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原著名出版年月表題作者その他
物語27-5-181922/07海洋万里寅 神格化王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
琉球の島
あらすじ
 清彦、照彦は照子姫、清子姫を伴い、槻の洞穴に戻り父の常楠に結婚を報告した。常楠は、自分の素性を歌で教えた。そして、二組の夫婦の幸せを祈り、ハーリス山の山深く入り、仙人となって琉球島の守護神となった。
名称
エム 清子姫 清彦 セム 常楠 照子姫 照彦
秋彦 大竜姫 大竜別 国治立大神 国彦 国姫 国依別 言依別 駒彦 玉彦 玉姫 山人 若彦
浦安国 エルサレム 自転倒島 紀の国 熊野の滝 高砂島 玉の湖 槻の洞穴 ハーリス山 琉球島 琉球沼 琉球の玉
 
本文    文字数=8175

第一八章 神格化〔八〇〇〕

 清彦、清子姫、照彦、照子姫の二夫婦は茲に芽出度結婚の式を挙げた。槻の洞穴に在る父の常楠に報告し、かつ親子の杯を結ぶべくこの岩窟を立出で、エム、セムの二人を初め四五の従者と共に鰐魚の船に身を委せ、さしもに広き琉球沼を渡つて茫々たる草野を分け、辛うじてその日の夕間暮、常楠が洞穴の館に辿り着いた。
 常楠は四五の土人と共に祭壇の前に、清彦、照彦の幸福を祈りつつ、言依別一行の海上無事を祈る真最中であつた。二人の兄弟は二人の美はしき新妻を伴ひ、数多の供人を従へ意気揚々として茲に帰つて来た。常楠は一心不乱になつて祈願に余念がなかつた。兄弟夫婦はその傍に端坐して感謝祈願の言葉を奏上した。常楠は祝詞の奏上を了り後振り返り見れば、清彦、照彦は容色端麗なる二人の美女と共に行儀よく坐つて居た。
清彦『父上様、只今無事に帰りました』
照彦『嘸お待兼でございましたでせう』
常楠『ヤア思うたよりは早く帰つて来て下さつた。ヤアお前はこの間此処を立去つた清子姫、照子姫の二人ではなかつたか。縦から見ても横から見ても瓜二つ、寸分違はぬ綺麗な女、どうしてござつたか。この常楠も気が気でならなかつた。マアマア無事で何よりもお目出度い』
清子姫『貴方が噂に高き常楠の御父上でございますか。妾は清彦さまの女房になりました。どうぞ末永く可愛がつて下さいませ』
照子姫『妾は照彦さまの妻でございます。お父様、初めて……否再びお目に懸ります。好くも御無事で居て下さいました。どうぞ末永く我子として愛して下さいませ。何分不束な者でございますれば、お構ひなくお叱り下さいまして、幾久しく御召使ひのほどをお願申します』
 常楠は涙を浮べながら、
常彦『アヽ二人共好く言つて下さつた。この常楠もこれにて最早心残りは在りませぬ。夫婦仲好くどうぞ神業を完全にお務め下さい』
 清子姫と照子姫は「ハツ」とばかりに首を下げ、嬉しさと懐さの涙に暮れて居る。常楠は祝意を表しかつ自分の素性を明かすべく、銀扇を拡げて老の身にも似ず、声爽かに歌ひ始めた。

