出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語27-2-41922/07海洋万里寅 教主殿王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
聖地 教主殿
あらすじ
 教主殿で、梅子姫、五十子姫、英子姫、初稚姫、玉能姫、玉治別、言依別、杢助、亀彦、音彦が麻邇宝珠の処分について相談しているところへ、高姫、黒姫、高山彦がやって来る。三人は主席に据えられた。
 高姫は玉能姫や初稚姫に向って小言を言う。また、英子姫、梅子姫、五十子姫にも「岩戸を閉めた素盞嗚尊の娘として遠慮しなければならない」と言う。高姫は我を通している。玉能姫、玉治別も高姫に対抗して食ってかかっているが、英子姫たちがなだめたので、「高姫が九月二十三日に玉を調べる。同時に信者に玉を公開する」ことが決められた。
名称
五十子姫 梅子姫 音彦 亀彦 黒姫 言依別 高姫 高山彦 玉能姫 玉治別 初稚姫 英子姫 杢助
お節! お楢 お初! 田吾作! 玉依姫 日の出神(高姫) 平助 変性女子 八乙女 竜宮の乙姫 黄竜姫
天の岩戸 金竜池 九月二十三日 言霊閣 三十万年 諏訪の湖 竜の宮居 竹生島 帝国憲法第二十八条 二十世紀 如意宝珠 麻邇宝珠 紫の玉 竜宮の一つ洲
 
本文    文字数=21453

第四章 教主殿〔七八六〕

 松の老木、梅林  楓の紅葉、百日紅
 木斛、木犀、樅、多羅樹や  緑紅こきまぜて
 幽邃閑雅の神苑地  魚鱗の波を湛へたる
 金竜池に影映す  言霊閣は雲表に
 聳りて下界を睥睨し  神威は四方に赫々と
 轟き亘る三五の  神の教の教主殿
 八咫の広間に寄り集ふ  梅子の姫を始めとし
 神の大道に朝夕に  いそしみ仕ふる五十子姫
 闇をはらして英子姫  万代寿ぐ亀彦や
 五十鈴の滝の音彦や  心も光る玉能姫
 玉治別を始めとし  初稚姫や杢助は
 言依別と諸共に  奥の広間に座を占めて
 玉依姫の賜ひたる  麻邇の宝珠の処置につき
 互に協議を凝らし居る  時しもあれや玄関に
 現はれ来る三人連れ  御免々々と訪へば
 玉治別は出迎へ  一目見るより慇懃に
 笑顔を作り腰屈め  高姫さまか黒姫か
 高山彦の神司  ようこそお入来下さつた
 言依別の神司  その他数多のお歴々
 今朝からひどう御待兼ね  サアサア御通りなさいませ
 高姫軽く会釈して  それは皆さまお待兼ね
 奥へ案内願ひませう  黒姫さまや高山彦の
 神の司のお二方  サアサア共に参りませう
 黒姫夫婦は黙々と  ものをも言はず足摺りし
 静々あとに従うて  奥の間さして進み入る。

高姫『ヤアこれはこれは言依別様を始め、英子姫様その他のお歴々様方の御前も憚らず、賤しき高姫、恐れ気もなく御伺ひ致しまして、さぞ御居間を汚すことでございませう。何事も神直日大直日に広き御心に見直し聞直しまして、この老骨をお咎めなく可愛がつて下さいませ』
 一同は一時に手をついて、礼を施した。
言依別『高姫様、そこは端近、ここにあなた方お三人様のお席が拵へてございます。どうぞこちらへお坐り下さいませ』
高姫『何分にも身魂の研けぬ、偽日の出神の生宮や、体主霊従の身魂ばかりでございまするから、そんな正座につきますのは畏れ多うございます。庭の隅つこで結構でございますが、御言葉に甘えて、お歴々様の末席を汚さして頂くことになりました。どうぞ左様な御心配は下さいますな』
玉能姫『高姫様、さういふ御遠慮には及びますまい。教主様の御言葉、どうぞお三人様共快くお坐り下さいませ』
