出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語15-1-91922/04如意宝珠寅 薯蕷汁王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
北山山中ウラナイ教の本部
あらすじ
 ウラナイ教は八岐大蛇、金毛九尾悪狐の建てたもので、大自在天を本尊とあおぐ。教主は日の出神の生き宮と自称している高姫で、黒姫が補佐している。高姫は変性男子の御血筋の肉体で、変性男子の教えを守っている。高姫と黒姫以外の信者は皆盲目である。これは、「世間のことが何もわからず神一筋になる」ように、高姫と黒姫が信者の鼓膜を破り、目をつぶしてしまうからである。
 高姫は宣伝使安彦、国彦、道彦を「救われた礼に」と館へ招き、縁の欠けたどんぶりでとろろ汁を出して、「三五教の宣伝使にはそれが適当だ」と言う。怒った国彦はどんぶりのとろろをぶちまけ、部屋を汚して、どこかに行ってしまう。高姫は「国彦と道彦を信者にする」のだと言い、出刃包丁で目をつぶそうとする。
名称
国彦 黒姫 田加彦 高姫 道彦 百舌彦 安彦
悪神 天足彦 一途の川の婆 艮の金神 ウラル彦 ウラル姫 胞場姫 王仁 金毛九尾白面悪狐 国魂 小島別 素盞鳴尊 大自在天 常世彦 常世姫 盤古大神 日の出神の生宮 変性男子 変性女子 法華坊主 魔神 八岐大蛇 与太彦! 竜宮の乙姫
天の岩戸 一途の川 ウラナイ教 ウラル教 北山 底の国 体主霊従 立替へ 筑紫の州 常世の国 根の国 バラモン教 真澄の鏡 宮垣内 無抵抗主義 竜宮城
 
本文    文字数=15232

第九章 薯蕷汁〔五七六〕

 千早振る遠き神代のその始め、神の教に背きたる、天足彦や胞場姫の、醜の身魂の凝結し、八岐大蛇や、金毛九尾白面の悪狐となつて、天地の水火を曇らせつ、常世の国に現はれし、常世彦や常世姫、盤古大神の体に宿りて世を乱し、一度は神の御教に、服ひ奉り真心に、立帰りしも束の間の、いや次々に伝はりて、ウラル彦やウラル姫の、またもや体に宿りつつ、天地を乱す曲業の、力も失せて常世国、島の八十島八十国の深山の奥に立籠り、人の身魂を宿として、バラモン教やウラナイの、教を樹てて北山の、鳥も通はぬ山奥に、数多の魔神を呼び集へ、ウラナイ教と銘打つて、またもや国を乱し行く、その曲業ぞ由々しけれ。
 館の主高姫は、安彦、国彦、道彦の宣伝使に危難を救はれ、感謝の意を表はし館に迎へ入れて、鄭重に饗応せむと強て一行を迎へ入れた。
 一行五人は美はしき一室に招ぜられ、手足を伸ばし悠々として寛いでゐる。高姫はこの場に現はれ、
『コレハコレハ三人の宣伝使様、ようマア危き所を御救け下さいました。これと云ふも全く妾が日頃信仰するウラナイ教の御本尊大自在天様の御引合せでございませう。神様は三五教の宣伝使に憑依つて、妾の危難を御救ひ下さつたのです。謂はば貴方等は神の御道具に御使はれなさつただけのもの、貴方の奥には大自在天様が御鎮まりでございます。誠に以て御道具御苦労でございました。何もございませぬが悠々と御あがり下さいませ』
と言ひ棄てて徐々と次の間に姿を隠した。
国彦『ナンダ、怪体な挨拶じやないか。われわれは三五教の教理によつて、敵を敵と致さず生命を的に危険を冒して救つてやつたのだ。それに何ぞや、大自在天の御道具に使はれなさつたなぞと、減ず口を叩きよつてどうも宗旨根性と云ふものは、何処迄も抜けぬものとみえるワイ』
