出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語13-4-171922/03如意宝珠子 臥竜姫王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
フル野ケ原醜の窟
あらすじ
 音彦、亀彦、駒彦が進にでゆくと、琵琶の音が聞こえてくる。そこへ、弥次彦と与太彦が現れ、「この音は臥竜姫が弾いているのだ」と告げる。弥次彦は「ここは臥竜姫の妖怪窟だ」と言う。
名称
音彦 亀彦 駒彦 弥次彦 与太彦
臥竜姫 天女
エルサレム 醜の窟
 
本文    文字数=7518

第一七章 臥竜姫〔五四三〕

 三人はまたもや進み行く。何所ともなく微妙な琵琶の音が聞えて来た。
音彦『ヤア妖怪窟の探険だけあつて種々雑多の余興を見聞させられるワイ。これが吾々の役徳と云ふ物だ。何とも知れぬ微妙な音楽ぢやないか。要するに、察するに、つらつら鑑るに………』
駒彦『何だ、同じやうな論法を陳列しよつて、此処は博覧会とは違ふぞ』
音彦『枕言葉なしに開陳する事は、少しく勿体ない気分が漂ふのだ。こいつは的切白煙の中から、玉となつて現はれたやや神経質な、ナイスが弾ずるのに相違は無いわ。小督の局の所在は何処ぢやと、行衛を尋ねた罪な男ぢやないが、峰の嵐か松風か、恋しき人の琴の音か、駒と亀とが腰を下して聞くからに、爪音しるき想夫憐と云ふ調子だ。この音サンの眉目清秀なる好男子を、チラと一瞥して、ニタリと微笑を浮べ、新月の眉の下から緑滴る涼しき眼を、ジヤイロコンパスのやうに急速力を以て廻転し電波を発射し、この音サンをチャームした天女に間違ないぞ、この琵琶の音は、音が違うのだ、音と云ふ字は音サンの音だ、一言も聞きおとさぬやうに聴聞したがよからうぞ』
駒彦『何を吐しよるのだ、己惚の強いにもほどがある。長茄子にハンモツクを着せたやうな面をしよつて、美人も糞もあつたものかい、宣伝使は宣伝使の務めさへすればよいのだ』
亀彦『アハヽヽヽヽ、自称好男子、色々の下馬評を否熱望的気焔を上げて見た処で磯の鮑の片思ひだ、長持の蓋だ、こちらはあいても、向ふはあかぬとけつかるワイ』
音彦『貴様は黙つて伏艇して居ればよいのだよ。ウカウカと水面に浮上すると、浮流水雷にかかつて爆発するぞ』
亀彦『ハヽア、たうとう桜島ぢやないが、疳癪玉を破裂させよつた。憤怨万丈近付くべからずと云ふ音公サンの物凄い権幕、女の話をしても直に真赤になつて、鼻息荒く、御機嫌斜なりだから困つたものだ。アハヽヽ』
 琵琶の音は益々冴えて来る。三人は無駄口を言ひながら、三叉路に停立して、息を休め旁興味がつて聞いて居る。突然曲り角よりやつて来て、ドンと行き当つた荒男、勢余つてどつと尻餅をつき、
『ヤア何処の何奴か知らね共、この醜の窟に無断に侵入して来よつて、道路神のやうに立つて居て俺を刎飛ばしよつた。オイ、奴盲目奴が、尠と注意を払はぬかい』
音彦『ヤア何処の奴か知らないが、吾輩の胸板に衝突しよつて無礼千万な、何故早速に謝罪を致さぬか』
『何だい、人を突き飛ばして置きながら謝罪も糞もあつたものかい。俺を何誰と心得て居るか、醜の窟の御守護神、弥次彦サンとは俺の事だ。オイ与太彦、貴様何をして居る、此奴を一つ打撲つてくれ。如何に世が変るとはいへ、被害者が加害者に御詑をすると云ふ現行法律が何処にあるものか』
