出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語19-4-161922/05如意宝珠午 玉照彦王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
高熊山 綾の聖地
あらすじ
 来勿止神と松姫は谷丸、鬼丸、テルヂー、コロンボを許した。
 松姫はひとりで高熊山の岩窟へ玉照彦を迎えに行く。神国守と国依姫の案内で四十八の宝座を巡ってゆくと、熊公が待っていた。彼の肉体は高城山にあったが、松姫を思う至誠が、霊魂のみをここへ来させて松姫を守っていたのだ。その熊公が消えると、言照姫が現れ、「玉照彦を世継王山の国武彦の元まで届けよ」と言って姿を消した。
 松姫は玉照彦を抱き来勿止神の庵まで戻る。神人数百人、肉体も精霊も混じって出迎えた。その中には、英子姫、悦子姫、亀彦、常彦、若彦、紫姫もいた。松姫は知らない間に世継王山の悦子姫の館に着いた。
 それからは、玉照彦・玉照姫が二神揃い、神徳現れ、黒姫と高姫も帰順してミロク神政の基礎を固めることとなった。
名称
鬼丸 勝公 亀彦 来勿止神 国依姫 熊彦 言照姫 コロンボ* 竹公 谷丸 玉照彦 常彦 テルヂー* 初公 英子姫 松姫 神国守 紫姫 悦子姫 六公 若彦
悪魔 幽体 幽霊 伊都能売之御霊 お節 国武彦命 黒姫 高姫 竜若 玉照姫 千代彦! 本守護神 瑞の御霊
天の数歌 綾の聖地 ウラナイ教 堺峠 四十八の宝座 執着心 神界 高熊山 高城山 ミロク神政 世継王山
 
