出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語27-5-161922/07海洋万里寅 琉球の神王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
琉球の島
あらすじ
 槻の洞穴にいる照子姫、清子姫、清彦、照彦はお互いの気持ちを打ち明けて一種異様の気分にうたれていた。そこへ、若彦、常楠、言依別命、国依別、チヤール、ベースが戻る。一同は再会を喜ぶ。
 「高姫が高砂洲までも言依別を追いかけていった」と聞いて、言依別は「琉球の玉を持っていては問題が起こる」と言依別と国依別の二人で玉の精を吸い込んで、精の抜けた玉は、若彦に預け、生田の森へ持って帰らせ、玉能姫と若彦で祭らせることにした。また、若彦は玉能姫との同棲を許された。
 言依別の命で、常楠は琉球島の土人の王、清彦と照彦は常楠と共に琉球島を守護することになった。言依別と国依別は、高砂洲から常世国、波斯の国、産土山脈の斎苑の館へ行くことになった。
 照子姫と清子姫は言依別を追って島を出た。清彦と照彦はそれに落胆したが、自分たちは紀の国に妻子がいたので、天則違反に思い当たり、恋を断念した。
名称
清子姫 清彦 国依別 言依別命 チヤール 常楠 照子姫 照彦 ベース 若彦
秋山彦 生田の森 国武彦命 国魂神 神素盞鳴大神 高姫 玉照彦 玉照姫 玉能姫 豊国姫
斎苑の館 産土山脈 自転倒島 紀の国 台湾島 高熊山 高砂洲 常世国 ハーリス山 比沼真奈井 波斯の国 再度山 麻邇宝珠 由良の港 琉球島 琉球の玉
 
