出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語13-3-131922/03如意宝珠子 上天丸王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
フル野ケ原醜の窟
あらすじ
 一行は岩窟の突き当たりまでやって来たが、岸壁にはばまれて前進できなくなった。鷹彦は鷹に変化して外に出る。残りの五人が天津祝詞を唱えていると、日の出別命、女、鷹彦が天の鳥船に乗って迎えにきた。一行は岩窟を脱出できた。
名称
岩彦 梅彦 音彦 亀彦 駒彦 鷹彦 日の出別命 女
悪魔 天女
天津祝詞 天の鳥船 天の八衡 醜の窟 根の国 フル野ケ原
 
本文    文字数=5374

第一三章 上天丸〔五三九〕

『神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 醜の窟に入り来る  三五教の宣伝使
 鼻息荒き鷹彦や  固そに見えて和らかき
 岩彦亀彦駒彦が  音に名高き布留野原
 これの窟に迷ひ来て  千尋の深き陥穽に
 二度吃驚の為体  あゝ痛ましや痛ましや
 これから先は真暗黒  幾百千とも限りなき
 醜の曲津の群りて  汝が生命は嵐吹く
 颶風に向ふ灯火の  消え入るばかり身魂をば
 いろいろさまざま嘖まれ  二度と帰らぬ根の国の
 旅路をなすが気の毒ぢや  われは窟を守る神
 汝等一行憐れみて  生命救けむそのために
 此処に現はれ気をつける  気をつけられるその時に
 きかねば後はどうなろと  われは構はぬ憐みの
 心を以て告げてやる  あゝ叶はぬぞ叶はぬぞと
 魂消て腰をぬかすより  一時も早く元の道ヘ
 踵を返して退けよ。  ウヽヽ、ルヽヽ、サヽヽ、イヽヽ』

と云つた限り異声怪音はピタリと止まりける。
梅彦『オイ皆の連中、一寸ここで相談をして見ようか。勢に任して軽々しく進むは智者のなすべき所では無いぞ』
岩彦『エーナアンだ。弱音を吹きよつて一体貴様は何を目標に、ソンナ卑怯な事を云ふのだ。声が怖ろしいのか、声が恐くつて雷の鳴る世の中に生きて居れるか』
梅彦『声が恐いのぢやないが、その声の主をよく探究して、その上に策戦計画をやらうかと云ふのだ』
鷹彦『何かまふものか。何れ悪魔の巣窟だ。これ位の余興がなくては進撃するのも張合がないワ』
梅彦『進撃すると云つたつてこの隧道は馬鹿に闇いぢやないか』
岩彦『闇くても構ふものか。いはゆる暗中飛躍だ。百鬼暗行の岩窟だもの、此方も厄鬼となつて対抗運動をやれば、それで好いのだ』
 幽か向方に稍光の有る円き穴が見え初めた。
岩彦『オイオイ、モウ先が見えた。ともかくあの明い穴を目標に進むことにしよう』
 頭上の岩石は猛烈なる音響を立ててウヽヽヽと唸り始めた。鼓膜が破裂しさうな巨音である。一同は耳に指を当てながら一目散に円き光を目標に進み行く。漸う此処に着いて見れば、眼の届かぬばかりの広場がある。さうして上面は雲が見えてゐる。四辺は幾千丈とも知れぬ岩壁を以て囲まれありて、坦々たる大道は四方八方に通じゐたり。
鷹彦『ホー、此処は天の八衢のやうな所だ。お前達は、マア悠乎と相談をしてこれから本当の妖怪窟へ進撃してくれ。俺はしばらく御免を蒙る』
と言ふより早く背の両翼を左右にひろげ、羽ばたきしながら中空に舞ひ上り、この窟を脱出してしまつた。
岩彦『アヽ日の出別には捨てられ、魔性の女には遁げられ、鷹彦は帰つてしまひ、これから前途遼遠暗澹と云ふ所になつて、吾々五人が振り残されたのだから、この先はよほど注意をせなくてはいかぬぞ。少し気の利いた奴が居ればよいのに、ガラクタばつかり残つて居るものぢやから、どうにもかうにも策の施しようがないワイ』
音彦『コラ岩公、失敬なことを云ふな。粕ばつかりとは何だ。残りものに福があるぞ。もうかうなれば力にするのは神ばつかりだ。サーサ天津祝詞だ』
と云ひながら音彦は墜道に端坐して祝詞を奏上する。四人も続いて一生懸命になつて合唱して居る。何処ともなく天空を轟かし来る天の鳥船は、五人の端坐する前に爆音すさまじく降下した。中より日の出別命、鷹彦、以前の女の三人現はれ来り、
日の出別『ヤア皆さま、ご苦労であつた。巌窟の探険はこれで終結だ。この岩壁を到底人間として攀ぢ登る訳にも行かないから、迎ひに来たのだ、サア早く乗つたがよからう』
岩彦『これはこれは、何から何までお気つけられまして有難うございます。流石は日の出別命さまだ。人に将たるものはかうなくてはならぬ道理だ』
鷹彦『オイ岩公、うまいな、巧妙な辞令だ。この八衢はかう見えても、これが少し行けば皆行き詰つてゐるのだから、未練を残さず早くこの船に乗つたらよからう』
岩彦『誰がコンナ怪体な巌窟に未練があつて堪るか。天女のやうな女神さまと一緒に天の鳥船に乗つて、天国へ遊行するかと思へば実に有難い。サア皆の者早く乗らうかい』
と云ひながら五人はヒラリと飛び乗つた。
 またもや鳥船は巨大なる爆音の響と共に、何処とも無く天空に姿を隠しける。

(大正一一・三・一八 旧二・二〇 外山豊二録)



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