出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語25-3-101922/07海洋万里子 開悟の花王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
諏訪の湖湖岸岩窟
あらすじ
 緑毛の大亀は救いの船に変わった。モンキーはその船に乗せられ諏訪の湖の湖岸へ着いた。湖面には各色の宝玉が湖上三尺ばかりのところを、光を放って浮遊している。モンキーは金色、黒色のダンダラのある虎に岩窟へ導かれる。
 モンキーは「いかなることがありとも、理智を捨てて、ただ惟神に任すべく」決心の臍を固めていた。モンキーの身体は、金銀色の光り輝く洞窟の中で、身魂を神に任せて宝座に端座していた。
 坑内のはるか向こうより、青、赤、紫、白、黄の五つの玉の光りがサーチライトの数千倍の光力をもって、目も眩むばかりに光を放射しだした。それぞれの玉には、初稚姫、玉能姫、玉治別、久助、お民の顔がありありと映っていた。モンキーはこれを見るよりたちまち精神宙に浮き上がるごとく、前後も知らずその場に倒れてしまった。
名称
虎 モンキー
アイル お民 久助 清公 金銀色の蛇 金銀色のムカデ 玉永姫! 玉能姫 玉治別 玉依姫 長吉! チヤンキー テーナ 初稚姫 茂吉! 竜神 緑毛の大亀 分け御霊
赤き玉 天津祝詞 青き玉 雄島 惟神 現界 白き玉 諏訪の湖 竜の宮居 玉野ケ原 紫の玉 目無堅間の神船 幽界 竜宮洲 理智 黄色の玉
 
本文    文字数=6831

第一〇章 開悟の花〔七五六〕

 心の色も清公が  チヤンキー(長吉)モンキー(茂吉)始めとし
 アイル、テーナの五人連れ  黄金花咲く海中の
 竜宮島の中心地  玉野ケ原を打ち渡り
 酷暑の光受けながら  涼風香る諏訪の湖
 祠の前に端坐して  天津祝詞を奏上し
 浮世の衣を脱ぎ捨てつ  生れ赤子の真裸体
 後をも先をもみづ御霊  五つの御霊は諸共に
 身を躍らして飛び込めば  千尋の底より猶ほ深き
 罪の凝固の清公を  先頭に立てて各自は
 歩むに連れて摺鉢の  深き水底に身を沈め
 一度は息も絶れたるが  金銀珠玉を鏤めし
 目無堅間の神船に  棹さし来る神人に
 救ひ上げられ常磐木の  天を封じて立ち並ぶ
 雄島の岸に救はれぬ  抑此島は竜宮の
 神に仕ふる百神の  金と銀との蛇と変じ
 或は蜈蚣と化り変り  澆季末法の世の中を
 救ひ助けて神の代を  建てむがために朝夕に
 三寒三熱限りなき  苦痛を嘗めて世を救ふ
 諸善竜神の修業場  三五教の宣伝使
 生れ赤子になり変り  心の色も清公が
 喉を目蒐けて這ひ込みし  黄金の蛇は何者ぞ
 玉依姫の分け御霊  玉永姫の化身にて
 竜宮洲を清めむと  名も清公の体を借り
 アイルテーナやチヤンキーを  蜈蚣の島に投げやりて
 現界幽界の境なる  苦しき修業を事依さし
 水晶身魂に磨き上げ  罪も穢も軽衣
 錦の船に運ばれて  竜の宮居に進み行く
 雄島の岸に残されし  一人の男モンキーは
 四人の姿を見送りて  善悪邪正の判断に
 迷ふ折しも金銀の  浪掻き分けて浮び来る
 青緑毛の大亀は  忽ちモンキーが足許に
 のたりのたりと這ひ上り  山上目蒐けて這ひ出せば
 茲にモンキーは遅れじと  亀の後をば追ひながら
 大樹の枝に駆け登り  亀と諸共高所より
 忽ち地上に顛落し  大切の頭を打ちながら
 神の御息を両の手の  掌に吹きかけ疵所をば
 つるりつるりと撫でつれば  疵は忽ち癒えにける
 緑毛の亀は足早に  雲を霞と駆け出す
 我遅れじとモンキーは  汀に進む折柄に
 緑毛の亀は忽ちに  身を躍らして水中に
 ザンブとばかり飛び込みぬ  モンキー後より後れじと
 またもや水中に飛び込めば  手足も疲れ身も弱り
 息も絶えむとする所  緑毛の亀は何故か
 湖面に姿を浮べつつ  手足を休めて振り返り
 モンキーの来るを待ち居たる  漸く亀に縋りつき
 両手に甲を抱へつつ  命辛々従いて行く
 亀は直様水中を  潜りて深き海底に
 一旦息を休めつつ  再び湖面に浮き上り
 忽ち変じて船となる  命限りのモンキーは
 初めて蘇生したるごと  心も勇み気も勇み
 救ひの船に身を任せ  善悪邪正の判断に
 心の闇を照らしつつ  船のまにまに浪の上
 朱欄碧瓦の竜宮の  高楼目蒐けて惟神
 神のまにまに進み往く。  

