出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語28-1-41922/08海洋万里卯 淡渓の流王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
玉藻山
あらすじ
 真道彦命は、木の花姫に救われてから、アーリス山に姿を隠していた。ある日、ヤーチン姫がアーリス山の谷川へ籠に入れられて捨てらる。それを真道彦命が助けた。ユリコ姫とキールスタンもやって来て礼を言う。真道彦命はサアルボースの部下に知られないように一行をかくまう。
 真道彦命一行は玉藻山までやって来る。そこでは、日楯と月鉾が中心となり祭りを行っていたが、事情が分らない真道彦命は隠れて様子を窺う。
名称
キールスタン サアルボース 月鉾 日楯 ホーロケース 真道彦命 ヤーチン姫 ユリコ姫
国治立大神 木の花姫 竜世姫
アーリス山 高砂島 玉藻山 新高山 バラモン教
 
本文    文字数=7653

第四章 淡渓の流〔八〇四〕

 真道彦命はホーロケースの軍勢に包囲攻撃され、言霊を発射したれども、何故か少しも効力現はれず、遂にはホーロの鋭き槍先に胸を刺されて、アワヤ亡びむとする時しもあれ、木花姫の化身に救はれ、館を棄てて、二三の従者と共に、新高山の峰続き、アーリス山の渓谷に逃れ、谷間の凹所に草庵を結び、あたりの果物などを食しつつ神を祈り、時の到るを待ちつつあつた。
 頃しもあれや、絶壁の谷の傍に当つて、阿鼻叫喚の声切りに聞え来る。何事ならむと仰ぎ見れば、二人の男女谷を指し、『アレヨアレヨ』と、狂気の如く叫び廻つて居る。飛沫を飛ばす大激流に籐にて編みたる籠一個、浮きつ沈みつ流れ下るを見、直に真道彦命は三人の従者に命じ、『彼の籠を拾ひ来れよ』と命じた。され共滝の如き激流、近よるべくも非ず、一生懸命に拍手しながら言霊を奏上した。
 籠は不思議にも渦巻にまかれて、真道彦が足下の淵にキリキリと舞ひ寄つた。直に三人の従者は籠を拾ひ上げ、庵の前に担ぎ来り、中を改め見れば、容色端麗にして品格高き一人の美女、高手小手に縛られ、気絶して居た。四人は驚き、直に籠より引出し、水を吐かせ縛を解き、いろいろと手を尽して漸く蘇生せしむる事を得た。
 向ふの河岸に立てる二人の男女は、両手をあげて歓呼し、或は両手を合せ此方に向つて感謝の意を表して居る。
 蘇生せし美人は余りの疲労に、言葉も発し得ず、僅に目を開き、口をモガモガさせながら、何か言はむとするものの如くであつた。かくする事半日ばかり、日は漸く新高山の峰に没し、四面暗黒に閉された。四人は代る代る祝詞を奏上し、漸く暁の烏の声、彼方此方の谷の木の間に聞え始めた。
 この時何処より渡り来りけむ、二人の男女この場に現はれ、女の手を取り、
『ヤーチン姫様、よくマア無事で居て下さりました。キーリスタン、ユリコ姫でございます』
 この声にヤーチン姫はハツと気が付き、
『アヽ嬉しや、両人よくマア来て下さつた。何れの方かは知りませぬが、危き所をお助け下さつた。どうぞ両人よりよろしく御礼を申して下さい』
 両人は真道彦命に向つて、大地に両手をつき、
両人『有難うございます』
と云つた限りあとは嬉し涙にかき暮れて、無言のまま俯むいて居る。
真道彦『世の中は相身互、御礼を言はれては却て吾々の親切が無になります。マアマアゆるりと御休み下さいませ』
と奥の一間に三人を引入れ、あたりの木々の果物を取り来りて饗応し、種々の物語に時を移した。
 谷の彼方にはサアルボース、ホーロケースの部下の者共、ヤーチン姫の最後を見届けむと右往左往にさざめきながら、渓流の面を見つめて居た。庵の中より真道彦命はこの体を覗き見て、三人に警戒を与へ、暗に乗じて谷間を流に添うて遡り、アーリス山を渉り、漸くにして玉藻の湖水の畔に着いた。
 日楯、月鉾の二人は再び聖地を恢復し、教勢旭日昇天の如く天下に輝きたれ共、吾父の行方の不明なるに心を痛め、湖水の畔に来つて御禊を修し、祈願をこむる時であつた。数百の取次信徒は此処に集まり、共に感謝祈願の詞を奏上し居る際であつた。真道彦命はヤーチン姫、ユリコ姫、キールスタンその外三人の従者と共に此処に帰り来り、数多の人々の祈りの声を聞いて、暗を幸ひ、木蔭に身を潜め、様子を伺ひつつあつた。
 真道彦命は聖地の大変より、深くアーリス山の渓谷に身を隠し、世を忍び居たりし事とて、玉藻山の霊地は再び三五教に取返され、吾子の日楯、月鉾の二人が三五教を開き居る事を夢にも知らなかつた。それ故今この多人数の祈りの声を聞いて、もしやホーロケースの一派にはあらざるかと、深く心を痛めつつあつたのである。
 日楯は御禊を終り、衆人の中に立ち、宣伝歌を謡ひ始めたり。

