出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語15-4-201922/04如意宝珠寅 五十世紀王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
天国鏡の岩
あらすじ
 玉彦、厳彦、楠彦の三人は最高天国の入口の鏡の岩の前で苦心していたが、松彦のヒントで、天津祝詞を百回唱えることで、門を開けることができた。
 天国では50世紀になっており、三尺から一尺の神人が多い。これは地上の人間が、世が開けるにつれて労苦をいとい、乗り物を使うので体が虚弱になってしまい退化したのだった。
 三人は金銀真珠の清庭に導かれる。
名称
厳彦 楠彦 玉彦 松彦
天使 本守護神 霊体
天津祝詞 鏡岩 河鹿峠 神言 現界 言霊 執着心 娑婆 神界 高天原 天国 常世の国 ミロク人種 目無堅間の船 霊衣
 
本文    文字数=11342

第二〇章 五十世紀〔五八七〕

 松彦の天使に伴はれた一行三人は、鏡の岩にピタリと行当り、如何にしてこの関所を突破せむかと首を傾けて、胸に問ひ心に掛け、首を上下左右に静かに振りながら、やや当惑の体にて幾何かの時間を費やしゐたり。
玉彦『吾々は現界においても、心の鏡が曇つてゐるために、万事に付け往き当り勝ちだ、神界へ来ても矢張往き当る身魂の性来と見える哩。アヽ、どうしたらよからうな。見す見す引返す訳にも往かず、何とか本守護神も好い智慧を出してくれさうなものだなア』
松彦『貴方はそれだから不可ないのですよ。自分の垢を本守護神に塗付けるといふ事がありますか』
玉彦『吾々は常に聞いて居ります。本守護神が善であれば、肉体もそれに連れて感化され、霊肉共に清浄潔白になり天国に救はれると云ふ事を固く信じてゐました。こう九分九厘で最上天国に行けぬと云ふことは吾々の本守護神もどうやら怪しいものだ。コラコラ本守護神、臍下丹田から出て来て、この肉の宮を何故保護をせないのか、それでは本守護神の職責が尽せぬでは無いか。肉体天国へ行けば本守護神もが行ける道理だ。別に玉彦の徳ばかりでない、矢張本守護神の徳にもなるのだ。何をグヅグヅして居るのかい』
と握り拳を固めて臍の辺をポンポン叩く。
松彦『アハヽヽヽ、面白い面白い』
玉彦『これは怪しからぬ、千思万慮を尽し、如何にしてこの鉄壁を通過せむかと思案にくるるのを見て、可笑しさうに吾々を嘲笑なさるのか、貴方も余程吝な守護神が伏在して居ますな』
松彦『天国には恨みも無ければ悲しみも無い。また嘲りもありませぬ。私の笑つたのは貴方の守護神が私の体を籍つて言はれたのですよ』
玉彦『さう聞けば、さうかも知れませぬな。これこれ厳彦サン、楠彦サン、貴方がたの本守護神は何とおつしやいますかな』
楠、厳『アア未だに何とも御宣示がありませぬ。茲しばらく御沈黙の為体と見えます哩。こうなると実に恥しいものだ。吾々の背後には立派な女神の守護神が鏡に写るのが見える、有難い、吾々は何と云つても矢張身魂が立派だから、守護神もあの通り立派なと思う刹那、パツと消えてしまつて後には霊衣さへ見えなくなつてしまつた。アヽ心の油断といふものは恐ろしいものだナア』
松彦『貴方がたは何か一つ落して来たものはありませぬか』
『最早娑婆の執着心を捨てた以上は、落すも落さぬもありませぬワ。強つて落したと云へば執着心位のものでせうよ』
松彦『イーエ、ソンナものぢやありませぬ。貴方がたに取つて、高天原の関門を通過すれば容易に通過が出来ます』
玉彦『コレコレ楠サン、厳サン、お前たち何か落した物が思ひ出せないか』
厳彦『オー思ひ出した。河鹿峠を下る時に、大切な馬一匹と自分の肉体を一つ落して来たやうに記憶が浮んで来る。落したと云つたら、マアソンナ物だらう。もしもし松彦サン、馬の死骸や人間の死骸を拾つて来なくては此処が通過出来ないのですか』
松彦『さうです。馬の死骸と人間の死骸を拾つて来なさい。さうすれば容易に通過が出来ませう』
玉彦『一寸待つて下さい。貴方のおつしやる事は少し脱線ぢやありますまいか。かくの如き四面玲瓏たる天国に左様な穢苦しい死骸を持つて来てどうして関門が通過出来ませうか。清きが上にも清き天国に、死んだ馬を引ずつて来た処で乗る訳にも往かず、一足も歩く訳にも往くまいし、ハテ訳の分らぬ事をおつしやります哩』
松彦『サアその落した馬と人間の死骸を生かしさへすれば、立派に通過が出来るのだ。マア一寸本守護神と篤り御相談をなさいませ。私はそれまで此処に待つて居ます』
玉彦『ヤア御忙しいのに済みませぬな』
