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原著名出版年月表題作者その他
物語19-2-61922/05如意宝珠午 和合と謝罪王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
フサの国の北山村のウラナイ教本部
あらすじ
 高姫たちの失敗からウラナイ教は凋落してしまった。蠑リ別は本山から消え、部下や信徒は四散した。高姫たちは会議を開くが、高姫と黒姫は責任をめぐって対立し、高姫は怒って奥の部屋へ戻ってしまう。
 黒姫は高山彦に命じて高姫を慰めさせる。高山彦は高姫と黒姫の間に立って悩むが、結局、黒姫が謝罪してなんとか二人は和解した。高姫は、自転倒島の魔窟ケ原に残した梅公たちを、鶴公と亀公に飛行船を運転させて迎えに行かせた。
名称
亀公 黒姫 高姫 高山彦 鶴公 寅若
青彦 蠑リ別 梅公 お民 素盞鳴尊 玉照姫 常彦 夏彦 日の出神? 竜宮の乙姫?
ウラナイ教 自転倒島 惟神 北山村 言霊 執着心 高城山 二〇三高地 フサの国 筆先 渤海湾 魔窟ケ原 大和魂 由良川 霊主体従
 
本文    文字数=16368

第六章 和合と謝罪〔六五一〕

 一葉落ちて天下の秋を知るとかや。神の教も不相応ぬフサの国、北山村の本山ウラナイ教の頭株、心も驕る高姫が、執着心の胸の闇、鼻高山彦や黒姫は、奥の一間に差し籠もり、ウラナイ教の前途に就いて、コソコソ協議を凝らし居る。
高姫『栄枯盛衰、会者定離は人生の常とは云ひながら、よくもこれだけウラナイ教は、庭先の紅葉の風に散る如く凋落したものだ。彼れほど熱心に活動して居つた蠑螈別は煙の如くこの本山から消えてしまひ、数多の部下や信徒は四方に散乱し、全で蟹の手足をもがれたやうな敗残のウラナイ教、何とか回復の道を講ぜねばなりますまいよ』
黒姫『日の出神さまもこの際、ちつとどうかして居らつしやるのではありますまいかなア』
高姫『日の出神様は外国での御守護、世界の隅々までも調べに往つてござるのだから今はお留守だ。何れお帰りになれば、日の出の守護になるのは定つて居りますが、さうだと云つてこのまま放任して置けばこの本山は、孤城落日、土崩瓦解の憂目に会ねばなりませぬワ。それよりも黒姫さま、竜宮の乙姫様はこの頃はどうしてござるのでせう。随分気の利かぬ神様ですねエ。コンナ時に御活動下さればよろしいのに』
黒姫『竜宮の乙姫様は貴方もお筆先で御存じの通り、日の出神様に引添うて一所に外国で御守護して居られるに定つて居るぢやありませぬか。高姫様は、玉照姫の一件から何処ともなしに、ボーとなさいましたなア』
高姫『黒姫さまも御同様ぢやありませぬか。貴女は、高山彦さまが、あちらにお出でになつてから、日増に、ボンヤリなされましたさうですよ。御自分の事は御自分には分りますまいが、寅若がそう云つてましたぞえ』
黒姫『何をおつしやいます。そう人を見損なつて貰つては困ります。高山さまがお出でになつて以来といふものは、層一層活動しました。それよりも高姫さま、こう云うとお気に障るか知れませぬが、蠑螈別さまがこの本山から姿を隠されてより、層一層気抜けがなさつたやうな、燗ざましの酒を十日も放つて置いて飲みたやうな塩梅式ですよ。お互に気を取直して確りと仕様ではありませぬか。あの三五教を御覧なさい。旭日昇天の勢、まるでウラナイ教なぞとは比較物になりませぬワ』