高姫『コレお節、御歴々様の中も憚らず、何をツベコベと……女のかしましい……口出しなさるのだ。チツと御慎み遊ばせ。もう少し神様の感化によりて淑女におなりなさつたかと思へば、ヤツパリお里は争はれぬもの、平助やお楢の娘のお節だけあつて、名は立派な玉能姫さまでも、ヤツパリ落付きがないので、かういふ時には醜態もない。高姫がかう申すと、猜疑心か、意地悪かのやうに思ふでせうが、決して私はそんな心は毛頭も持ちませぬ。お前さまの身魂を立派なものに研き上げて、神業に参加なさつた手前、恥しくないやうに、終始一貫した神司にして上げたいばかり、お気に障るやうなことを申しますワイ。必ず必ず三五教の教は、悪意に取つてはなりませぬぞ。序に初稚姫にも云うておきますが、お前もチツとは我慢が強い。何程杢が総務ぢやと云つて、親を笠に被り年端も行かぬ癖に肩で風を切り、横柄面を曝してはなりませぬぞ。金剛不壊の如意宝珠を何々したと思つて慢心すると、また後戻りを致さねばなりませぬから、慈母の愛を以て行末永きお前さまに注意を与へます』
玉能姫『ハイ何から何まで御心をこめられし御教訓、猜疑心などは少しも持ちませぬ。この上、何事も万事足らはぬ玉能姫、御指導を御願ひ致します』
高姫『お前さまはそれだからいかぬのだ。ヘン、言依別の教主さまから、紫の玉の御用を仰せつけられ、何々へ何々したと思つて、鼻にかけ、玉能姫なんて、傲慢不遜にもほどがあるぢやありませぬか。そんな保護色は綺麗サツパリと払拭し去り、何故お節とおつしやらぬのだ。かう申すとまたお前さまは平助でもない、お楢でもないやうな、お節介ぢやと御立腹なさるだらうが、人は謙遜と云ふ事が肝腎ですよ。今後はキツと玉能姫なぞと大それた事は御遠慮なさつたがよからう。何から何まで、酢につけ味噌につけ、八当りに当つて根性悪を高姫さまがなさるなぞと思つちや大間違ですよ。……これお節さま、わたしの申すことに点の打ち所がありますかなア』
玉能姫『ハイ、実に聖者のお言葉、名論卓説、玉能姫……エー否々お節、誠に感服仕りました。その剛情……イエイエ御意見には少しも仇はございませぬ、しかしながら個人としてはお節でも、お尻でも少しも構ひませぬが、神様の御用を致します時は、教主様から賜はつた玉能姫の職掌に奉仕せねばなりませぬから、公の席においては、どうぞ玉能姫と申すことをお許し下さいませ』
高姫『女と云ふ者はさう表に立つて、堂々と神業に参加するものではありませぬ。オツトドツコイ……それはエー、ある人の言ふ事、私とても女宣伝使、女でなくちや、天の岩戸の初から夜の明けぬ国、言依別の教主様もヤツパリ女に……綺麗な女の言葉は受取易いと見えますワイ。オツホヽヽヽ、もうこう皺が寄つて醜うなると、到底若い教主様のお気に入らないのは尤もでございます。こんなことを申すと、また高姫鉄道の脱線だとおつしやるかも知れませぬが、決して脱線でも転覆でもございませぬぞ。皆日の出神さまが私の口を借つての御託宣、冷静に聞き流されては高姫聊か迷惑を致します。お節ばかりでない、お初もその通り、初稚姫なぞと大それたことを言つちやなりませぬぞ。本末自他公私を明かにせなならぬお道、神第一、人事第二ぢやありませぬか。私は系統の身魂、四魂の中の一人、日の出神の生宮、言依別さまが何程偉くても人間さまぢや。人間の言ふことを聞いて、この生神の言葉を冷やかな耳で聞き流すとは、主客転倒、天地転覆も甚しいと云はねばなりませぬぞえ。……コレ田吾作、お前も余程偉者になつたなア。竜宮の一つ島へ行つて、玉依姫様に玉を頂きながら、スレツからしの黄竜姫に渡したぢやないか。ヤツパリ田吾作はどこまでも田吾作ぢや、どこともなく目尻が下つて居る。何程顔が美しくても……その声で蜴喰ふか時鳥……、心の奥の奥まで、なぜ見抜きなさらぬ。