道彦『マアマアどうでも好いぢやないか。彼奴を片端から三五教に兜を脱がしさへすれば好いのだ。何でも好いから言はすだけ言はして置けば、腹の底が自然に解つて来る。さう言葉尻を捉へて、ゴテゴテ言ふものでは無い。洋々たる海の如き寛容心を以て衆生済度にかからねば、彼れ位なことに目に角を立てて鼻息を喘ますやうなことでは、到底宣伝使どころか、信者たるの価値さへもないと云つてもしかりだよ』
 かく話す折しも以前の高姫は、縁の欠けたる丼鉢に麦飯を盛り、粘々したものをドロリとかけ、三人の小間使に持たせて入り来り、
『コレハコレハ皆サン、ご苦労でございました。山家のこととて何か御構ひを致さねばなりませぬが、麦飯に薯蕷汁が出来ました。これなりとドツサリ御あがり下さい。俄の客来で沢山の鉢の中から探しましたが、縁の欠けたのは漸く三つよりございませぬ。二人の御供は最前ソツとあがれとも音はぬのに、喜三郎をなさいましたから、どうぞ辛抱して下さいませ。貴方等に出すやうな器は漸う三つ見つかりました。後は立派な完全無欠の器ばつかりでございます。このやうに見えても痰なぞは滅多に混入してゐる気遣ひはございませぬ。どうぞタント タント御あがり下さいませ。オホヽヽヽヽ』
と厭らしき笑ひと共に、白い出歯をニユツと出し、のそりのそりとまたもや元の居室に姿を隠しける。
国彦『われわれを飽くまで侮辱しよる怪しからぬ奴だ。恰で一途の川の二人婆のやうな面をしよつて、モー堪忍袋の緒が切れた』
と云ひながら、丼鉢の麦飯とろろを座敷一面に投げつける。座敷はヌルヌルととろろの泥田のやうになつてしまつた。
 またもや二人分の丼鉢を次の室に投げ付け、次の室もまたとろろの泥田となつた。
国彦『さアこれで溜飲が下つた。婆の奴滑り倒けよると一層御愛嬌だがナア』
安彦『オイ国彦、貴様は乱暴な奴だナア。三五教の宣伝使が喧嘩を買うと云ふことがあるものか、如何なる強敵に向つても飽くまで無抵抗主義で、誠で勝つのだよ。ナント云ふ情無いことをしてくれるのだ。今日限り破門を致すから、さう心得ろ』
国彦『それだから三五教は腰抜け教だと云ふのだよ。貴様の方から破門するまでに、こちらの方から国交断絶だ』
と自暴糞になり、捻鉢巻となつてドンドンと四股を踏み鳴らし、荒れ狂ふこの物音に驚いて、高姫を始め数人の男女この場に現はれ、
高姫『コレハコレハ三五教の宣伝使様、誠に御立派な御教理には感心致しました。口では立派なことをおつしやるが、その行ひは一層見上げたもの、人の座敷に泊りながら、吾々一同が心を籠めた御馳走を座敷一面に撒き散らし襖を蹴倒し、障子の骨を折り、イヤもう乱暴狼藉、実に立派な御教理には、ウラナイ教の吾々も、あまり感心の度が過ぎてアフンと致します。開いた口が閉まりませぬ。三五教の御教通り手も足も踏込む所がございませぬ。オホヽヽヽヽ。コレコレ皆の者ども、この宣伝使様の立派な御教をお前達は、よく腹へ入れて置くがよいぞや』
 もう一人の婆は口を尖らし、
