出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語27-2-61922/07海洋万里寅 玉乱王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
聖地 錦の宮
あらすじ
 玉照彦と玉照姫は英子姫に紫の玉を持たせた。それを見た高姫は「玉は自分が保管する」と言い張る。国依別がそれに対抗するが、玉照姫は国依別を玉照姫の館に下がらせる。高姫は「言依別が聖地を去ったので、自分が教主になる」と主張して、玉治別と杢助も追い出そうとする。そこで、玉照姫が、「三五教の教主は言依別だが、神界の経綸によって高砂洲へ渡った。杢助は筑紫の洲へ出張。総務は東助で臨時教主代理も兼ねる。高姫、黒姫は相談役。玉治別たちは現職に留まるべし」と宣旨した。
 高姫はまだ反抗するが、玉照姫は「四個の麻邇宝珠の在処を探し、玉を持ち帰ったら、高姫を教主にする」と言う。高姫は「玉を探して持ち帰る。そのときには玉能姫、ムカデ姫、玉治別その他の者をクビにする」と言うが、また「玉の在処を知っているものがあれば密告してくれれば出世させる」とも言う。玉治別は「そんな人欲にとらわれて三五教に入ったものは一人もいない」と言う。
 そんな時、高山彦が「高姫との関係を解き、黒姫を離縁して、自分は竜宮の一つ洲へ戻る」と言い出す。黒姫は引きとめようとするが、高山彦は出てゆく。黒姫は後を追いかける」。
名称
秋彦 五十子姫 梅子姫 お玉 お民 久助 国依別 黒姫 佐田彦 高姫 高山彦 玉照彦 玉照姫 玉能姫 玉治別 テールス姫 友彦 初稚姫 波留彦 英子姫 ムカデ姫 杢助 黄竜姫
安珍 艮の金神 清姫 金勝要神 国治立命 言依別 田吾作! 玉依姫 東助 坤の金神 日の出神の生宮 ブランジー 紫姫 竜宮の乙姫
生田の川 宇都山郷 ジヤンナの郷 高砂洲 立替へ 道成寺 地恩郷 地の高天原 筑紫の洲 人欲 日高川 筆先 麻邇の玉 紫の玉 大和魂 竜宮の一つ洲
 
本文    文字数=15834

第六章 玉乱〔七八八〕

 玉照姫、玉照彦は口を揃へて、
『英子姫殿、紫の玉を我前に持来られよ』
と宣示された。英子姫は「ハイ」と答へて紫の玉を柳筥に納めたまま、恭しく捧持して二神司の前に奉らむとする時しも、高姫は、
高姫『一寸待つて下さい。また紛失すると大変だから、この玉は日の出神が保管致しておきます』
国依別『コリヤ高、また腹の中へ呑んでしまふ積りだらう。何程日の出神が偉くとも、玉照彦、玉照姫の御命令を反く訳には行くまい。……サア英子姫さま、お二方の御命令です、躊躇逡巡するに及びませぬ。早く献上なさいませ』
高姫『エーまたしてもまたしても、邪魔ばかり致す男だ。今日只今限り、国依別を除名する』
国依別『エーまたしてもまたしても、玉を呑まうと致す偽日の出神、今日只今より、国治立命、国依別の口を通し、高姫を除名する。ウンウンウン』
高姫『ヘン、おいて貰ひませうかい。何程国依別でも、国治立命様のお懸りなさる筈がありますかい。サア一時も早く国処立ち退きの命となつて帰つて貰ひませう』
 玉照姫、高座より声しとやかに、
玉照姫『高姫、国依別両人共、お控へめされ』
国依別『ハハー』
と畏縮してその場に平伏する。高姫、
高姫『エーエ、日の出神の生宮さへあれば良いのに、無用の長物……でもない。何と言うても二つの頭が並んで居るのだから、やりにくいワイ。両頭蛇尾と云つて、善悪両頭使ひの高姫も芝居が巧く打てませぬワイ』
と小声で呟いて居る。
国依別『高姫さま、玉照姫様の御命令もだし難く、貴女の除名を、国依別茲に取消し致します』