そんな黄竜姫のやうな若い方に渡すのならば、なぜスツと持つて帰つて、立派な生宮にお渡しせぬのぢやい。お節だつて、お初だつて、皆量見が間違つて居るぢやないか。あんまり甚しい矛盾で、開いた口が塞がりませぬワイな。……コレコレ英子姫さま、梅子姫さま、五十子姫さま、お前さまは変性女子の系統、天の岩戸を閉めた身魂の血筋だから、よほど遠慮をなさらぬといけませぬぞえ。人がチヤホヤ言うと、つい好い気になるものだ。何程立派な賢い人間でも、悪くいはれるのは気の好くないもの、寄つてかかつて持上げられると、つい好い気になり、馬鹿にしられますぞえ。表で持上げておいて、蔭でソツと舌を出す世の中でございますからな』
英子姫『ハイ、有難うございます。御懇切な御注意、今後の神界に奉仕する上においても、あなたのお言葉は私のためには貴重なる羅針盤でございます。しかしながら面従腹背的の人間は、この質朴なる今の時代にはございますまい。善は善、悪は悪とハツキリ区劃が立つて居りまする。左様な瓢鯰的の行動をとる人間は、三十万年未来の二十世紀とか云ふ世の中に行はれる人間同志の腹の中でせう』
高姫『過去現在未来一貫の真理、そんな好い気な事を思つて居らつしやるから、無調法が出来ますのだ。エ、しかし大した……あなた方に不調法は出来て居らないから、先づ安心だが、しかし三五教は肝腎要の日の出神の生宮は誰、竜宮の乙姫即ち玉依姫の生宮は誰だと云ふ事が分らなければ、どこまでも御神業は成就致しませぬぞ。それが分らねば駄目ですから、今後は私の云ふ事を聞きますかな』
玉治別『モシ英子姫様、決して何事も高姫さまが系統だと云つて、一々迎合盲従は出来ませぬぞ。婆心ながら一寸一言申上げておきます』
英子姫『ハイ有難うございます』
高姫『コレ田吾、お前の出る幕とは違ひますぞ。日の出神が命令する。この場を速に退席なされ』
玉治別『ここは言依別様の御館、御主人側より退席せよと仰せになるまでは、一寸も動きませぬ。我々は神様の因縁はチツとも存じませぬ。ただ言依別の教主に盲従否明従して居るのですから、御気の毒ながら貴女の要求には応じかねます。何分頻々として註文が殺到して居る、今が日の出の店でございますから、アハヽヽヽ』
高姫『コレ黒姫さま、高山彦さま、お前さまは借つて来た狆のやうに、何を怖ぢ怖ぢしてるのだ。日頃の鬱憤………イヤイヤ蘊蓄を吐露して、お前さまの真心を皆さまの前に披瀝し、諒解を得ておかねば今後の目的……否神業が完全に勤まりますまい』
黒姫『あまり貴女の……とつかけ引つかけ、流暢な御弁舌で、私が一言半句も申上げる余地がなかつたのでございます』
高姫『アヽさうだつたか、オホヽヽヽ。余り話に実が入つて気がつきませなんだ。そんなら黒姫さま、発言権を貴女にお渡し致します』
黒姫『ハイ有難うございます。私としては別にこれと云ふ意見もございませぬが、ただ皆様に御了解を願つておきたいのは、竜宮の乙姫様即ち玉依姫様の肉のお宮は、黒姫だと云ふことを心の底より御了解願ひたいのでございます』
杢助『アハヽヽヽ』
黒姫『コレ杢さま、何が可笑しいのですか。チト失敬ぢやありませぬか』
と舌鋒を向けかける。
杢助『黙して語らず……杢助の今日の態度、さぞ貴女にも飽き足らないでせう。杢助は総務として、責任の地位に立つて居る以上、成行きを見た上で、何とか申上げませう』
黒姫『コレ玉治別さま、玉能姫さま、一番お偉い初稚姫さま、お前さまはあの玉を誰に貰つたと思うて居ますか』
初稚姫『ハイ、竜の宮居の玉依姫様から……』
玉能姫『竜宮の乙姫さまから………』
黒姫『そらさうに違ひありますまい。そんなら私を何とお考へですか』
初稚姫『あなたは怖いお婆アさまの黒姫さまだと思ひます。違ひますかな』
