出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語16-1-101922/04如意宝珠卯 白狐の出現王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
大江山の城
あらすじ
 鬼雲彦が妻子の悲惨な姿に悲歎にくれていると、鬼彦は「実は、自分は大江山(たいかうざん)の鬼武彦であると告げる」。他の者も白狐の化身であった。これを見て鬼雲彦は鬼ケ城山方面を指して逃げ出すが、亀彦達に出会い、また大江山に逆戻りする。
 鬼雲彦は、城では妻鬼雲姫に会うことができたが、井戸に落ち込んでしまい、蝮の攻めを受けている。亀彦は鬼雲彦夫婦を助けようとしたが、その鬼雲彦夫婦は伊吹山方面に遁走した。
 鬼武彦は神政成就の暁まで大江山を守護することになる。
名称
旭 石熊? 石熊 鬼雲彦 鬼雲姫? 鬼雲姫 鬼武彦 鬼虎? 鬼虎 鬼彦? 鬼彦 亀彦 熊鷹? 熊鷹 高倉 月日明神 英子姫 悦子姫
悪魔 河姫 亀彦(鬼雲彦子供) 国武彦 国治立大神 魂 自在天 邪神 神素盞鳴大神 虎彦 魄 白狐 瑞の御霊 八岐大蛇 山姫
天津祝詞 天の磐船 伊吹山 大江山 鬼ケ城山 自転倒島 神政 大江山(たいこう) 常世の国 豊葦原の中津国 魔窟ケ原 八州の国 霊界の四辻
 