 高姫は舌をニヨツと噛み出し、あげ面しながら、二三遍しやくつて見せ、右の肩を無恰好に突起させ、
高姫『ヘン、……ようおつしやいますワイ。日の出神が更めて国依別を外国行と定めるから、喜んでお受けをなさるがよからう』
国依別『お前さまに命令して貰はなくとも、言依別神様、杢助様、国依別は三人世の元となつて、チヤンと外国で仕組がしてあるのだ。七つの玉もお先に海外のある地点に隠してあるのだから、要らぬ御世話でございます』
高姫『そんなら国依別、お前は早くから三人腹を合せて企んで居つたのだな』
国依別『どうでもよろしいワイ。虚実のほどは世界の見えすく日の出神様が御存じの筈だ』
玉照姫『国依別、改めて申し渡すべき事あれば、しばらく汝が館に立帰り、命を待たれよ』
国依別『ハハー、承知致しました』
と丁寧に挨拶をなし、終つて、
国依別『ヤア、テールス姫、玉能姫、玉治別、久助、お民さま、竜宮の女王黄竜姫、蜈蚣姫その他一統の方々、高姫、黒姫に対して、充分の防戦をなされませや。この国依別がこの場を立去るや否や、そろそろとまた吹き出しますからなア』
玉治別『ヤア有難う、あとは我輩が引受ける、安心して帰つてくれ。さうして言依別様によろしく申上げてくれ。……オツト失敗つた、言依別様は最早どつかへ御不在になつた筈だなア』
高姫『今の両人が話振を聞けば、玉治別も同類と見える。お前もトツトとここを退場なされ。日の出神が命令する』
玉治別『高姫さま、大きに憚りさんでございます。済みませぬが、私の進退は私の自由ですから、余り御親切に構うて下さいますな』
 高姫、杢助の方にギヨロリと目を転じ、
高姫『お前さまは総務を辞職した以上は、そんな高い所に何時までも頑張つて居る権利はありますまい。トツトと御下りめされ。サアこれからは、言依別は逐電致すなり、杢助は辞職をするなり、ヤツパリこの八尋殿は高姫が教主となつてやらねばならぬかなア。時節は待たねばならぬものだ』
玉治別『コレハしたり、高姫さま、誰の命令を受けて貴女は教主になるのですか。誰もあなたを教主として尊敬し、かつ服従する者はありますまいぞ』
高姫『コレコレ田吾さま、お黙りなされ。天地開闢の初から系統の身魂、日の出神の生宮が教主になるのは、きまり切つた神界の御経綸だ。それだから日の出神の守護に致すぞよと、お筆先にチヤンと書いてあるのだ。……今までは悪の身魂に結構な高天原をワヤにしられて居たが、世は持切には致させぬぞよ。天晴れ誠の生神が表に現はれて日の出の守護となつたら、今迄上へあがりて偉相に申して居りた御方アフンとする事が出来るぞよ。ビツクリ致して逆トンボリを打たねばならぬぞよ。それを見るのが神は辛いから、耳がたこになるほど知らしたが、チツとも聞入れないから是非なき事と諦めて下されよ。決して神を恨めて下さるなよ。我身の心を恨めるより仕様がないぞよ。……と現はれて居りませうがな。誰が何と云つても三五教は日の出神の生宮が表に立たねば、神界の仕組は成就致しませぬぞエ。誠の者が三人あれば立派に立替が成就するとおつしやるのだから、イヤな御方は退いて下されよ。誠一つの生粋の水晶玉の大和魂の根本の、地になる日の出神の生宮と竜宮の乙姫の生宮と、高山彦と三人さへあれば、立派に神業は成就致しますワイな。グツグツ申すと帳を切るぞえ』
玉治別『アハヽヽヽ、よう慢心したものだなア。……コレコレ波留彦さま、秋彦さま、お前と私と三人世の元となつて、高姫軍に向つて一つ戦闘を開始したらどうだ』
波留彦『それは至極面白い事でせう。……なア、秋彦さま』