高姫『憎まれ子世に覇張る、と云つて、悪が栄える世の中だ、その悪の世に栄ゆる教だから大概分つて居りますよ。しかし九分九厘まで悪の身魂は世に覇張る、善の身魂は落ちて居ても一厘でグレンと覆ると日の出神様がおつしやる。三五教は何程沢山集まつて居ても烏合の衆ですよ。何れ内裏から内閣瓦解の運命が萌しかけて居ります。ウラナイ教は少数でも、善一筋の誠生粋の大和魂の堅実な信仰の団体だ。万卒は得易く一将は得難しと云つてな、少数なのは結構ですよ。余り瓦落多人足がガラガラ寄つて居ると、遂に虫がわきまして水晶の水が臭くなり、孑孑がわいて鼻持ちならぬ臭がし出し、終局にはこの孑孑に羽が生えて飛散し、遂には人の頭に留まつて生血を絞るやうになります哩。必ず必ず御心配なさいますな。日の出の守護になれば一度にグレンと覆るお仕組がしてございます』
黒姫『さうすると善ばかり選り抜いて、身魂の曇つた者は一人も寄せないと云ふ神様の御方針ですかな』
高姫『其処は惟神ですよ。無理に引張に行つた処で寄らなきや仕方がありませぬワ。また何程引留めたつて綱を付けて縛つて置く訳にもゆかず、脱退する者はこれも惟神に任して、自由行動を取らして置くのですな。来る者は拒まず、去る者は追はずと云ふのが神様の思召だ。無理に引張りに行つて下さるなよ、時節参りたら神が誠の者を引寄せて誠の御用をさすぞよ。とおつしやるのだから、そうヤキモキ心配するには及びませぬ哩』
黒姫『それでも玉照姫さまを無理に引張て来いと御命令をなさつたぢやありませぬか』
高姫『それはあなたの量見違だ。無理に引つぱらうとするから、取り逃したのだ。向うの方からどうぞ玉照姫様をお預り下さいと云つて来るやうに、上手に仕向けぬから、そンな事にかけては抜目のない素盞嗚尊は甘い事をやつたぢやないか。お前さまも随分賢いお方ぢやが、千慮の一失とか云つて、この度あの件に限つては黒姫さまの失敗でしたよ』
黒姫『そうだと云つて、愚図々々して居れば三五教に八九分取られてしまふやうになつて居たのだから、ソンナ廻り遠い事をして居つては、六菖十菊の悔いを残さねばならぬと思つたから非常手段をやつただけの事です。勝敗は時の運、今になつて死ンだ児の年を数へたつて仕方がありませぬワ。貴方も余程愚痴つぽくなつて、取返しのつかぬ愚痴な事を言ひなさいますな』
 高姫は眉をキリリとつり上げ、ドシンと四股を踏み、畳を鳴らしプリンと尻を向け、次の間に姿を隠したり。
高山彦『コレコレ黒姫さま、お前は何と云ふ御無礼な事をおつしやるのだい。大将や師匠は無理を云ふものだと思へと何時も部下の者に云つて聞かせて居ながら、何故一つ一つ口答へをしたり、言ひ込めたりなさるのだ。仲に立つた柱の私は何とも挨拶の仕様が無いではないか』
 黒姫は目に角立てて、
『コレお前さま、以前由良の川を渡つた時に、何でも彼でも絶対服従すると云つたぢやないか、草履取にでもしてくれと云つたではないか。今良い亭主面をして竜宮の乙姫様の生宮の云ふ事に一々干渉なさるのか。黙つて引込みて居なさい、お前さまが首を突き出して出しやばる幕ぢやないのだ。余り差出口をしなさると箝口令を励行しますぞ』
高山彦『ハイハイ竜宮様の御逆鱗、もうこれからは沈黙を守りますワイ』
黒姫『何程黒姫が砲弾を発射しても、高山砲台は沈黙を守つて決して応戦してはなりませぬぞや。二〇三高地の性念場になつて居るのに傍から敵の援軍が来て堪るものか』
高山彦『ハイハイ仕方がありませぬ。どつか、渤海湾の海底にでも伏艇して形勢観望と出かけませう。しかしながら黒船が敵弾を受けて苦戦の最中を見て居る私は、どうしても中立的態度は取れませぬワ。何とか応援を致したいやうな気が致します』
 黒姫は稍機嫌を直し、