本文    文字数=8271

第一〇章 白狐の出現〔六〇〇〕

 八洲の国を駆け巡り  この世を曇らす自在天
 自由自在の活動を  続けて茲に婆羅門の
 大棟梁と仰がれし  鬼雲彦の猛将も、

 最愛の妻の非業の最後にまたもや続いて子女の浅ましきこの姿を見て胸も張り裂くばかり、魂消え、魄亡びる如き心地しながらドツカとその場に打倒れ無念の涙にくれ居たり。鬼彦は肩を揺りながら大口開けて高笑ひ、
『アハヽヽヽ、吾こそは鬼彦とは詐り誠は大江山に現はれし白狐の鬼武彦、汝悪神の計略を根底より覆へさむと千変万化の活動を続け、神素盞嗚の大神の大命を奉じ、汝が一類を征服に向うたり、汝が力と恃む鬼彦は魔窟ケ原の岩窟に匿ひあれば汝が神力を以て索め出せよ、さりながら彼は最早汝の意志に従ふ者に非ず、立派なる三五教の信者となりて居るぞ、汝が妻と見えしは汝が眼の誤り、吾眷族の名もなき白狐の変化』
と言葉終らずに鬼雲姫は忽ち巨大なる白狐となつてノソリノソリと這ひ始め、鬼雲彦に向つて眼を光らせ牙を剥き飛びかからむとする勢を示し居る。鬼虎はまたもや威丈け高に胸を打ちながら大口開けて高笑ひ、
『アハヽヽヽ、吾こそは大江山に現はれて四方の魔神を征服し言向け和す神の使、旭の白狐が化身なるぞ、汝が力と恃む四天王の随一と聞えたる鬼虎は前非を悔い今は三五教の信者となれり、魔窟ケ原の岩窟に匿ひあれば未練あらば汝自由に岩戸を開いて面会せよ、汝が伜と見えたるは、これも白狐の化身なり、汝が妻子は手段を以て、ある処に匿まひあれば改心次第にて親子夫婦の対面を許しくれむ』
と言葉終らぬにまたもや一つの網代籠よりノソノソ這ひ出た巨大の白狐、以前の如く鬼雲彦が身辺に目を睜らし牙を剥きつつ進み寄る。熊鷹はまたもや立ち上り、
『吾こそは神素盞嗚の大神の立てさせ給ふ三五の教に仕ふる白狐の高倉、熊鷹と見えしはこの方が化身』
と言葉終らぬにまたもや這ひ出た巨大の白狐、同じく鬼雲彦に向つて襲ひ行く。石熊はまたもや立ち上り、
『吾こそは月日明神と名を頂きし常夜の国の大江山に現はれたる白狐なるぞ、汝は今より前非を悔い婆羅門教を振り棄てて三五の神の教に信従するか、違背に及ばば大江の山は木端微塵に踏み砕き、草の片葉に至るまで焼き亡ぼさむ、返答如何に』
と詰めかける。またもや一つの駕籠よりは巨大の白狐現はれて鬼雲彦を前後左右より取り巻きコンコンと啼き立てながら改心を迫る。鬼雲彦は忽ち精神錯乱して大刀を引き抜き前後左右に荒れ狂ひ、館を後に木の茂みを指して姿を隠したり。数多の従卒共は鬼雲彦が後を追ひ、山を越え谷を渉り鬼ケ城山の方面さして力限りに遁走したりける。
 鬼ケ城山の方面より亀彦を先登に英子姫、悦子姫は宣伝歌を謡ひながら此方に向つて前進し来る。流石の鬼雲彦も前後に敵を受け死物狂の勇気を現はし、長刀を引き抜いて亀彦目蒐けて斬つてかかるを、心得たりと亀彦は右に左に身を躱し飛鳥の如く挑み戦へば鬼雲彦は踵を返し、もと来し道を一目散に帰り行く。数多の従卒は吾後れじと三十六計の奥の手を出して散り散りバラバラ、足に任せて逃げて行く。何時の間にやら鬼雲彦はまたもや本城の門前に帰り来たりぬ。門内には鬼雲姫が叫び声、
『鬼雲彦の夫はあらざるか、虎彦、亀彦、山姫、河姫は何所ぞ』
と身を藻掻き声を限りに叫び居る。鬼雲彦は息も絶え絶え門戸を敲き、
『ヤアさう言ふ声は女房なるか、俺は無事に此処まで帰つて来たぞよ。鬼武彦はどうなつた、白狐の奴等は何処へ行つた、返答せよ』
と呶鳴り立てる。鬼雲姫は門内より、
『アヽ恋しき吾夫、よくも無事に帰らせ給ひしぞ』
と中より門を颯と押し開き鬼雲彦が手を執つて奥へ奥へと進み行く。余りの嬉しさに足許見えず鬼雲姫は夫の手を携へたるまま、かねて穿ち置いたる城内の井戸に夫婦共々にドスンとばかり陥みぬ。大江山の本城は敵も味方も影を隠し幽かに鼠の泣き声のみ聞え居る。門前には大江山の山颪、岩も飛べよとばかり吹き荒みゐる。月は早西に没し黒雲四辺を包み咫尺を弁ぜず、暗黒の帳は下されたり。鬼雲彦夫婦は千仭の井戸の底に数多の蝮と諸共に世間知らずの楽隠居、否蝮地獄の苦き生活哀れなりける次第なり。
 かかる処へ後追ひ来たる亀彦はツカツカと門内に進み入り城内隈なく探せども人影さへも見えざれば如何せしやと三人は四辺に心を配りつつ窺ふ折しも井戸の底より怪しき叫び声、はて訝かしやと手燭を点して覗へば紛ふ方なき鬼雲彦が夫婦の者、九死一生のこの苦みを見るに見かね館の井桁に太縄を打ち掛けツルツルと井中に釣り下せば、鬼雲彦夫婦は無我夢中になつて手早くこの綱に跳び付くや否や綱はツルツルと何物にか引き上げられて再び旧の処へ帰り行きぬ。暗を通して聞ゆる三五教の宣伝歌、鬼雲彦夫婦は叶はぬ時の神頼み、婆羅門教の神歌を唱へ声を限りに哀願する。一方鬼武彦は先に据ゑ置きたる千引の岩を取り除き岩蓋をサツと開けば待ちかねたる如く現はれ来る鬼彦、鬼虎、熊鷹、石熊その他数多の帰順せし人々は、枯木に花の咲きしが如く喜び勇み、大江山の本城目蒐けて帰り来たりぬ。
 東の空はホンノリと白み初め、明けの鵲がカアカアと啼き初めたり。漸く山上の鬼雲彦が門前に立ち帰れば亀彦、英子姫、悦子姫の三人に取り巻かれ、鬼雲彦夫婦は何事か説諭を受けつつありぬ。鬼彦初め一同は亀彦一行に一礼し天津祝詞を奏上し三五教の宣伝歌を声を揃へて宣りつれば、鬼雲彦夫婦は居たたまらず館を捨てて一目散に雲を霞と駆け出し伊吹山の方面を目蒐けて天の岩船に手早く打乗り夫婦諸共中空を翔り行く。
 亀彦、英子姫、悦子姫は、鬼武彦の神を言霊を以てさし招けば忽ち昼の天を掠め白煙となりて南方より現はれ来り忽ち三人の前に英姿を現はしたり。
亀彦『ヤア鬼武彦殿、貴下の活動天晴れ天晴れ、吾はこれより聖地に向つて再び進まむ。貴下は此処に留まり給ひて、旭、高倉、月日の諸使と共に悪魔征服の守護をなし給へ』
鬼武彦『委細承知仕る、当山は天下の邪神集まり来る霊界の四辻なれば国武彦の大神、以前の如く国治立の大神と現はれ給ひ、神素盞嗚大神、瑞の御霊と現はれて、神政成就の暁まで代る代る当山を守護し奉らむ、吾々此処にあらむ限りは豊葦原の中津国なる自転倒島は先づ先づ安心なされたし、貴下は素盞嗚の大神様の御後に従ひ天下に蟠る八岐の大蛇を言向けて神政復古の神業に奉仕されよ、万一御身の上に危急の事あらば土地の遠近を問はず、鬼武彦、旭、高倉、月日の名を呼ばせ給へば、時刻を移さず出張応援仕らむ』
 亀彦、英子姫、悦子姫は一度に満足の意を表し鬼武彦の千変万化の神業を激賞し此処に目出度く袂を分ち東を指して進み行く。

(大正一一・四・一四 旧三・一八 北村隆光録)



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