玉能姫『竜宮の乙姫様の生宮だと聞いて居りまする』
黒姫『さうか、お前さまはヤツパリ年とつとるだけで、どこともなしに確りして居る。しかしながら聞いたばかりで、信じなければ何にもなりませぬぞ。信じて居られますか、居られませぬか、それが根本問題です』
玉能姫『ハイ、帝国憲法第二十八条によつて、信仰の自由を許されて居りますから、信ずるも信じないも、私の心の中にあるのですから……』
黒姫『成るべくはハツキリと言つて貰ひたいものですな』
玉能姫『ハツキリ言はない方が花でせう。……ナア初稚姫さま、あなたどう思ひますか』
初稚姫『私は黒姫さまを厚く信じます。しかし乙姫様の生宮問題に就ては不明だと信ずるのです』
黒姫『誰も彼も歯切れのせぬ御答弁だな。女童の分る所でない、神界の御経綸、どんな人にどんな御用がさせてあるか分らぬぞよ……とお筆に出て居ります。マアそこまで分れば結構だ。……コレコレ玉治別さま、お前さまの御意見はどうだな』
玉治別『私の御意見ですか。私の御意見はヤツパリ御意見ですな。灰吹から蛇が出たと申さうか、藪から棒と申さうか、何が何だかテンと要領を得ませぬワイ』
黒姫『さうだろさうだろ、分らな分らぬでよい。分つてたまる事か。広大無辺の神界のお仕組を、田吾作さま上りでは分らぬのが本当だ。これから私が神界の事を噛んで啣めるやうに教へて上げるから、チツと勉強なされ』
玉治別『お前さまに教へて貰ひますと、竹生島の弁天の床下に隠してある三つの宝玉が出て来ますかな。私もその所在さへつきとめたら、竜宮の乙姫の生宮だと云つて、羽振を利かすのだけれどなア。序に日の出神にも成り澄すのだが、……黒姫さま教へて下さいますか』
高姫『コレコレ黒、黒、黒姫さま、タヽ田吾に相手になんなさんな。……コレ田吾さま、お前さまは我々を嘲弄するのですか』
玉治別『滅相もない、神様から御神徳をタマハルワケを聞かして下さいと言つて居るのですよ。何分私の身魂が黒姫で、慢心が強うて、鼻が高姫で、おまけに頭が高うて、福禄寿のやうに延長し、神界の御用だと思つて一生懸命になつてお邪魔を致して居りまする田吾作でございますから、どうぞよろしく執着心の取れますよう、慢心の鼻が折れますやう、守り玉へ幸ひ玉へ、アヽ惟神霊幸倍坐世』
高姫『ヘンおつしやるワイ。黒姫さま、高山彦さま、サア帰りませう。アタ阿呆らしい。お節やお初、田吾や杢に馬鹿にせられて、日の出神様も、竜宮の乙姫さまも、涙をこぼして居やはりますぞえ。何と云つても優勝劣敗、弱肉強食だ。善の分るのは遅いぞよ、その代り立派な花が咲くぞよとお筆に出て居ります。皆さま、アフンとなさるなツ。これからこれからサアこれから獅子奮迅の勢を以て、三五教を根本から立替いたすから、あとで吠面かわかぬようになされませや。ヒン阿呆らしい』
と座を立つて帰らうとする。英子姫は、
英子姫『モシモシ高姫様、一寸お待ち下さいませ。それは余りの御短慮と申すもの、十人十色と申しまして、各自に解釈が違つて居りまするが神様は一つでございます。さうお腹を立てずに、分らぬ我々、充分納得のゆくやうにお示し下さいませ。誠の事ならばどこまでも服従いたします』
 高姫はニヤリと笑ひながら、俄に機嫌をなほし、
高姫『流石は八乙女の随一英子姫様、お前さまだけだ。目のキリツとした所から口元の締つた所、ホンにお賢い立派な淑女の鏡だ。お前さまならば、この高姫の申すことの分るだけの素養はありさうだ。そんならモ一度坐り直して、トツクリと御意見を伺ひませう』
と一旦立つた膝を、また元の座にキチンと帰つた。