『神が表に現はれて  善と悪とを立分ける
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直せ聞直せ
 身の過ちは宣り直せ  必ず人を恨むなと
 三五教の御教  さはさりながら さりながら
 吾等兄弟両人は  三五教の神司
 国治立大神の  清き教を宣べ伝ふ
 誠の道の宣伝使  真道の彦の生みませる
 三五教の取次ぞ  仮令天地が変る共
 親と現れます吾が恋ふる  真道の彦の御行方
 このまま見捨てておかれやうか  定めなき世と言ひながら
 何処の空にましますぞ  バラモン教の神司
 ホーロケースやその外の  魔神のために捉はれて
 百千万の苦みを  受けさせ玉ふに非ざるか
 思へば思へばあぢきなき  吾身の上よ身の果てよ
 父がこの世にましまさば  一日も早く片時も
 皇大神の恵にて  一目なりとも会はせかし
 せめては空行く雁の  便りもがなと朝夕に
 祈る吾等が真心を  汲ませ玉へよ天津神
 国津神達八百万  高砂島を守ります
 竜世の姫の御前に  心を清め身を浄め
 慎み敬ひ祈ぎまつる。  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つ共虧くる共  高砂島は沈むとも
 誠の心は世を救ふ  神の宣らせし太祝詞
 確かに証兆あるならば  吾願言を聞こしめせ
 玉藻の山は日に月に  神の光も輝きて
 旭の豊栄登るごと  栄えませ共あが父の
 居まさぬ事の淋しさよ  風吹く度に父の身を
 思ひ悩ませ雨の宵  霧の晨に大前に
 あが国人の安全を  祈る傍父の身の
 恙なかれと祈るこそ  日楯、月鉾両人が
 尽きせぬ願ときこし召せ  神は吾等と倶にあり
 神は汝と倶にあり  とは言ふものの情なや
 日に夜に研きし吾魂も  父を慕ひし恩愛の
 涙に心曇り果て  生死のほども弁へぬ
 暗き身魂ぞ悲しけれ  アヽ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』  

と兄弟は互に手を取り、足を揃へて踊りつ、舞ひつ、祈りを捧げて居る。
 この歌を聞いて、真道彦命は始めて吾子の消息を知り、かつ三五教の様子を略悟り、欣喜雀躍の余りこの場に立出で、二人の吾子に飛びつかんかとばかり気をいらだてた。され共、傍にヤーチン姫その他の人々のあるに心を奪はれ、轟く胸をヂツと怺へて、心静かに成行を見守つて居た。

(大正一一・八・六 旧六・一四 松村真澄録)



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