高姫『コレコレ滝、鹿、田吾作、お前達は何程三角同盟を作つても駄目だよ。モウ今日から宣伝使なんか、性に合はないことをスツパリ思ひ切つて、紫姫さまの門掃きになつたり、宇都山郷に往つて芋の赤子を育てたり、ジヤンナの郷へ帰つて土人にオーレンス、サーチライスと持てはやされる方が御互に得策だ。(高姫は逆上の余り滝と友と同うして喋つてゐる)いよいよ日の出神が教主となつた以上は何事も立替だ。今更めて教主より除名するツ』
 玉照姫高座より、
玉照姫『三五教の教主は言依別命、神界の御経綸によりて高砂島へ御渡り遊ばした。また杢助は神界の都合により筑紫の島へ出張を命ずる。淡路の島の人子の司東助を以つて三五教の総務に任じ、かつ臨時教主代理を命ずる。高姫、黒姫は特に抜擢して相談役に致す。玉治別、秋彦、友彦、蜈蚣姫、黄竜姫、玉能姫は以前のまま現職に止まるべし』
と宣示し玉うた。
高姫『玉照姫さまもチツと聞えませぬワイ。玉照彦様は何ともおつしやらぬに、女のかしましい差し出口。何程結構な身魂でも、この三五教は艮の金神、坤の金神、金勝要神、竜宮の乙姫、日の出神の生魂で開いて行かねばならぬお道、お玉の腹から生れて出た変則的十八ケ月の胎生……言はば天下無類の畸形児ぢやないか。何とおつしやつても今度ばかりは命令を聞きませぬぞ』
玉照姫『汝高姫、四個の麻邇の玉の所在を尋ね、それを持帰りなば、始めて汝を教主に任じ、高山彦、黒姫を左守、右守の神に任ずべし。誠日の出神また玉依姫の身魂なれば、その玉の所在をつきとめ我前に奉れ』
高姫『そのお言葉に間違ひはありますまいな。よろしい。言依別と杢助の両人、腹を合せて隠しよつたに、間違ひない。証拠は……これ……この教主の書置き、立派に手に入れてお目にかけます。その代りにこれを持帰つたが最後御約束通りこの高姫が教主ですから、満場の皆様もよつく聞いておいて下されや。日の出神の神力をこれから現はしてお目にかける。その時には玉能姫、蜈蚣姫、黄竜姫、玉治別、友彦、テールス姫、久助、お民、佐田彦、波留彦……その他の連中は残らず馘首するから覚悟なさいませ、とはいふものの、玉の所在を知つてる者があれば、そつとこの高姫に云つて来い……でもよい。とに角以心伝心無声霊話でもよいから……』
 玉治別、両手を拡げ、体を前後ろにブカブカさせながら、
玉治別『アツハツハヽ、アツハツハヽヽ』
と壇上で妙な身振をして笑ひ出した。
高姫『オイ田吾さま、そろそろ守護神が現はれかけたぢやないか。その態は何ぢやいな。コレコレ皆さま、御覧の通り、日の出神が表になると、皆の身魂が現はれて恥しい事が出来ますぞえ。今の所は言依別や東助さまが表面主権を握つて居るやうだが、実際の所は床の間の置物だ。実地誠の権利は日の出神の生宮にあるのだから、取違をなされますなや。日の出神も中々大抵ぢやない。遥々と高砂島や筑紫の島まで行くのは並や大抵ぢやござらぬ。魚心あれば水心だ。出世をしたい人は誰に拘はらず、我れ一とお働きなされ。お働き次第で日の出神が御出世をさして上げますぞえ』
 波留彦一同を見まはしながら、
波留彦『皆さま、今高姫のおつしやつた通り、手柄のしたい人はお手を上げて下さい……一、二、三……ヤアただの一人も手を上げる人がありませぬなア』
玉治別『それで当然だよ。地位も財産も名誉も捨てて、一心に神界のために尽さうと云ふ誠の人ばかりだから、そんな人欲に捉はれて、三五教へ入信つた者は一人もありませぬワイ。人欲の雲に包まれてるのは高姫さまに黒姫さま、高山彦位なものだなア』
 一同手を拍つて「賛成々々」と呼ぶ。
高姫『口と心とサツパリ裏表の体主霊従ばかりがよつて来て、すました顔してござるのが見えすいて可笑しうございますワイの、オツホヽヽヽ』