本文    文字数=9822

第一六章 玉照彦〔六六一〕

 来勿止神は、松姫、竹その他四人の男と共に機嫌よく湯を啜つて居る。
 此処へ門番頭の勝は入り来り、
『モシモシ神様、此間の奴が二人も新顔を連れ、都合四人やつて参りました』
来勿止神『アヽさうだらう、改心して謝罪つて居るだらうなア、大方谷丸、鬼丸、テルヂー、コロンボと云ふ人間だらう、早く此方へ案内をするが宜敷い』
勝公『承知致しました、しかし松姫様にお詫がしたいと云うて居ます』
来勿止神『アヽさうかさうか、それなら尚更結構だ』
 間もなく勝の案内に連れ、四人の男この場に現はれ怖さうに閾を跨たげて土間に平太り込み、頭を地につけて謝罪つて居る。
来勿止神『オヽお前は谷丸以下三人の男だなア、どうだ、神様の御神力には屈服したかな』
 谷丸漸く首を上げ、
谷丸『イヤもう、重々御無礼を致しまして申訳もございませぬ、そちらにござるは松姫様、どうでございます、お体は痛みませぬか、つい心の中の悪魔に操られ、御無礼ばかり致しました。今日は四人連れ打ち揃ひ貴女のお跡を尋ね、お詫に参りました。重々の罪お赦し下さいませ』
と四人は一度に首を下げる。
松姫『イヽエ、何の何の、私こそ貴方等にお詫をせなくてはならないのです。貴方等のお蔭で結構な御神徳を頂きました』
来勿止神『皆様、其処は土間ぢや、冷えますから破屋なれど座敷へ上つて下さい』
谷丸『イエイエどう致しまして畏多い、斯様な罪人が貴方様と同席がどうして出来ませう』
来勿止神『貴方はもはや罪より救はれたのだ、尊い神様の珍の御子だから、さう遠慮なさるに及ばぬ。遠慮は却つて神様に御無礼の基だから、私の云ふ通り素直にお上り下さい』
テルヂー『サア皆さま、折角のお志、上らせて頂きませう』
と一足跨げて先に上る。三人は、
『御免下さいませ』
と怖る怖る、座敷に上つた。竹は湯を汲んで四人に勧める。
谷丸『松姫様、貴女はこれから玉照彦様をお迎ひにお出なさるのでせう』
松姫『エヽ』
谷丸『お隠しなさいますな、もはや吾々共は改心を致しました以上は、玉照彦様を奉迎したいなどと、左様な不都合な考へは持ちませぬ、ナア、一同さま』
テルヂー『左様でございます、吾々も神様のお蔭によつて左様な執着心は念頭からさらりと去りました。しかし松姫様にお詫のため、高熊山の巌窟までお伴致し、いろいろと能う限りの御用をさして頂きたうございます』
来勿止神『皆々の赤心は良く分りましたが、この事は御助力を受けたとあつては松姫様のお手柄になりませぬ、松姫さまだけ御一人お出なさるがよろしからう、皆の人は此処に待つて居てお上げなさい、その間に種々と神様の結構なお話を交換致しませう』
 一同は言葉を返す勇気もなく、承知の旨を答へ、松姫の無事の帰途を待つ事とした。松姫は心いそいそ勇み立ち、脚も何となく軽げに枯草蔽へる谷道を上り往く。前方より二人の男女、にこにこしながら出で来り、丁寧に会釈し、
『私は当山を守護致す、神国守、妾は国依姫でございます。貴女は松姫さまぢやございませぬか』
松姫『仰せの通り、不束者でございます、何分宜敷うお願ひ致します。玉照彦の神様は御機嫌麗しう在らせられますか、言照姫様はどうしておゐでなさいます』
神国守『ハイハイお二方共、御機嫌殊の外麗しく、今朝よりは特別の御機嫌で貴女のお出を大変に待つて居られるやうです。サア、私夫婦が御案内致しませう、随分茂つた嶮岨い山道でございますから、私がお手を把つて上げませう』
松姫『イエイエ何卒構うて下さいますな、神様に対して畏れ多い事でございます。人様のお出遊ばす所へ私が往けない筈はございませぬ』
国依姫『左様なれば妾が先導を致しませう』
と夫婦は松姫を中にして静々と岩窟さして登り行く。
神国守『サア、此処が岩窟の入口でございます、四十八の宝座の御前でございます、一度礼拝致しまして、奥へ御案内する事にしませう』
 松姫は嬉しさうにニタリと笑ひ、四十八の宝座を一々礼拝し、神国守夫婦に案内されて岩窟の奥深く忍び入る。
国依姫『この岩窟は上り下りが、所々にございますから、御用心なさいませ、十七八丁奥へ進みますと立派な岩窟のお館が築かれてございます、此処が玉照彦様のお館』
松姫『有難う』
と簡単に礼を返し窟内の隧道を右に折れ左に曲り、上りつ下りつ漸く館の前に辿り着いた。館の前に一人の男が立ち現はれ松姫の到着を待つて居た。
松姫『ヤア、お前は熊公ぢやないか、どうしてこんな処へ来たのだい』
熊彦『ハイ、私は貴方が過日の夕間暮、お館を捨てて、御出奔なされたので、お跡を尋ね、お願ひ申して再び高城山の館へお帰りを願ひたいと、取るものも取敢ず走り出でむとすれば、お節さまや竜若に無理に引き留られ、残念ながら肉体は館に残し、霊魂のみ貴方の行衛を尋ね、此処迄御案内を申して来たのです、堺峠において四人の奴に貴方がエライ目に遭はされなさつた時、私はどれだけ苦しんだか知れませぬ。貴女のお体に付纏ひ、私が代つて撲られました、御覧なさいませ、この通りまだ創傷が十分に癒つて居りませぬ』
松姫『アヽさうするとお前は肉の宮を館に残して置いて来たのだなア、跡はどうしなさつた』
熊彦『ハイ、肉の宮は千代彦と云ふ本守護神が守つて居ます』
松姫『アヽ、さうかな、それは御苦労だつた、早く帰つて下さい、もう大丈夫だから』
熊彦『もうしばらくお伴さして下さい』
神国守『ヤア、さう聞くと貴方がある人の幽霊だな』
松姫『これは私の家に居りまする熊公と云ふ大変師匠思ひの男で、門番や受付をして居るのでございます、一心の誠が通つて霊魂が幽体を現じ、此処迄私を守つて来てくれたのです』
国依姫『何と誠の強い、師匠思ひの方ですなア』
 松姫は早くも何故か涙ぐんで居る。熊公の姿は煙の如く消えてしまつた。
 忽然として館の戸は開かれ、中より言照姫の威厳に満ちた姿が現はれた。
言照姫『ヤア其方は松姫であつたか、妾は言照姫の命、様子あつて本名は今しばらく名乗りませぬ、奥に寝ませらるる玉照彦様は遠き未来においてミロク神政成就の神業に参加遊ばす尊き伊都能売之御霊、其方は大切に奉侍し、世継王山の麓に在す国武彦の命にお届けあれ、しからば其方は云ふに及ばず高姫、黒姫一派の、今迄瑞の御霊の大神に射向かひまつりし重大の罪を赦され、神界の御用に参加し、偉勲を建つる事を得む。神国守、国依姫は松姫と共に玉照彦の命を保護し奉り、綾の聖地に送らるべし』
と言葉終るや否や、言照姫の姿は忽然として消えてしまつた。松姫は畏み慎み、天の数歌を謡ひあげ、終つて言葉静かに、
松姫『妾は松姫と申すもの、唯今言照姫様の御命令を拝し、尊様をお迎へ申して綾の聖地に向ひます。何卒妾にこの尊き御用をお許し下さいませ』
と一心に祈願し終るや、玉照彦の命は立ち上り、小さき身体を揺りながら、松姫の膝に嬉しげに上らせられた。松姫は恭しく懐中に抱き奉り、神国守夫婦に守られ、漸く岩窟を立ち出て、再び宝座を伏し拝み、来勿止神の庵に漸く帰りついた。
 来勿止神を始め、勝、竹、六、初、その他の門番及び谷丸、鬼丸、テルヂー、コロンボは門の内面に整列して奉迎しつつあつた。松姫は神国守夫婦を伴ひ、静々と目礼しながら門を出づれば豈図らむや、数多の白衣を着せる神人幾百人ともなく、道の左右に整列し、英子姫、悦子姫、亀彦、常彦、若彦、紫姫、その他三五教、ウラナイ教の宣伝使の肉体及び幽体相交はり、恭しく奉迎して居る。何処ともなく微妙の音楽四方に起り松姫は思はず足も進み出で、何時の間にか、世継王山麓の悦子姫の庵に着き居たり。茲に玉照彦、玉照姫の神人は二柱相並び給ひ、日に夜に神徳現はれ、昼夜の区別なく瑞雲棚引き渡り、ウラナイ教の高姫、黒姫その他も嬉々として集まり来たり、ミロク神政の基礎を固むる事となりにける。

(大正一一・五・九 旧四・一三 加藤明子録)
(昭和一〇・六・四 於透明殿 王仁校正)



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