『アヽさうかいなア、それが真心の現はれと云ふものだ。矢張り気になるかいなア、夫婦となれば気にかかると見える。矢張黒姫のハズバンドとして相当の資格を保有してござる。元は赤の他人でも夫婦の愛情と云ふものはまた格別なものだ』
とまたニコニコ笑ひ出すおかしさよ。
 一天黒雲漲り暴風吹き起り雷鳴轟くかと思ひきや、高山彦の円滑なる言霊の伊吹によつて黒雲忽ち四方に飛散し、明皎々たる満月の光、中天に綺羅星の現はれたる如き天候と一変したりける。
黒姫『コレコレ高山彦さま、お前さまは見掛けによらぬ親切な人だつた。その親切を吐露して高姫さまの御機嫌を直して来て下さい。しかし親切を尽くすと云つても程度がありますよ』
高山彦『随分難かしい御註文ですなア。その程度が一寸分りませぬ、何処迄と云ふ制限を与へて下さいな』
黒姫『エヽ不粋な人だなア。そこはそれ、不離不即の間に立つて円満解決を計るのだ。電波を送るなぞは絶対に禁物ですからな』
高山彦『誰がアンナ婆アさまに電波を送つて堪るものか、安心なさい』
黒姫『婆アさまに電波を送らぬとおつしやつたが、高姫さまが婆アさまなら、私はもう一つ婆アさまだ、そうするとお前は余程険呑な人だナア。これだから折角出て来たお民を、巧い事を云つて高城山まで放り出したのだ。コレ高山さま、ソンナ事に抜け目のあるやうな、素人とは違ひますよ。この道にかけたら、世界一の経験者だから、お前のやうな雛子とは違ひますよ、確りとやつて来なさい。これからは婆アと云ふ事は云つて貰ひますまい。年は取つても心は二八の花盛り、霊主体従の仕組と云つて心に重きを置くのだよ』
高山彦『同じ、婆アどつこい、昔の娘でも貴方はまた格別ぢや、どことは無しに、良い処があります哩』
黒姫『それはそうだらう、七尺の男子を手鞠のやうに飜弄すると云ふ黒姫の腕前だから、何程高山さまが、地団太踏んだつて、足許へも寄り付けるものか。しかしながら、良く気を付けて、昔の娘の高姫さまに旨く取り入つて御機嫌を回復して来るのだ。くれ呉れも送つてはなりませぬぞや』
 高山彦は迷惑相な顔付で高姫の居間を訪れた。高姫は、夜着を頭までグツスリ被つて、捨鉢気味になつて横たはつて居る。
高山彦『モシモシ高姫さま、高山でございます』
高姫『コレお前さま、戸惑ひをして居るのかな、私は黒姫さまぢやありませぬよ。貴方のお出でになる処は方角違ですよ。サアサア トツトとあつちへ往つて下さい、黒姫さまに痛くも無い腹を探られちやお互の迷惑だからなア』
高山彦『イエイエ決して決して御心配下さいますな。山の神様の公然認可を得て参りました。実の処、黒姫がお詫に参りますのでございますが、どうも余り失礼な事を物の機で申上げ、貴方に合す顔がないところから、私に代つて旨く御機嫌をドツコイ、十分に御得心の往くやうにお詫をして来いとおつしやいました。どうぞ黒姫さまの脱線振りは、神直日大直日に見直し聞直し不調法は宣り直して上げて下さいませ』
高姫『コレコレお前さまは、何時の間にやら下鶏になつてしまつた。何故それほど主人のクセに奥様に敬語を使ふのだい』
高山彦『ハイハイこれには、曰く因縁がございます』
高姫『因縁があるか何だか知らぬが、貴方がさう御丁寧な言霊を使ひなさると、自然に夫婦仲が良くなつてお目出度い。それだから嬶大明神で、高山彦さまはお目出度いと人が云ひますよ。ホヽヽヽヽ』
高山彦『何でも結構です。どうぞ貴方も御機嫌を直して下さい。さうすればこのお目出度い男が尚お目出度くなりますから、和合して下さい』