高山彦『高姫さま、私は今日限りお暇を頂きまして、竜宮の一つ島へ帰り、元のブランヂーとなつて活動致します。仮令貴女が目的を達して教主になられても、私はあなたの麾下につくのは真平御免ですよ。……黒姫もこれから充分竜宮の乙姫さまを発揮して、日の出神さまと御一緒に御活動なされませ。左様なら……』
と云ひすて、玉照彦、玉照姫の方に向つて丁寧に辞儀をなし、
高山彦『英子姫、五十子姫、梅子姫、初稚姫、その外御一同様、御機嫌よく御神業に御奉仕遊ばされん事を高山彦祈り上げ奉ります。御一同の方々、この高山彦は今日限り高姫様と関係を解き、皆様の前にて公然黒姫に暇を使はします。どうぞそのお心組で高山彦を可愛がつて下さいませ』
玉治別『それでこそ高山彦さまぢや。感心々々』
 一同は「万歳」と手をあげて歓呼する。高山彦は、
高山彦『皆さま、左様ならばこれより一つ島へ参ります。高姫殿、黒姫殿、さらば……』
と立出でんとする。黒姫は周章て裾をひき止め、
黒姫『マアマア待つて下さんせいな。最前からのあなたの御言葉、残らず承知いたしました。……とは云ふものの情なや、過ぎし逢う夜の睦言を、身にしみじみと片時も、思ひ忘るるひまもなう、年月重ぬるその内に、うつり易いは殿御の心と秋の空、もしや見捨はなさらぬかと、ホンにあらゆる天地の神さまや、竜宮さまに願かけて、案じ暮した甲斐もなう、今日突然離別とは、余りムゴイ御仕打、これがどうして泣かずに居られませうか、オンオン』
とあたりを構はず、皺くちや顔に涙を夕立の如くたらして泣沈む。
玉治別『悔んで帰らぬ互の縁、中をへだつる玉治川。……サアサア高山彦さま、思ひ切りが大切だ。グヅグヅして居ると、またもやシヤツつかれますよ。あとはこの玉治別が、全責任を負うて引受けますから、一切構はず勝手にお越し遊ばせ』
高山彦『何分よろしく御頼み申す』
と立出でんとする。
黒姫『高山さまも聞えませぬ。お前と二人のその仲は、昨日や今日の事ではありますまい。私をふりすてて帰のうとは、余り聞えぬ胴欲ぢや。厭なら嫌で、無理に添はうとは言ひませぬ。生田の川の大水を渡つた時の私の正体、よもや忘れては居りますまいな』
高山彦『一度還元した以上は再び還元出来ぬ大蛇の身魂、もう大丈夫だ。日高川を蛇体になつて渡つた清姫のやうに太平洋を横切つて、高山彦の色男を尋ねて来なさい。地恩の郷の大釣鐘を千代の住家として、高山彦は安逸に余生を送る考へだ。さうすれば極安珍なものだ。何程お前が地団駄ふんで道成寺かうせうじなどといつて、藻掻いた所でモウ駄目だよ。アハヽヽヽ』
と大きく肩をゆすりながら悠々として出でて行く。黒姫は夜叉の如く、あと追つかけんと、婆さまに似合はず捩鉢巻をし、裾を太腿の上あたりまで引あげて、大股にドンドンとかけ出しかけた。玉治別は追ひすがつて黒姫の後よりムンヅとばかり帯をひつつかんで力に任せ、グツと引戻す。黒姫は金切声を出して、
黒姫『千危一機のこの場合、どこの何方か知らねども、必ずとめて下さるな。妾にとつて一生の一大事、アヽ残念や口惜しや、そこ放しや』
と振向く途端に見合す顔と顔、
黒姫『ヤアお前は意地くね悪い田吾作殿、ここは願ぢや、放しておくれ』
玉治別『意地くね悪い田吾作だから放さないのだよ。雪隠の水つき婆うきぢやと人が笑ひますよ。まあチツと気をおちつけなされ。高山さまばかりが男ぢやありますまい。男旱魃もない世の中に、コラまたきつう惚たものだなア』
 黒姫は、
黒姫『エー放つといて』
と力限りふり放し、群衆の中を無理に押分け人を押倒し、ふみにじりながら、尻まで出して一生懸命高山彦の後を追つかけ走り行く。

(大正一一・七・二四 旧六・一 松村真澄録)



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