出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語15-3-181922/04如意宝珠寅 婆々勇王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
奇の巌窟ウラナイ教の館
あらすじ
 高姫達は宣伝歌を聞くと苦しみだした。黒姫は、「宣伝歌が恐ろしいようでは、ウラル彦や鬼雲彦に申し訳ない」と、多くの者を鼓舞した。黒姫は、また、高姫のことを「弱い看板だ」と言う。黒姫は懐剣を手に、表門を開き、宣伝使に立ち向かおうとしたが、腰を抜かして倒れてしまう。
名称
愛子姫 浅子姫 幾代姫 蠑リ別 岩子姫 梅彦 亀彦 久助 菊子姫 岸子姫 黒姫 高国別 高姫 丁ン助
ウラル彦 鬼雲彦 大広木正宗? 素盞鳴尊 日の出神? 変性女子 瑞の霊 竜宮の乙姫?
天の岩戸 ウラナイ教 執着心 神政 高天原
 
本文    文字数=4521

第一八章 婆々勇〔五八五〕

 高姫、黒姫、蠑螈別を始め、一座の者共は折から聞ゆる宣伝歌の声に頭を痛め、胸を苦しめ、七転八倒、中には黒血を吐いて悶え苦しむ者もあつた。宣伝歌は館の四隅より刻一刻と峻烈に聞え来たる。
黒姫『コレコレ蠑螈別サン、高姫サン、静になさらぬか、丁ン助、久助その他の面々、千騎一騎のこの場合、気を確り持ち直し、力限りに神政成就のため活動をするのだよ、何を愚図々々キヨロキヨロ間誤々々するのだい。これ位の事が苦しいやうなことで、どうして、ウラナイ教が拡まるか、転けても砂なりと掴むのだ、ただでは起きぬと云ふ執着心が無くては、どうしてどうしてこの大望が成就するものか。変性女子の霊や肉体を散り散りばらばらに致して血を啜り、骨を臼に搗いて粉となし、筋を集めて衣物に織り、血は酒にして呑み、毛は縄に綯ひ、再びこの世に出て来ぬやうに致すのがウラナイ教の御宗旨だ。折角今迄骨を折つて天の磐戸隠れの騒動がおつ始まる所まで旨く漕ぎつけ、心地よや素盞嗚尊は罪もないのに高天原を放逐され、今は淋しき漂浪の一人旅、奴乞食のやうになつて、翼剥がれし裸鳥、これから吾々の天下だ。この場に及んで何を愚図々々メソメソ騒ぐのだ。高姫さま貴女も日の出神と名乗つた以上は、何処迄も邪が非でも日の出神で通さにやなるまい。憚りながらこの黒姫は何処々々迄も竜宮の乙姫でやり通すのだ。蠑螈別さまは飽までも大広木正宗で行く処までやり通し、万々一中途で肉体が斃れても、百遍でも千遍でも生れ替はつてこの大望を成就させねばなりませぬぞ。エーエー腰の弱い方々だ。この黒姫も気の揉める事だワイ、サアサア、シヤンと気を持ち直し、大望一途に立て通す覚悟が肝腎ぢや。中途で屁古垂れる位なら、初からコンナ謀反は起さぬがよい。この黒姫が千変万化の妙術をもつて、瑞の霊の素盞嗚の神がもしも此処へやつて来たなら、乞食の虱だ、口で殺してしまふ。海に千年、山に千年、河に千年の苦労を致した黒姫ぢや。高姫さま、蠑螈別さま、お前は未だ未だ苦労が足らぬ、苦労なしに誠の花は咲かぬぞや。これこれ丁ン助、久助何をベソベソ吠面かわくのだ、些と確り致さぬとこの黒姫さまの拳骨がお見舞申すぞ。何だ宣伝歌が恐ろしいやうな事で、どうならうかい、女の一心岩でも突き貫く、無茶でも突き貫かねばこの婆の顔が立たぬ、どうしてウラル彦の神に申訳が立つか、鬼雲彦に合はす顔があるまいぞ。エーエー、腰抜ばかりだなア。コレコレ高姫さま確りせぬかいなア、この黒姫がお前の傍について居なかつたら、お前さまはとうの昔に素盞嗚尊に骨も筋も抜かれてしまひ、今頃は茹蛸のやうになつて居るお方だ。大将は看板とは云ふものの、これやまた滅相弱い看板ぢやナア』
 この時宣伝歌は益々激しく、館の四辺より響いて来る。高姫と蠑螈別は逆上したか、互に目を怒らし牙を剥き猿の喧嘩のやうに、噛むやら掻くやらむしるやら、キヤツ、キヤツとキンキリ声を出して、上になり下になり、組んづ組まれつ黒姫の言葉も耳に入らぬ体にて掴み合を始めて居る。並居る数多の者共は互に鉄拳を振り上げ、彼我の区別なく入り乱れて打つ、蹴る、擲る、呶鳴る、泣く、喚く、忽ち阿鼻叫喚修羅の衢と化してしまつた。
 黒姫は懐剣を逆手に持ち表を指して韋駄天走り、表門を開くや否や、高国別以下勇士一行の姿に肝を潰し、アツとその場に腰を抜かし、蟹のやうな泡を吹き、目玉を二三寸ばかり前に飛び出させ、口をポカンと開けたまま、一言も発し得ず、開いた口が閉まらぬその為体の可笑しさ、一同は思はず吹き出し、
『ワハヽヽヽ、オホヽヽヽ』

(大正一一・四・三 旧三・七 加藤明子録)



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