本文    文字数=9165

第一六章 琉球の神〔七九八〕

 高姫一行が立去つた後の洞穴は、水入らずの男女四名、互に秘密を半打明けて一種異様の気分に打たれてゐる。
 かかる処へ言依別命は、国依別、若彦、常楠、チヤール、ベースその他の土人を引伴れ、この洞穴指して一先づ帰り来り、入口より中を覗けば灯火がついて居る。さうして奥の方に何か人影が見えてゐる。国依別は一同に向ひ、
国依別『ヤア皆さま、御苦労でございました。誰か気の利いた土人と見えるが、灯火をつけて待つてゐるやうです』
と云ひながら一足先に入つた。清彦はこの姿を見て、
清彦『ヤア』
とばかりに驚き、側に駆寄つて、
清彦『これはこれは国依別様でございますか。ヤア言依別の教主様、大勢の方々、よくマア御いで下さいました。御承知の通りの荒屋、苺が沢山にございますれば、悠乎と御召り遊ばして御話を願ひます』
国依別『ヤアお前は清彦ぢやないか。何時の間にやら我輩の邸宅を横領して、主人気取りになつてしまつたのだな……教主様、その他御一同様、清彦が御留守宅へやつて来て居ります』
清彦『どうぞ奥へ御通り下さいませ』
国依別『主客顛倒とはこの事だ。ヤア奥には照彦その他二人の頗る美人が居るではないか。中々抜目の無い男だね』
言依別『アヽ若彦さま、常楠さま、サア奥へ御進み下さい』
 常楠と若彦は琉、球の玉を奉じ、洞穴内の最も高き処に安置し、拍手を打ち一生懸命に何事か小声に唱へてゐる。
 清彦、照彦、清子姫、照子姫は両手をつき、
『これはこれは教主様、不思議な所で御目にかかりました。先づ先づ御無事で御目出度うございます』
言依別『ヤア有難う。御神徳を以て竜の腮の琉、球の宝玉はうまく手に入りました。就ては貴女方どうしてまた斯様な処へ来たのですか』
清子姫『ハイ、妾は比沼の真奈井の宝座において、照子姫様と禊を修して居りました。処が瑞の宝座は俄に鳴動を始め、四辺に芳香薫じ、微妙の音楽聞え来ると思ふ間もなく、忽然として現はれ玉ひし豊国姫の御神姿、言葉静かに宣らせ玉ふやう………この宝座は、妾寸時神界の都合によつてある地点に立向ひ、神霊不在となれば、汝等二人は一刻も早くこの場を立去り、由良の港の秋山彦が館に、竜宮の麻邇の宝珠集まり玉へばこれを奉迎せよ……神素盞嗚大神、国武彦命も御でましになつてゐる……との事に、旅装を整へ由良港へ参りしも後の祭となり、そのまま聖地に上り、玉照彦、玉照姫様の神勅や、貴方様の御教示を拝して高熊山に登り、三週間の行をなし、いろいろの神界の御経綸を承はつて、漸くこに参つたものでございます。ところが途中において船を暗礁に乗り上げ、生命危い所を御両人様に助けられ、結構なる御神徳をうけましたものでございます』
言依別『それは皆さま、結構でございました。吾々とても琉、球の宝玉をかくの如く無事に拝領し来れば、これよりは益々神徳著く、御神業も完全に成就する事と悦んで居ります』
国依別『モシモシ常楠さま、貴方の血縁の両人が此処に御越しになつてゐるといふのも、不思議の経綸ぢやありませぬか。照彦に清彦、照子姫に清子姫、これまた一つの不思議、…常楠に常彦、…これもまた不思議。畏れ多い事だが言依別様に国依別、若彦さまにチヤール、ベース、名までよく情意投合してゐるやうですなア。アハヽヽヽ』
常彦『お前は清彦、照彦の両人、ようマアこんな処まで探ねて来てくれた。親なればこそ、子なればこそだ』
 清彦、照彦両人は一度に、
両人『吾々は斯様なところでお父さまに御目にかからうなどとは、夢にも思つてゐませんでした。教主様の後をつけ狙つて高姫一行が参つたと聞き、心も心ならず、御後を慕つて御用の末端にもと思ひ、出て参りました。しかしながら最早教主様はこの島を既に既に御用了り、御出立の跡ならんと落胆致して居りましたが、しかしここで御目にかかりましたのは何より有難い事でございます』
言依別『あゝさうであつたか。それは大いに心配を掛けたなア。しかし高姫さまは執拗にも斯様なところまで、吾々の後を追つて来たのかなア』
清彦『高姫さまは仮令高砂島の果までも貴方の御後を尋ね廻り、七つの宝玉の所在を探して教主様を改心させなならぬと言つて、今の今とてこの洞穴に御越しに相成り、常彦、春彦と共に、大変に我々両人に毒吐いた揚句、一刻も猶予ならぬ。言依別の後を追つてやらうと云つて、慌しくここを立去られた所でございます。モウ今頃は何処かの浜辺から、船に乗つて漕ぎ出してゐる位でせう』
言依別『何処までも玉にかけたら執念深い高姫だなア。アヽ仕方が無い』
と双手を組んで思案に暮れる。
言依別『さうすれば高姫さまは、また我々の渡る高砂島へも行くに違ひ無い。琉、球の宝玉を持つて参れば、またしても罪を作らすやうなものだ。これから国依別と両人が玉の精霊を我が身魂に移し、形骸だけは……若彦さま、御苦労だが二つとも貴方が守護して、再度山の麓なる玉能姫の館へ持帰り、夫婦揃うてこの玉を保管をしながら、神界の御用をして下さい。貴方もこの御神業が成就した上は、玉能姫の夫として同棲されても差支は有りますまい』
 若彦はハツと驚き、有難涙に暮れながら、
若彦『情の籠つた教主の御言葉、有難く存じます。左様なればこの玉を保護致し、生田の森の神館へ持帰り、貴方の聖地へ御帰り遊ばすまで大切に守護致します』
言依別『早速の御承知、一日も早く御帰り下さい。……また常楠翁はこの琉球島の土人の神となり、王となつて永遠に此処に鎮まり神業に尽して貰ひたい。……清彦、照彦は常楠と共に本島を守護致し、余力あれば台湾島へも渡つて三五教を広め、国魂神となつて土民を永遠に守つて下さい。言依別はこれより国依別と共に、高砂島へ渡り、それより常世国を廻つて波斯の国、産土山脈の斎苑の館に立向ふ考へだ。随分神様の御恵を頂いて壮健無事に御神業に参加されよ』
と宣示する。一同はハツとばかりに有難涙を出し、頭を地につけて涕泣稍久しうしてゐる。
 ここに言依別は琉の珠の精霊を腹に吸ひ玉ひ、国依別は球の珠の精霊を吸ひ、終つて二個の玉手箱を若彦に渡した。若彦は押頂いて、直にチヤール、ベースの二人に船を操らせ宝玉を保護し、荒浪をわけて、再び自転倒島の生田の森に引き返す事となつた。
 これより若彦、玉能姫は生田の森において夫婦の息を合せ、神界のために大功を顕はしたのである。
 言依別命は国依別を伴ひ、琉球全体の守護権を、常楠、清彦、照彦に一任し、悠々として土人二名を引伴れ、船を操らせながら、万里の波濤を蹶つて高砂島に向つて出発された。また清子姫、照子姫は言依別の後を追ひ暗夜に紛れて船に乗り、高砂島へ進む事となつた。
 清彦、照彦はこの二人の美女が何時の間にか、この島より消え去りしに一時は落胆したが、よく顧みれば、自分には紀の国に妻子ある事を思ひ出し、天則違反の行動となるに思ひ当り、この恋を断念する事となつた。しかるに清彦、照彦二人の妻子は、夫を捨てて何処へか姿を隠したる事後に至つて判然し、常楠の命によつて貴人の娘を妻となし、清彦は琉球の北の島を、照彦は南の島を管掌し、永遠にその子孫を伝へたのである。
 また常楠はハーリス山の山深く進み入つて生神となり、俗界より姿を隠してしまつた。今に到るまで不老不死の仙術を体得し、琉球島の守護神となつてゐる。あゝ惟神霊幸倍坐世。

(大正一一・七・二七 旧六・四 外山豊二録)



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