千戴一遇のこの好機、躊躇逡巡して、後日に呑噬の悔を残す事勿れ。如何に真道彦命、表面無抵抗主義を唱へ給へばとて、決してその本心には非ざるべし。先んずれば人を制すとかや、吾等率先して衆を引率し、泰安城に立向ひなば、真道彦命も、ヤーチン姫も必ず承諾し玉ふべし。三五教の教主として、あらはに神軍を率ゐ、泰安城の主権を握らむなどとは口外し玉はざるは当然である。そこは吾々幹部たる者一を聞いて十を悟るの知識なかる可らず。学古今を絶し、識東西を貫き玉ふ教主にして、目前に落下し来るこの天運を袖手傍観して受け入れ玉はざるの理あらむや。不肖ながらテールスタンの観察は謬りますまい。皆様、何卒御賛成を願ひませう』
 一同は何となく心勇み、歓声をあげ、賛意を表しける。
 茲にホールサースを大将と仰ぎ、マールエース、テールスタンを副将とし、日月潭の信徒を加へて、殆ど三万有余人、竹槍を携へ、愈時を移さず、泰安城に立向ふ事となつた。
 真道彦命は大に驚き、一同に向つて吾意にあらざる事を言葉を尽して、説き明せ共、逸り切つたる数多の人々、真道彦の言葉を却つて逆に取り、容易に一人としてその命に従ふ者はなかつた。真道彦は止むを得ず、幹部その他に推されて出陣する事となつた。日楯、月鉾の兄弟を天嶺、泰嶺の両所に残し、玉藻山の聖地にはヤーチン姫、マリヤス姫をしてこれを守らしめ、馬上豊に衆を率ゐて、心ならずも泰安城に向ふ事となつた。あゝ真道彦命の運命は如何になるらむか。
 先に逃走したるエールは、セールス姫の間者として玉藻山に忍び入り込みたるマルチル、ウラール、キングス、トーマス、マーシヤル等の一味と共に、数十人の部下を集め、アーリス山の北麓に、真道彦の神軍の到るを待伏せて居た。先頭に立つたるテールスタンはこれを見て大音声、
『ヤア、エール、汝は聖地を脱出し、少数の一味の奴原を引率し、吾等が大軍を待討たむとするか。弱小の味方を以て、雲霞の如き大軍に抵抗せむとするは、実に険呑千万であらうぞ。それよりも悔い改めて、再び吾軍に加はり、共に共に抜群の功名を致さうではないか』
と教ゆるやうに言つた。エールは笑顔を以てこれを迎へ、つかつかとテールスタンの前に近づき、堅く手を握り、両眼より熱涙を落しながら、
エール『あゝテールスタンよ、よくも云つて下さつた。一時の怒りより聖場を脱出し、泰安の都近く立帰つて見れば、シヤーカルタンやトロレンスの勢、頗る猖獗にして侮る可らず。吾等少数の味方を以て彼等に当るとも、何の効果もなきのみか、却て自ら滅亡の淵に飛び込む如きものでござる。それに付いても、カールス王の御身の上、サアルボースの一派、淡渓の館を十重廿重に取巻き、シヤーカルタンの寄手に向つて王を奪はれまじと厳しく警固し居れば、王の命は早旦夕に迫れり。思ふにセールス姫一派は、シヤーカルタン等にカールス王を奪はれ、これを擁立して泰安城に新しき政事を布くならば、吾等一派の一大事と心得、王を寄手に渡さじと全力を籠めて守り居るものの如し。さりながら寄手の勢益々猛烈にして、到底守る可らざるを知らば、サアルボースの一派は後難を恐れて、王を弑し、遁走するやも計り難し、これを思へば一刻も猶予す可らず。何卒三五教の神軍の一部を吾に賜はらば、王の生命は安全に守り奉る事を得む。曲げてこの儀御許しあれ』
と言葉を尽して頼み入る。テールスタンは直ちに自己の率ゆる神軍を以てエールの請ふがままに、淡渓の王が館に応援のため、出で向ふ事となつた。
 淡渓の館にはサアルボースの部下の者十重二十重に取巻き王の警固に当つて居る。トロレンスの一隊は淡渓の館に攻め寄せ、王を奪はむとして、サアルボースの部下と衝突し、互に一勝一敗、死力を尽して戦ひしが、寄せ手の勢刻々に加はり、サアルボースは最早身を以て免るるの余儀なきに立到つた。カールス王を敵手に渡しては、後日のために面白からずと、今は覚悟を極め、王に向つて自殺を逼り、万一肯んぜざれば、サアルボース自ら手を下して、王を弑せむとする折しもあれ、何処よりともなく、一塊の大火光飛来して、サアルボースの前に爆発し、大音響を立てた。サアルボースは忽ち失心してその場に倒れた。
