出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語24-4-161922/07如意宝珠亥 慈愛の涙王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
一つ洲大野ケ原
あらすじ
 玉治別、玉能姫、初稚姫、久助、お民は諏訪の湖を後に、大野ケ原へ向う。十五人の男が一同を打擲するが、一同は我慢し、「忍耐心がついた」と感謝する。初稚姫によって、男たちは木の花咲耶姫の化身であることがわかった。
 次に、天刑病にかかった醜い男が、膿をたらしている。男は、「女の口で膿を吸ってくれたら、病気が治る」と言う。初稚姫、玉能姫、お民が体に口をつけて膿を吸ってやると、男は回復して立ち去った。玉治別は感激して、「自分も女だったら神業に参加するのに」と言う。
 初稚姫の霊魂は三十万年後大本教祖出口直子と顕れたまう神誓である。
 これより五人は、一つ洲の西部一帯を宣伝し、遂に、オーストラリヤ全島を三五教の教えに導き、神業を成就した。
名称
お民 久助 玉能姫 玉治別 十五人の男 天刑病の男 初稚姫
厳の御魂 大神 大本教祖 国治立大神 木の花咲耶姫 真人 神素盞鳴大神 皇大神 皇神 玉依姫 天地の神 出口直子 霊魂
天津祝詞 オーストラリヤ 自転倒島 惟神 言霊 三十万年 三千世界 七十五声 神業 諏訪の湖 体主霊従 竜の宮居 天教山 松の代 三千歳 ミロク神政
 
本文    文字数=10019

第一六章 慈愛の涙〔七四六〕

 七十五声の言霊に  因みて澄める諏訪の湖
 皇大神が三千歳の  遠き神代の昔より
 ミロク神政の暁に  厳の御霊と現はして
 神の御国を固めむと  諏訪の湖底深く
 秘め給ひたる珍宝  竜の宮居の司神
 玉依姫に言依さし  三千世界の梅の花
 五弁の身魂一時に  開く常磐の松の代を
 待たせ給ひし畏さよ  浪立ち分けて現れませる
 玉を欺く姫神は  五ツの玉を手に持たし
 教の御子の五柱  前に実物現はせて
 往後を戒め神業の  完成したる暁に
 手渡しせむと厳かに  誓ひ給ひし言の葉を
 五人の御子は畏みて  夢寐にも忘れず千早振る
 神の誠を心とし  羊の如くおとなしく
 如何なる敵にも刃向はず  善一筋の三五の
 至誠の道を立て通し  人に譲るの徳性を
 培ひ育てし健気さよ  玉治別や玉能姫
 一層賢しき初稚姫の  神の命の瑞御霊
 久助、お民の五人連  諏訪の湖伏し拝み
 七日七夜の禊して  身も魂も浄めつつ
 大野ケ原をエチエチと  金砂銀砂を敷詰めし
 道芝イソイソ進み行く。  向ふの方より馳せ来る
 大の男が十五人  出会がしらに一行を
 目蒐けて拳を固めつつ  所かまはず打据ゑて
 一同息も絶え絶えに  無念の涙くひしばり
 笑顔を作り言ひけらく  『心きたなき我々は
 金砂銀砂の敷詰めし  清き大地を進みつつ
 心に恥らふ折柄に  何処の方か知らねども
 吾等が身魂を清めむと  心も厚き皇神の
 恵の拳を隈もなく  汚き身体に加へまし
 有難涙に咽びます  嗚呼諸人よ諸人よ
 汝は吾等の身魂をば  研かせ給ふ御恵の
 深くまします真人よ  あゝ有難し有難し
 これより心を改めて  足はぬ吾等の行ひを
 補ひ奉り三五の  神の教の司とし
 天地の神や諸人に  恥らふ事の無きまでに
 身魂を研き奉るべし  嗚呼惟神々々
 恵の鞭を嬉しみて  皇大神の御教を
 四方の国々宣べ伝へ  世人のために真心を
 尽さむ栞に致します  山より高き父の恩
 海より深き母の恩  恵は尽きぬ父母の
 我子を愛はる真心に  優りて尊き御恵み
 謹み感謝し奉る  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 我等の命は失するとも  神の恵のこの鞭の
 その有難さ何時までも  忘るる事はあらざらめ
 汝は普通の人ならじ  諏訪の湖水に現れませる
 皇大神の御心を  持ちて現れます神ならむ
 謹み感謝し奉る  嗚呼惟神々々
 御霊幸倍ましませよ  この世を造りし神直日
 心も広き大直日  ただ何事も人の世は
 直日に見直し聞直し  身の過ちは宣り直す
 三五教の吾々は  如何なる事も惟神
 凡て善意に解釈し  ただ一言も恨まずに
 情の鞭を嬉しみて  厚く感謝し奉る
 水も洩らさぬ皇神の  尊き仕組の今の鞭
 受けたるこの身今日よりは  心の駒に鞭ちて
 時々兆す悪念を  山の尾の上に追ひ散らし
 河の瀬ごとに追払ひ  大慈大悲の大神の
 大御心に報ふべし  進めよ進めよいざ進め
 忍の山に逸早く  剣の山も何のその
 仮令火の中水の底  神の大道のためならば
 などか厭はむ敷島の  大和心を振おこし
 国治立の御前に  奇しき功績を立て奉り
 目出度神代にかへり言  申さむ吉き日を楽しまむ
 嗚呼惟神々々  御霊幸はひましませよ』