高姫『和合して下さいとはそれは何を云ひなさる。一方の大将と大将の争ひを平和にするのは和合だが、何と云つても、私と黒姫さまとは師弟の間柄ぢやないか。師匠の私に和合してくれなぞとチツと僣越ぢやありませぬか。今迄のお気に障つた処はどうぞお許し下さいませと謝罪するのが当然だ、それをソンナ傲慢不遜の態度では、高姫の腹の虫が容易にチヤキチヤキと承諾致しませぬよ』
高山彦『御説御尤も、夫婦の仲と師弟の間を混同して居ました。これは黒姫と私との間に用ゆる言葉でございます。高姫のチヤチヤ様、何卒黒姫の御無礼、寛大な大御心に見直し聞直し許してやつて下さいませ』
高姫『アヽさうかいな、さう物が分かれば、元より根のない喧嘩だ。どちらも神を思ひお道を思うての争ひなのだから、私人としての恨みはチツとも無いのだ。どうぞ黒姫さまに早く此処に来て貰つて下さい』
高山彦『承知致しました。黒姫さまも嘸お喜びになる事でございませう』
高姫『ソレ又々、貴方は奥さまに対して敬語を使ひなさる。余り見つともよくない、慎みなさいや』
高山彦『ハイハイ以後は慎みます』
とこの場を立ち、
『アヽ敬語を使はねば、黒姫さまには叱られるなり、困つた事だ』
と呟きつつ黒姫の居間に帰り来り、高山彦は怖さうに、襖をスーツと開き、半分逃げ腰になつて、顔ばかり突出し、形勢観望の態度を取つて居る。黒姫は目敏くこれを眺めて、
『コレコレお前は高山さまぢやないか。その態度は一体どうしたのだい』
と震ひ声で呶鳴り付けた。
『ハイ、ドドドーモ致しませぬ』
と云ひつつびつくりして閾の外にドスンと尻餅を搗きアイタヽヽヽ、
黒姫『コレ高山さま、何をしとるのだい。這入つて来て早く注進なさらぬかい』
 高山彦はもぢもぢしながら、云ひ難さうに、
『高姫さまがそれはそれは御機嫌麗はしく、和合は和合、謝罪は謝罪、そこで和謝何もかも中立と合罪』
『何だか歯切れのせぬ返事だな。何はともあれ、高姫さまのお居間にお伺ひしよう、何時迄兄弟牆に鬩ぐやうな内輪喧嘩を継続して居ても、お互の不利益だ。どれ、これから和合して来ませう』
高山彦『モシモシ黒姫さま、和合はいけませぬよ』
『何、和合が不可と、喧嘩をせいと云ひなさるのか』
 高山彦は周章気味で、
『イエ高姫さまが、喧嘩株式会社を創立なさつて、株券を募集したり、社債(謝罪)を起したりするとか何とか云つてましたよ。何でも些細な間違ひで、いつまでも蝸牛角上の争闘を続けて居るのは、国家の内乱も同様だから可成く平和の解決を致します』
 黒姫は委細かまはず、ドスンドスンと床を響かせながら、高姫の居間をさして進み入り、
『高姫様、御機嫌は如何でございます。御無礼の段は平にお詫を致します』
『イヤ御無礼はお互様で、どうぞこれからは感情の衝突は一掃し車の両輪となつて、神国成就のために活動致さうぢやありませぬか』
『有難うございます。何分よろしく御願ひ致します』
『時に黒姫さま、自転倒島の魔窟ケ原に残してある梅公、その他の宣伝使の方々は、愚図々々して居ると、またもや三五教に、青彦や常彦、夏彦のやうに沈没すると困りますから、今の内に本山に迎へ取つたらどうでせうか』
『ハア御意見通り、黒姫も賛成致します。飛行船を二艘ばかり、鶴、亀の両人に操縦さして迎へて帰つてはどうでせうか』
『それは至極適任でせう。コレコレ鶴公、亀公』
と高姫は金切声を出して呼び立て居る。軈て鶴、亀の二人は、二艘の飛行船を操縦して四五の随員と共に天空を轟かして進み行く。

(大正一一・五・七 旧四・一一 藤津久子録)



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