 遠浅の湖岸に船は進んで来た。湖底は水晶の如く明かに、金砂銀砂の光太陽に映じて何物にも譬方なき麗しさ。小さき青、赤、紫の魚は金魚のやうな尾を掉つて縦横に溌溂として游いで居る。天の星の輝くやうに水の深さ五寸乃至一尺ばかりの所になりて、金剛石のやうな光、五六尺或は一二尺を隔てて目も眩むばかり強き光を放つて居る。船は一寸ばかりの水の上さへも軽々しく辷りつつ、遂に金砂の磯端に着いた。
 モンキーは船を飛び下り、砂原を歩みかけた。一歩々々運ぶごとに足の下から鶯のやうな声が出て来る。振り返つて砂に印した足跡を見れば、大なる小判を敷いたやうに金色に光つて居る。モンキーはふと佇み、乗り来し船や湖面を見れば、青、紅、紫、白、黄、橄欖色、その他得も言はれぬ宝玉、湖上三尺ばかりの所を蝶の花に戯る如くに前後左右に浮動して居る麗しさ、玉と玉とは時々衝突して煙火の如き光を湖面に投げて居る。恰も宝玉の粉末を撒き散らしたやうな眺めである。モンキーは夢では無いかと我と我身を疑ひつつ尚も湖面を熟視して居ると、後の方より思はず両方の肩をグツと抱へた者がある。何者ならむと吾胸の辺に目を転ずれば、金色、黒色のダンダラ条のある虎の両手であつた。モンキーはその手を我両手に固く握りながら、何者にか引かるる如き心地し、自分の姿は何時の間にやら、紫の麗しき木の葉の数多茂れる林の中に導かれ、瑠璃光の如き岩石の根下に穿たれたる岩窟の中へ、不知不識に進み入りける。
 モンキーは、如何なること有りとも、理智を捨ててただ惟神に任すべく、決心の臍を固めて居た際であるから、一切の考慮を捨て、ただ吾身の自然に引かるるままに任して居るのみ。
 モンキーの体は、金銀色の光輝く洞穴の中に自然にキリキリ舞ひながら、何処ともなく聞ゆる音楽の声に従れて時々舞ひ上り、或は横になり、或は逆様に手を以て歩むなど、全く一身心魂を神に任せて、何時の間にかその身体は美はしき宝玉をもつて飾られたる宝座の上に端坐して居た。坑内の遥向ふより青、赤、紫、白、黄の五つの玉の光、サーチライトの数千倍の光力をもつて、目も眩むばかり此方に向つて光を放射し出した。モンキーは思はず目を塞ぎ、玉の光る方を眺むれば豈図らむや、紫の玉の中には初稚姫、赤き玉には玉能姫、青き玉には玉治別、白き玉には久助、黄色の玉にはお民の顔がありありと映つて居た。モンキーはこれを見るより忽ち精神宙に浮き上る如く前後も知らずその場に倒れてしまつた。

(大正一一・七・一〇 旧閏五・一六 加藤明子録)



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