と小声に玉治別は歌ひ終り、打擲された十五人の男に向ひ、一同手を合せて、嬉し涙に咽びける。さしも猛悪なる悪漢も、五人の態度に呆れ返り、感涙に咽びながら両手を合はせて大地に平伏し、陳謝の辞を断たざりけり。玉治別は大いに喜び茲に一場の宣伝をなしながら、悠々としてこの場を立ち去りにけり。
 後振り返り見れば障害なき大野原に十五人の荒男は、何れへ消えしか、影も形も見えずなり居たりける。初稚姫は、
『皆さま、今の方は誰方と思ひますか』
『玉治別には、どうも合点が参りませぬ。何処へ行かれたのでせう』
『イエイエ、あの方は天教山に現はれ給ひし、木花咲耶姫の御化身でございましたよ』
 玉能姫はこれを聞くより「ワツ」とばかりに声を上げ嬉し泣きしながら、
『アヽ神様、有難うございました。何処迄も吾々の魂を御守り下さいまして、今度の御神業につきましては不断、御礼の申上げやうなき御心付けを下さいまして、有難うございます。何とも御礼の申上げやうもございませぬ。御蔭を以て漸く忍耐の坂を越えるだけの御神力を戴きました』
と鼻を啜り嬉し涙を絞る。玉治別は啜り泣き一言も発し得ず嗚咽しながら、自転倒島に向ひ両手を合せ涙をタラタラと流し、これまた感謝に余念なく、久助、お民もただ両手を合せシヤクリ泣きするのみ。初稚姫は、
『皆様、大神様の真の御慈愛が解りましたか』
 一同は、
『ハイ』
と云つたきり涙滂沱として腮辺に滝の如く滴たらし居たり。嗚呼惟神霊幸倍坐世。
 一行は感謝の祝詞を奏上し終つて、またもや炎熱焼くが如き原野を汗に着物を浸しながら足を早めて宣伝歌を歌ひ進み行く。
 折しも小さき祠の前に醜き一人の男、何事か祈願し居るにぞ、玉治別はツカツカと進み寄り、
『モシモシ貴方は何処の方でござるか、見れば御病気の体躯と見えまする。何れへお出で遊ばすか』
と尋ぬるに男は玉治別の言葉にフト顔を上げたり。見れば顔面は天刑病にて潰れ、体躯一面得も言はれぬ臭気芬々として膿汁が流れて居る。玉治別は案に相違し突立つたまま、目を白黒してその男を黙視してゐる。
『私はこの向ふの谷間に住む者だが、コンナ醜るしい病を患ひ、誰一人相手になつてくれるものもなし、若い時より体主霊従のあらん限りを尽し、神に叛いた天罰で、モシ……コレこの通り、世間のみせしめに逢うて居るのだ。最早一足も歩む事は出来ぬ………お前さま、人を助ける宣伝使なれば、この病気を癒して下さいませ。モシ女の唇を以てこの膿汁を吸へば、病気は全快すると聞きました。何卒お情に助けて下さるまいか』
 初稚姫はニコニコしながら、
『おぢさま、吸うて癒る事なら吸はして下さい』
と云ふより早く足許の膿汁を「チユウチユウ」と吸うては吐き、吸うては吐き始めたり。玉能姫は頭の方より顔面、肩先き手と云ふ順序に、「チユウチユウ」と膿を吸うては吐き出す。玉治別、久助は余りの事に顔も得上げず、心の中にて一時も早く病気平癒をなさしめ給へと、祈願を凝らして居る。お民はまたもや立寄つて腹部を目蒐けて、膿汁を「チユウチユウ」と吸ひ始めたり。しばらくの間に全身隈なく膿汁を吸ひ出し了りぬ。男は喜びながら両手を合せ、路上に蹲踞んで熱き涙に暮れ居たり。五人は一度にその男を中に置き、傍の流れ水に口を嗽ぎ手を洗ひ天津祝詞を奏上する。男は忽ち嬉しさうな顔をしながら、
『アヽ有難うございました。誰がコンナ汚い物を、吾子だとて吸うてくれませう。お礼は言葉に尽されませぬ』
と一礼しながら直に立ちて常人の如く足も健かに歩み出し、終に遠く姿も見えずなりにけり。玉治別は感激の面色にて、
『三人の御方、ヨウマア助けてやつて下さいました。私も女ならば貴方方のやうに御用が致したいのでございますが、彼の男が女でなければ不可ぬと申しましたのでつい扣へて居ました。イヤもう恐れ入つた御仁慈、国治立大神、神素盞嗚大神の御心に等しき御志、感激に堪へませぬ』
とまたもや熱涙に咽ぶ。三人は愉快気に神徳を忝なみ、
『あゝ神様、今日は結構な御神徳を頂きました』
と両手を合せ感謝の祝詞を奏上し、一行五人西へ西へと、金砂銀砂の敷詰めたる如き麗しき野路を、宣伝歌を歌ひ進み行く。
 因に云ふ。初稚姫の御魂は三十万年の後に大本教祖出口直子と顕はれ給ふ神誓にして、これより五人は西部一帯を宣伝し、種々の試練に遭ひ、終にオーストラリヤの全島を三五教の教に導き、神業を成就したる種々の感ずべき行為の物語は、紙数の都合によりて後日に詳述する事となしたり。嗚呼惟神霊幸倍坐世。

(大正一一・七・五 旧閏五・一一 谷村真友録)



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