『コリヤお前達は三五教の宣伝使だと云つて偉さうに天下を股にかけて歩く代物だらう。大方三五教はこんな行ひの悪い宗教だと思つて居つた。やつぱり人の風評は疑はれぬワイ。屹度変性女子の世の乱れたやり方を見倣うて、其処中をとろろドツコイ泥だらけに穢して歩く悪の御用だらう。素盞嗚命は天の岩戸を閉める役だと云ふことだが、悪も其処まで徹底すれば反つて面白い。このウラナイ教はこう見えても立派なものだぞ。変性男子の生枠の教を守つとるのだぞ。三五教も初めは変性男子の教で立派なものだつたが、素盞嗚命の身魂の憑つた肉体が出て来て、人の苦労で徳を取らうとしよつて、変性男子を押込めて世の乱れたやり方の、女子の教が覇張るものだから三五教もコンナ悪の教になつてしまつたのだ。三五教の奴は二つ目には、ウラル教がどうだのバラモン教が悪だのと、お題目のやうにおつしやるけれど、今の宣伝使の行ひはどうぢやな。これでも善の立派な教と云ふのかい。この高姫も元は変性男子の御血筋の肉体だ、日の出神の生宮ぢや。竜宮の乙姫さまもチヨコチヨコ御出でになつて、体主霊従国の悪神の仕組を、すつかりと握つてござるのぢや。変性女子と云ふ奴は胴体無しの烏賊上り、三文の大神楽のやうに頤太ばつかり発達しよつて、鰐のやうな口を開けて、其方此方の有象無象を噛んだり、吐いたりする大化物だ。お前達はその大化物を神様だと思つて戴いて居る小化物ならよいが、小馬鹿者の薄馬鹿者だよ。これからちつとウラナイ教の教を聴きなさい。身の行ひを換へて誠水晶のやり方に立替へねば何時まで経つても五六七の世は来はせぬぞえ』
国彦『エーエ、ツベコベとよう八釜敷く吐す婆だな。貴様は偉さうにツベコベと小理窟を並べよるが、人を招待するに欠けた穢い鉢を選んで出すと云ふことがあるかい。これが抑も貴様の方から俺を焚きつけにかかつてゐよるのだ。三五教だつて、いらはぬ蜂はささぬぞ、釣鐘も叩くものが無ければ音なしいものだ、春秋の筆法で言へば、貴様が丼鉢を投げたのだ。イヤ大自在天がやつたのだ。俺は大自在天の道具に使はれたのだ。此処の大将が最前さう云つたぢやないか。ナント大自在天と云ふ神は乱暴な神だなア。ウラナイ教はコンナ悪魔の乱暴な神を御本尊にして居るのか苟くも三五教の宣伝使は、至粋至純の身魂の持主だぞ』
高姫『オホヽヽヽ、至粋至純の身魂の持主のなさること哩のー。自分のした責任を、勿体無い、大自在天様に塗りつけて、それで自分は知らぬ顔の半兵衛をきめこんでゐるのか。都合の好い教理だなア』
国彦『われわれの魂は水晶魂だ。真澄の鏡も同様だ。それだからウラナイ教の悪がすつかり此方の鏡に映つて居るのだ。アーア水晶の身魂も辛いものだワイ。アハヽヽヽ』
黒姫『団子理窟をこねる日には際限が無い。ともかく行ひが一等だ。立派な御座敷の真ん中に主人の好意で出した麦飯とろろを打ち開けるとは沙汰の限り、やつぱり悪の性来はどうしても現はれるものぢや。ソンナ馬鹿な教の宣伝使になるよりも、一つ改心してウラナイ教になつたらどうだい。誠の変性男子の教はこの高姫さまと、黒姫がチヤント要を握つてゐるのだよ。昔の神代の根本の身魂の因縁から、人民の大先祖のことからまた万劫末代のこと、根の国、底の国、なにもかも知つて知つて知り抜いた世界で、たつた一人の日の出神の生宮ぢや。この黒姫は竜宮の乙姫の守護だぞ。艮の金神様も元は此処から現はれたのだ。本が大事ぢや。「本断れて末続くとは思ふなよ。本ありての枝もあれば、末もあるぞよ」と三五教は教へて居るぢやないか。その根本の本の本の大本は、この日の出神がグツト握つて居るのぢや。神の奥には奥があるぞ。三五教の宣伝使のやうに理窟ばかり言つてこの頃流行る学の力を以て、神の因縁を説かうと思つても、それは駄目ぢや。千年万年経つたとて誠の神の因縁が判つて堪るものか。誠の神の御用が致したくば、ウラナイ教に改心して随うがよかろう』
