出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語25-2-81922/07海洋万里子 奇の巌窟王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
竜宮洲玉野ケ原
あらすじ
 清公はチヤンキーと共に、クシの滝の傍に庵を結び、一ヶ月ほど滞在していた。モンキーとともに地恩城へ参拝した一行も帰着し、ヒルの郷は妖邪の気が晴れて元の楽園となった。
 清公はチヤンキー、モンキー、アイル、テーナを供としてセーラン山の玉野ケ原へやって来た。猛獣の唸り声の中、一行は白狐に導かれて、岩窟へ誘われた。巨大な狒々が一行を奥へと追い詰める。しかし、狒々には害意が無く、清公と握手をする。五人が外へ出ると、数多くの狒々、猩々が待受けていて、一行の唱える天津祝詞に踊り狂った。
 巨大な狒々(実は木の花姫の化身)が、一行に向って、まず、白煙をふきかけ、次に炎を、最後に滝水を吹きかけた。一行は死ぬかと思いながら、天津祝詞を唱えていたが、一行の息も絶えようとしていた刹那、巨大な狒々は白玉となり、他の狒々は大小無数の玉となり、姿を隠した。
 これより、五人は心魂清まり、諏訪の湖の竜神の宮に無事到着した。
名称
アイル 清公 猩々 チヤンキー テーナ 狒々 白狐 猛獣の群 モンキー
愛蔵! 悪魔 飯依別 大蛇 国魂 貞七! 郷人 スマートボール
天津祝詞 天の数歌 妖邪の気 神言 クシの滝 言霊 神界 スワの湖 セーラン山 玉野ケ原 地恩城 奈良の大仏 ヒルの郷 真澄の宮 竜神の宮
 