厳彦(横手を打ち)『ヤア分つた分つた、本守護神の囁きによつて、一切万事解決が着いた。馬を落したと云ふ事は、心の駒の手綱が緩んで何処かへ逸走してしまつたと云ふ事だつた。死骸を落したと云ふ事は吾々の身魂が天国の美はしき光景に憧憬れ魂を宙に飛ばしてしまつたといふ謎であつた。さうして最も一つ大事なのは、神界旅行に必要なる天津祝詞の奏上や神言の合奏であつた。箕売が笠でひるとはこの事だ。現界に居る時は一生懸命に、宣伝歌を称へ、天津祝詞の言霊を朝夕奏上したものだ。その言霊の奏上も、天国に自分も救はれ、数多の人を救はむがためであつた。しかるにその目的たる天国に舞ひ上りながら、肝腎の宣伝使の身魂を何時の間にやら遺失してしまひ、心の駒は有頂天となつて空中に飛散してしまつて居た。アヽ天国と云ふ処は、油断のならぬ処だな、結構な処の気遣ひの処で怖い処だ。サアサア御一同様、天津祝詞をこの鏡岩に向つて奏上致しませう』
と一同は夜の明けたる心地して、勇み立ち、天津祝詞を一心不乱になつて百度ばかり奏上した。鏡の岩は自然と左右に開かれ、坦々たる花を以て飾られたる、清き大道が現はれて来た。三人は声を揃へて、
『ヤア松彦様、有難うございました。御蔭様で難関も無事に通過致しました。何分に馴れぬ神界の旅行、勝手も存じませぬから、何とぞよろしく御世話下さいませ』
松彦『否々、貴方の事は貴方がおやりなさい。現界において貴方がたは、常に、人を杖に突くな、師匠を便りにするなと云つて廻つて居られたでせう』
 三人は、
『アハヽヽヽ、余り好い景色で気分が良くなつて何もかも忘れてしまつた。さうすると矢張り執着心も必要だ』
松彦『それは決して執着心ではありませぬ。貴方がたの身魂を守る生命の綱ですよ。ヤア急いで参りませう』
 向ふの方より、身の丈二尺ばかりの男女五人連、手を繋ぎながら、ヒヨロヒヨロと此方に向つて進み来るあり。
玉彦『ヤア小さいお方が御出でたぞ。此処は小人島のやうだな。天国にはコンナ小さい人間が住まつて居るのですか。ナア松彦サン』
松彦『何、神界ばかりか、現界もこの通りですよ。一番図抜けて大男と云はれるのが三尺内外一尺八寸もあれば一人前の人間だ。顕幽一致、現界に住まつてゐる人間の霊体がこの高天原に遊びに来てゐるのだ。ああやつて手を繋いで歩かないと、鶴が出て来て、高い処へ持つて上るから、その難を防ぐため、ああやつて手を繋いで歩いて居るのだ』
玉彦『ハテ益々合点が往かなくなつて来た。吾々三人は、常世の国を振出しに、世界各国を股にかけ、現界は大抵跋渉した積りだが、何程小さき人間だと云つても六尺より低い男女は無かつた。赤ん坊だつてあれ位の背丈は、現界の人間なれば持つてゐますよ。貴方、何かの間違ひではありますまいか』
松彦『六尺以上の人間の住まつて居つたのは、今より殆ど三十五万年の昔の事だ。貴方が河鹿峠で帰幽してからは、最早三十五万年を経過して居るのだ。現界は二十世紀といふ、魂の小さい人間が住まつて居た時代を超過し、既に三千年暮れてゐる。現界で云へば、キリストが現はれてから五十世紀の今日だ。世は漸次開けるに伴れて、地上の人間は労苦を厭ひ、歩くのにも電車だとか、自動車、汽車、風車、羽車等に乗つて天地間を往来し、少しも手足を使はないものだから、身体は追ひ追ひと虚弱になつて最早五十世紀の今日では、コンナ弱々しい人間になつてしまつたのだ。しかしながら、十九世紀の終りから二十世紀にかけて芽を吹き出した、三五教の教を信じ不言実行に勉め、労苦を楽しみとしてゐる人間の系統に限つて、それと反対に六尺以上の体躯を保ち、現幽神界において、神の生宮として活動してゐるミロク人種もありますよ』
三人『吾々は昨夜、河鹿峠で落命したと思つて居るのに、最早三十五万年も暮れたのでせうか。如何に神界に時間が無いと云つてもこれはまた余り早いぢやありませぬか』
松彦『サアお話は聖地に到着の上ゆつくりと致しませう。神様がお待兼ね、ぼつぼつ参りませう』
と先に立つて歩み出した。三人は松彦の後にいそいそと随ひ行く。忽ち眼前に展開せる湖水の岸に着いた。金波銀波洋々として魚鱗の如く日光に映じ、その壮観譬ふるに物なきほどである。七宝珠玉を以て飾られたる目無堅間の御船は、幾十艘とも無く浮んでゐる。松彦は、その中最も美はしき、新しき船にヒラリと飛び乗り、三人に同乗を勧め、自ら櫓を操りながら、西南を指して波上豊に揺れ行く。湖面は日光七色の波を以て彩どられたる如き波紋を描きつつ、船唄勇ましく聖地の高天原を指して、勇み漕ぎ行く。波の彼方に、霞の上に浮いてゐる黄金の瓦、銀の柱、真珠、瑪瑙、珊瑚、瑠璃、琥珀、硨磲等の七宝を鏤めたる金殿玉楼は太陽の光に瞬きて、六合を照すばかりの荘麗を示してゐる。漸くにして船は一つの島に着いた。地上一面に敷かれたる金銀真珠の清庭がある。東の門は巨大なる真珠を以て固められ、西には瑪瑙の神門、南は瑠璃の神門、北には硨磲の神門を以て囲まれ、東北には白金の門、西南には白銀の門、西北には黄金の門、東南には瑪瑙の門を造られ、その他に、八の潜り門は各珍らしき宝玉を鏤められ、その壮観美麗なる事、筆舌のよく尽す処ではない。松彦は先づ東門より三人を伴ひ、静々と進み入る。入口には眉目美はしき男女の天使、満面に笑を湛へて一行を歓迎しつつありき。松彦は是等の美はしき天使に目礼しながら、三人と共に奥へ奥へと進み行く。

(大正一一・四・四 旧三・八 藤津久子録)



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