国彦『婆アサン、大きに御心配かけました。この国彦は三五教でも無ければ、ウラル教でもない、ウラナイ教では尚更ないのだ。あまり三五教の悪いことばつかりおつしやると、ウラナイ教の化けの皮が現はれるぞえ。左様なら、モシモシ三五教の二人の宣伝使サン御悠くりと下らぬ説教でも聴かして貰つて、眉毛を読まれ、尻の毛が一本も無いとこまで抜かれなさるがよろしからう。コラ二人の皺苦茶婆、用心せーよ。何処に何が破裂致さうやら判らぬぞよ』
と尻をクリツと捲つて裏門から、一発破裂させながら何処とも無く姿を隠してしまつた。
道彦『アハヽヽヽ』
安彦『アーア道彦サン、彼様乞食を伴れて来るものだから、薩張り三五教と混同されて偉い迷惑をした。これから迂濶と何でも無い者を連れて歩くものぢやない』
道彦『アヽ左様ですな、モシモシ高姫サン、黒姫サン、三五教には彼のやうな宣伝使は、一人も居りませぬよ。彼の男は途中から道案内に伴れて来たのですから、好い気になつて宣伝使気取りでアンナことを言つたのですよ。アハヽヽヽ』
黒姫『神様の宣伝使は嘘は言はぬもの、誠一つの教を樹てるのは、このウラナイ教。三五教は矢張り嘘をつきますなア。彼の男は元は与太彦と云うて、貴方等と一緒に宣伝に歩いて居つた人でせう。違ひますかな』
『サア』
『サア返答は』
『サアそれはマアマアマア彼奴は俄に気が違つたのですよ。それだからアンナ脱線した行ひをやるのですワ。アハヽヽヽ』
黒姫『よう嘘をつく人だナ。今お前サンは道案内に途中から雇うて来たと云つたぢやないか。それだから三五教は駄目、ウラナイ教が誠の教と云ふのだ』
安彦『一体此処の館には盲人ばつかり居りますな』
と話を態と横へ転じた。
黒姫『誠の教を聴かうと思へば、目が開いて居つては小理窟が多くつて仕様がないから、みな盲目や聾ばかり寄せてあるのだ。見ざる、聞かざると言うて、盲目聾ほどよいものは無い。此処へ来る奴は、みなこの高姫サンと黒姫が耳の鼓膜を破り、眼の球を抜いて、世間の事がなにも解らぬやうに、神一筋になるやうにしてあるのだ。お前も怪体な目をウラナイ教に、すつくり御供へしなさい。さうしたら本当の安心が出来るぢやらう。昔竜宮城に仕へて居つた小島別は、盲目であつたお蔭で、結構な国魂の神となつて神の教を筑紫の島でやつて居るといふことだ。目の明いた奴に碌な奴が居るものかい。盲目千人に目明き一人の世の中に、十目の視る所十指の指さす所、大勢の盲目の方に附くのが誠だ。サア、これからウラナイ教に帰順さしてやらう』
と高姫、黒姫の二人は、出刃庖丁をひらめかし、安彦、道彦の眼球目蒐けて突いてかかる。二人は、
『コリヤ大変』
と逃げ出す途端に、座敷一面のとろろ汁に足を、辷らして、スツテンドウと仰向けになつた。
 二人の婆も、とろろに足を滑らし、仰向けにドツと倒れた。婆の持つた出刃庖丁は道彦の眼の四五寸側に光つてゐる。
 道彦、安彦は一生懸命逃げ出さうとすれど、ヌルヌルと足が滑つて同じ所にジタバタやつてゐる。百舌彦、田加彦は一室から飛んで出て、
『コラコラ婆の癖に手荒いことを致すな。その出刃渡せ』
と矢庭に引捉へむとして、またもやズルリと滑り、二人は尻餅搗いた途端に、道彦の顔の上に臀をドツカと下ろした。その痛さに気が付けば王仁は、宮垣内の茅屋に法華坊主の数珠に頭をしばかれ居たりける。

(大正一一・四・二 旧三・六 外山豊二録)
(昭和一〇・三・二〇 於彰化支部 王仁校正)



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