英子姫『私は御存じの通り、まだ世の中に経験少き不束者、どうぞ何から何まで御指導をお願ひ致します。就きましては御聞き及びでもございませうが、この度竜宮の一つ島、諏訪の湖より五色の貴重なる麻邇の宝珠が無事御到着になりまして、言依別様がともかくお預り遊ばして、一般の信徒等に拝観をさせ、それから一々役を拵へ、大切に保管をいたさねばなりませぬ。何分……貴女始め黒姫さま、高山彦さまの肝腎の御方が御不在でありましたので、今日まで拝観を延期して居りました次第でございます。先づ第一にその玉の御点検を、高姫様、黒姫様に御願ひ致しまして、それぞれ保管者を定めて頂かねばなりませぬ。……今日は言依別様始め皆様と御協議で御足労を煩はしたやうな次第でございますから、どうぞ日をお定め下さいまして、御点検を願ひ、その上で保管者をお定め願はねばなりませぬ』
 高姫ニツコと笑ひ、
高姫『流石は英子姫さま、言依別さまも大分によく分つて来ました。しかしながら、梅子姫様、五十子姫、杢助さまの御意見は……』
英子姫『何れも私と同意見でございます』
高姫『それならば頂上の事、日の出神の生宮が先づ麻邇の宝珠を受取り、竜宮の乙姫の生宮が玉を検めて、その上、各自日の出神、竜宮の乙姫の指図に従つて一切万事取行ふことと致しませう。この玉が無事に納まつたのも、この高姫が神界の命によつて、黒姫さまを一つ島へ遣はしたのが第一の原因、次に黒姫は高山彦さまと共に竜宮島の御守護を遊ばされ、肝腎要の結構な玉を他に取られないやうに、その身魂をお分け遊ばして玉依姫命となし、この玉を大切に保管しておかれたからだ』
英子姫『ハイ………』
玉治別『黒姫さまの分霊はまた大変に立派なものだなア。その神格と云ひ、御精神といひ、容色と云ひ、御動作と云ひ、実に天地霄壤の相違があつた。これが本当なら、雀が鷹を生んだと云はうか、途方途徹もない事件だ。この玉治別も竜宮の玉依姫様から玉を受取つた時の心持、一目拝んだ時の気分と云ふものは、中々以て黒姫さまの前へ行つた時とは、月と鼈ほど違つた感じが致しましたよ』
高姫『コレ田吾さま、黙つて居なさい。新米者の分る事ですかいな』
玉治別『さうだと云つて、その玉に直接に関係のあるのは私ですからなア』
五十子姫『玉治別さま、何事もお年のめしたお方のおつしやることに従ひなさる方がよろしからう』
玉治別『ヘーエ、そらさうですな』
と煮え切らぬ返事をしながら頭をかいて居る。
梅子姫『今迄の経緯は何事もスツパリと川へ流し、和気靄々として御神業に奉仕することに致しませう。……高姫様、黒姫様、高山彦様、従前の障壁を除つて、層一層神界のため、親密な御交際をお願ひ致します』
高姫『ヨシヨシ、結構々々』
黒姫『お前さまも少々話せる方だ』
玉治別『何だか根つからよく分りました。何はとも有れ、日をきめて頂きませう。信者一般に報告する都合がありますから……』
 言依別は杢助の方を看守つた。杢助は厳然として立上り、
杢助『かくも双方平穏無事に了解が出来ました以上は、来る二十三日を以て、麻邇の宝珠を一般に拝観させることに定めたらどうでせう。先づ第一に高姫様、黒姫様の御意見を承はりたうございます』
 高姫ニコニコしながら立上り、
高姫『何事もこの件に付ては、杢助さまの総務に一任致しませう』
黒姫『私も同様でございます』
高山彦『どちらなりとも御都合に願ひます』
杢助『左様ならば愈九月二十三日と決定致します。皆さま、御異存あらば今の内に御遠慮なくおつしやつて下さい』
一同『賛成々々』
と言葉を揃へる。折柄吹き来る秋風に十二分の涼味を浴びながら各自に退場する事となつた。アヽ惟神霊幸倍坐世。

(大正一一・七・二三 旧閏五・二九 松村真澄録)



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