音彦『アハヽヽヽ、此奴なかなか威張りよる。一寸容易には、我の強い奴だから、三五教の宣伝使に対しても閉口頓死をやり腐らぬワイ』
弥次彦『エヽ縁起の悪い、閉口頓死と云ふ事があるものか、トンチキ野郎奴』
与太彦『何だか善悪の標準がトント分らぬやうになつて来たワイ、突き飛し得の、突き飛され損ぢや。ヤア弥次、これが時代思潮だ。神も時節には叶はぬから、マア泣き寝入りにする方が無難でよからう、時勢に逆行すると第一〇〇主義だと云はれるからな』
弥次彦『宣伝使といふ立派な保護色に包まれた御方を相手にしたつて仕方がない。それよりも、なんとか云つて暴利る事を考へやうぢやないか。突き飛されても自分で転たと思へば総ての問題は自然消滅だ。モシモシ宣伝使さま、いままでの事は互に川へ流しませう。しかし面白い事が有りますぜ』
音彦『ヤア早速の解決、流石は醜の窟の守護神だけあつて良く捌けたものだ。ドンナ事があるのだ、云つて貰へまいか』
弥次彦『それは大変にぼろい事ですよ、木に餅が実ると云はうか、瓜の蔓に小判がガチヤガチヤ、処狭きまで実つて居るのを、ずらりと占領したやうなぼろい事です。結構な宝を、地に委して、放して居るのも余り気が利かない。吾々も尠とその分配を受けたいものだがその宝を拾ふ人間が無いので待つて居るのだ。お前さまのやうな立派な英雄豪傑なら屹度ばつがあふだらう。何分吾々は天来の醜男だから、こちらから何程速射砲的電波を直射しても、先方の受電機が悪いのか、こちらの機械が不完全なのか、一向要領を得ない。お前サンならば第一押し尻も強いし、一寸人間らしい面付きもしてゐるから、天下一品の臥竜姫も、猫に鰹節を見せたやうに、咽を鳴して飛び付く事は、請合ではない事はないワイ』
音彦『その臥竜姫と云ふのは一体何者だ』
弥次彦『その正体が分る位なら吾々も今迄苦労はしないのだ。しかし何でも、エルサレムとかの立派な神様の娘御だと云ふ事だ』
音彦『さうしてその姫の所在は何処だ』
弥次彦『それを云つては吾々の暴利る種が無くなる、先づ第一要領を得さして貰はうかい。要領を得ない内は、私だつて要領を得させる訳にはいかないのだ』
亀彦『オイオイ男、貴様の面は何だ。目まで細くしよつて、コンナ奴に関係つて居る時機ぢやあるまい、ナア駒公』
駒彦『オーさうぢやさうぢや、音公では到底不合格だ。よい加減に前進する事にしよう。ともかく、あの琵琶の音を合図に行けば好いのだ。吾々が行つたら屹度、臥竜姫は秋波を送るよ。何となしに吾輩の魂に電流が通じて来たやうだ』
弥次彦『モシモシ、お前サンのやうな、不完全な御粗末な、糸瓜のやうな長たらしいお顔では、鰻でも愛想を尽かして、ヌラヌラと滑つて逃げるのは当然ですよ。アハヽヽヽ』
駒彦『構ふない先陣の功名は俺が一番槍だ』
と云ひながら、大手を振つて元気好く、音を的に、四股踏みながら進み行く。
弥次彦『ヤア御一統サン、此処が即ち、所謂、取りも直さず、臥竜姫の隠家でございます。それはそれは奇妙奇天烈、不思議千万な妖怪窟ですから、そのお積りで不覚を取らぬやうになさるがよからう』
音彦『ヨー、この窟に似合はぬ立派な構へだ。エルサレムの何誰様の娘か知らぬが一つ探険して見ようかい』

(大正一一・三・二〇 旧二・二二 藤津久子録)



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