 トロレンスの寄手は勝に乗じて早くも館内に乱入せむとする。時しもあれ、テールスタン、エールの率ゆる竹槍隊は雲霞の如く鬨を作つてこの場に現はれ来り、忽ち寄手に向つて遮二無二突込めば、トロレンスを始め全軍狼狽の結果、泰安城を指して敗走してしまつた。
 サアルボースは漸くにして正気づき、あたりを見れば、トロレンスの寄手は影もなく、それに代つてテールスタン、エールの三五軍の襲来せるに再び肝を潰し、僅に身を以てこの場を逃るる事を得た。テールスタン、エールはカールス王の前に出で、恭しく手を仕へて王の危急を知り、遥々救援に向ひし事を奏上した。王は立つて両人が手を固く握り、涙と共に感謝の辞を与へた。
 これより二人は王を奏じ、淡渓を溯り新高山の岩窟を仮りの城塞となし、テールスタンは一軍の半を割いて泰安城の攻撃に向ひ、残りの神軍はエールこれを統率し、王の身辺を堅く守り、時機を窺ひつつあつた。これよりテールスタン、エールの二人はカールス王の殊寵を蒙り、得意の時代に見舞はるる事となりぬ。
   ○
 一方泰安城にてはセールス姫、セウルスチン、ホーロケースの大将株、城内の兵を指揮し、華々しく立働き、容易に落城せず。寄せ手のシヤーカルタンの攻軍も素より烏合の衆なれば、稍厭気を生じ、内訌を起し、内部より瓦解せむとする危急の場合であつた。
 この時淡渓より逃げ去つたるサアルボースは、散乱せる味方を集め、応援のためにこの場に集まり来る。民軍の勢は稍回復し、この機を逸せず一挙に攻め寄せむと城塞を攀ぢ、乱入せむとする時しも、テールスタンの率ゆる一隊、後方より鬨を作つて攻めよせ来り、民軍は内外より敵を受け、再び窮地に陥り最早敗走の余儀なき立場となつた。この時後方より真道彦命の率ゆる大軍は、ホールサース、マールエースと共に軍を三隊に分ち、三方より泰安城に攻寄せ来る。この勢に辟易し、セールス姫、セウルスチン、ホーロケース、サアルボースもまた寄せ手の民軍も、敵味方の区別なく、雪崩の如く敗走したり。
 茲にテールスタンの率ゆる三五軍と、真道彦命の率ゆる三五軍とは、ゆくりもなくも大衝突を来し、テールスタンは形勢非なりと見るより、部下と共にカールス王の臨時の城塞に引返し、虚実交々真道彦命の暴状を進言したり。カールス王は怒り心頭に達し、如何にもして真道彦一派を滅ぼさむと、腕を扼し、歯を喰ひしばり、怒りの涙ハラハラと流し、無念さを堪へて居たり。
 一方真道彦命の神軍は悠々として泰安城に進み入り、真道彦命を始め、ホールサース、マールエースの副将以下、ホーレンス、ユートピヤール、ツーレンス、シーリンス、ハーレヤール、オーイツク、ヒユーズ、アンデーヤ、ニユヂエールその他の勇将と共に、チユーリツクを脱ぎ捨て戦勝の酒宴を催し、数多の軍卒を犒うた。城内の奥殿には三五教の大神を斎り、戦勝の礼代として各神殿に音楽を奏し、舞曲を演じ、神慮を慰め、城内は忽ち天国楽園の如くになつて来た。
 真道彦命はホールサースに命じ、玉藻山の聖地に在るヤーチン姫、マリヤス姫を奉迎して泰安城に帰らるべしと、信書を持たせ、急遽、聖地に遣はした。また一方カールス王の御在処を探り得たれば、マールエースをして少しの従者と共に、王を泰安城に奉迎せしめむと、急ぎ派遣したり。
 ホールサースはヤーチン姫、マリヤス姫を首尾克く迎へ帰りたれ共、何故かマールエースは旬日を経れ共帰り来らず、何の音沙汰もなきに不審を抱き、この度はホーレンスをして再び、王を迎ふべく、王の陣所に差し向けた。これまた幾日を経るも何の音沙汰無ければ、ユートピヤール、ツーレンス、シーリンス、ハーレヤールをして王を迎ふべく差し遣はしたれ共これまた何の音沙汰も無かりけり。
 茲に真道彦命は稍不安の念に駆られながら、この度はヤーチン姫を促し、自ら王の隠れ家に到りて、泰安城に奉迎せむとし、マリヤス姫その他に城を守らしめ、淡渓の上流なる王の陣屋に自ら出張したりける。

(大正一一・八・八 旧六・一六 松村真澄録)
(昭和一〇・六・七 王仁校正)



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