常楠『千早振る古き神代のその昔  神の都のエルサレム
 国治立大神の  いや永久に鎮まりて
 世を知食すその砌  遠津御祖の国彦が
 妻国姫と諸共に  神の御祭り麻柱て
 仕へ奉りし甲斐もなく  醜の建びの強くして
 子孫は四方に散乱し  吾が父母の玉彦や
 玉姫二人は自転倒の  島に姿を隠しつつ
 我れを生して何処ともなく  清き姿を隠し給ひぬ
 親に離れし雛鳥の  寄る辺渚の常楠は
 自転倒島を遠近と  巡り巡つて紀の国に
 細き煙を立てながら  情なき浮世を送る折
 天の岩戸の大変に  逢ひしが如く親と子は
 世の荒浪に吹き捲られて  分れ分れに世を送る
 頃しもあれや先つ年  尊き神の計らひに
 絡み合ひたる親子の対面  秋彦、駒彦始めとし
 心の色も清彦や  照彦四人に巡り会ひ
 尽きぬ縁を喜びつ  月日を送るその中に
 熊野の滝の禊場に  三五教の若彦と
 心清むる折もあれ  木花姫のあれまして
 常楠、若彦両人は  琉と球との神宝の
 いや永久に隠されし  秘密の国の琉球島
 竜の腮の宝玉を  受取りまして言依別の
 瑞の命に献ぜよと  言葉厳かに宣り給ふ
 その神勅を畏みて  汐の八百路を打渡り
 雨に浴し風に梳づり  大海原の潮をかぶり
 浪に呑まれ漸々に  琉と球とのこの島に
 上りて見れば昔より  人跡絶えし深山路の
 谷間に清き玉の海  老錆果てし常楠も
 玉の勢若彦と  日毎夜毎に上り来て
 天津祝詞を奏上し  大竜別や大竜姫の
 珍の命を言向けて  琉と球との宝玉を
 三五教の言依別に  奉らんと村肝の
 心定めし竜神の  胸も開けし時もあれ
 浪路をわけて渡り来る  言依別の大教主
 国依別と諸共に  仮りの宿りと定めたる
 この洞穴に現れまして  此処に四人の神司
 ハーリス山の谷間を  心いそいそ進みつつ
 竜の腮の宝玉を  恙も無しに手に入れて
 帰り来れる嬉しさよ  伜の清彦、照彦は
 如何なる神の引合せか  我れの住家を訪ね来て
 清子の姫や照子姫  四人は早くも仮の家に
 来り居ませる不思議さよ  言依別の大教主
 国依別を伴ひて  浪路を渡り高砂の
 島に出でんと宣らせつつ  この常楠が浪の上
 伴ひ来りし若彦に  琉と球との宝玉を
 持たせて遥かに自転倒の  島に帰させ給ひつつ
 この常楠を琉球の  島の守り神と神定め
 伜清彦、照彦を  左守右守の神として
 波を渡りて出で玉ふ  清彦、照彦両人は
 清子の姫や照子姫  此処に目出度く妹と背の
 契を結び永久に  この浮島を守らんと
 思ひし事も水の泡  清子の姫や照子姫
 闇に紛れて何処となく  姿隠させ玉ひしより
 清彦、照彦両人が  心の中の苦しさは
 如何ならんと父母の  我苦しみは一入ぞ
 天と地との神々に  朝な夕なに真心を
 籠めて祈りし甲斐ありて  今日は嬉しき清子姫
 照子の姫の若嫁に  巡り会うたる嬉しさよ
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましまして
 夫婦の仲は睦まじく  千代も八千代も永久に
 鴛鴦の契の何時までも  変らであれやどこまでも
 常磐の松の色深く  褪せずにあれや夫婦仲
 最早この世に残りなし  我はこれよりハーリスの
 山の尾の上を乗り越えて  この神島を永久に
 守らんために万代も  命永らへ山人の
 群に加はり長となり  世を永久に守りなん
 汝清彦、清子姫  光洽き照子姫
 心も清く照彦と  弥永久に何時までも
 南の島に出でまして  神の御業に仕へかし
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  我の身魂のこの島に
 止まる限り心安の  浦安国と幸はひて
 神の恵の露の雨  堅磐常磐に降らせなん
 最早この世に残りなし  孰もサラバ』と言ふより早く
 天の数歌歌ひ上げ  合掌するや常楠は
 全身忽ち雪の如く  真白になりて木の丸殿の入口を
 一足二足跨げ出しと思ふ間に  忽ち姿は白煙
 磯吹く風の音高く  空に聞ゆるばかりなり
 兄弟夫婦は驚いて  木の丸殿を走り出で
 空を仰いで手を合せ  父よ父よと呼ぶ声も
 吹き来る風に遮られ  尋ぬる由も泣くばかり
 天を仰ぎ地に伏して  親子の果敢なきこの別れ
 嘆き居るこそ哀れなれ  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ。  

(大正一一・七・二八 旧六・五 谷村真友録)



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