本文    文字数=6358

第八章 奇の巌窟〔七五四〕

 清公はチヤンキーと共にクシの滝壺の傍に俄造りの庵を結び、日夜に天津祝詞を奏上し、側の谷川に身を浄め、一月ばかり此処に滞在する事となつた。
 モンキーに導かれて地恩城に参上りたる飯依別その他の一同は、無事参拝を終へて再びヒルの郷に帰り来り、クシの滝壺に参上りて清公に厚く感謝し、それより国魂の宮の修繕を行ひ、恭敬礼拝怠らず、遂にヒルの郷は黒雲妖邪の気、全く霽れて再び元の楽園となり、飯依別は祖先の業を大切に、心身を清めて昼夜懈怠なく真澄の宮に奉仕する事となつた。
 モンキーは郷人と共に、再び此地に現れ来り、地恩城におけるスマートボールの伝言を清公、チヤンキーに伝へた。二人はスマートボールの親切に感謝し、郷人の乞ひを容れてアイル(愛蔵)、テーナ(貞七)の二人を供人となし、セーラン山を攀登り、数多の人々を始め大蛇その他の悪魔を神の道に言霊もて救はむと、炎天の山道を危険を冒して、一行五人進み行く。
 芭蕉の実を時々採つて飢を凌ぎながら、連日連夜、苔の褥に岩枕、星の蒲団を被りて夜を明かしつつ、終に稍平坦なる玉野ケ原と云ふ、黄金の砂の大地一面に敷き詰められたる如き、気分良き地点に進む事を得た。
 足も焼きつくやうな砂金の原を一行五人は木蔭を求め汗を拭きつつ進み行く。遥の前方より幾百とも限りなき猛獣の群、百雷の轟く如き咆哮を立て、此方に向つて突進し来る。清公はこの一隊に向つて天津祝詞を奏上し言向け和さむと両手を組み、……高天……と言はむとすれど一二言発せしのみ、舌硬ばり言霊を使用する事の不可能なるを感じ、稍不安の念につつまれてゐる。怪しき猛獣の影は、おひおひと近付き来り、その足音さへも耳に入るやうになつた。一行五人は生きたる心地もなく、心の裡にて一生懸命に暗祈黙祷する折しも、忽然として一柱の白狐、五人が前に現はれ、前脚を上げて招きながら森林の方に進み行く。五人はその後に従ひ、漸くにして一つの細長き岩窟に導かれ、天の与へと喜び勇み、窟内に残らず姿を隠し、坑口に向つて両手を合せ、神恩を感謝する折しも、以前の唸り声は刻々と迫り来り、猛獣の足音幾百ともなく聞えて、長き白毛を頭部と顔部に生じたる巨大なる狒々、真赤な顔にて穴の口を覗き唸つて居る。その声の凄じさ、身も竦むばかりである。されど白狐出現に力を得たる清公始め五人は、茲に初めて言霊の使用を神界より赦されたりと見え、喉元より綱を以て声の玉を引出す如き心地して、スラスラと涼しく潔く天津祝詞を宣り始めた。
 坑口を覗き居たりし大怪物は、この声に驚き消え去るかと思ひきや、それと反対に坑内深く進み来る嫌らしさ。五人は祝詞を奏上しながら、この岩穴の終点まで逃げて行く。異様の怪物は益々迫り来る。一方口の逃げ道なきこの穴に徳利攻めに遭うた一行は、決心の臍を固めて天の数歌を汗タラタラと流しながら奏上して居る。怪物は清公の前に近寄り来り、毛だらけの手を差し出し清公に握手を求めた。清公は恐々ながらその手を差し出す。怪物は感謝の表情を示し『ウーウー』と唸りながら、手を引いて坑口さして出でて行く。清公は半ば危みながら、怪物の強き手に握られたる腕を振り放すだけの力も無く片手に四人の男を手招きしながら、前を向き後を顧みなどして、到頭坑外に引出されてしまつた。坑外に出でて見れば、猛獣に非ずして、狒々、猩々の一隊、この岩坑の前に両手を合せ呼吸を揃へて『ウワア ウワア』と唸る声、天地も揺ぐばかりなり。
 勝れて身体長大なる全身白毛の猩々は、奈良の大仏の坐つた如く左の手を膝に置き、右の手にて中空を指さし、ニコニコと笑を湛へ五人を睥睨して居る。清公以下五人声を揃へて天津祝詞を一生懸命に奏上するや、祝詞につれて数百の狒々猩々は手拍子、足拍子を揃へ、面白げに踊り狂ふ。
 この中の頭目と見えし大狒々はツト座を起ち、清公の一行に向つて、口より霧を白烟の如く濛々と吹き出し全身を包む。五人は白烟に包まれ稍不安の念に駆られ、声を限りに天の数歌を唱へ出す。大狒々の口よりはまたもや猛烈なる焔を吹き出し、五人を一度に焼き尽さむとするその熱さ苦しさ。一同は撓まず屈せず生命限り連続して奏上する。続いて大狒々の口より冷たき滝水を吐き出し、一同の身体を川溺りの如く湿ほし、五人は寒さに顫へるまでに水に浸されながら声を限りに神言を奏上し、最早息も絶れむと思ふ途端に天地も割るるばかりの音響聞え、さしも熱帯の大樹も根底より吹き飛ばさむばかりの烈風吹き来ると見る間に、大狒々の姿は巨大なる白玉となり、その他数百の狒々は、各大小無数の玉と変じ、風の随々中空に舞ひ上りその姿を隠しける。忽ちにして怪しき音響はピタリと止まり風は俄に静まりて岩坑の辺には得も言はれぬ芳香薫じ、微妙の音楽聞えて尾の上を渡る松風の音、殊更に涼しき感を一同の胸に与へたり。
 これより五人は心魂頓に清まり、夜を日についで奥へ奥へと進み行き、終にスワの湖の辺なる竜神の宮の祠に無事到着し、例の如く祝詞を奏上し、息を休め、その夜はこの祠の前に明かす事とはなりぬ。

(大正一一・七・八 旧閏五・一四 北村隆光録)



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