出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語12-3-201922/03霊主体従亥 救ひ舟王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
呉の海をゆく国武丸
あらすじ
 牛公が時置師神と海神の使いの亀によって助けられたので、時置師神は他の三人にも「竜宮へ行け」と脅す。一行はそれぞれ改心を約束する。虎公は橘島で虎の穴に入ることを約束した。
名称
石凝姥* 牛公 馬公 国光彦* 鹿公 高光彦* 玉光彦* 時置師神 虎公 行平別*

橘島 竜宮
 
本文    文字数=5863

第二〇章 救ひ舟〔五一六〕

 三五教の宣伝使時置師神の真心籠めしその祈りに、海の神も感じ給ひけむ、巨大なる大亀となり、海面に浮ばせ給うた。牛公は亀の背より時置師神に向つて、涙を流しながら合掌する。
時置師『アヽ、私のお祈りも、神様のお告の通り効験が顕はれて、命を助けられ帰つて来た。サア結構々々、早くこの船に乗つたり乗つたり』
 亀は船に向つて近づいて来る。時置師神は右手をグツと延ばし、牛公の背を猫を掴むやうな調子にてグツと掴むで船中に救ひ上げた。ゴボンゴボンと水音立てて亀は海中に姿を隠した。
時置師『牛公さま、竜宮が見度いと云つて居たが、見られたかな』
牛公『イヤ牛々見られる所か苦しくつて苦しくつて、二三遍も息の根が断れてしまひました。さうすると貴方様が海の底へ潜つて来て私の腰を確り握り、救ひ上げて下さつたと思へば亀の背、こんな有難い事はございませぬ。モウ牛牛公も今日限り二本の角を折りまする』
時置師『神様の有難い事が分つたら何より結構だ。オー、そこな鹿さま、馬さま、虎さま、お前達も一度竜宮へ往つて見たらどうだ。都合によつたらまた俺が助けに往つてやらうも知れぬが、それはその時の都合だ。万一俺が助けに往かなくつても、因縁と思うて諦めるのだ。サア牛の次には馬かな』
と、グツと馬公の方に向つて猿臂を延ばす。
馬公『ウマウマウマ待つて下さいませ、それは余りでございます。こんな事があらうと思つて、人の嫌がる目付役や捕手の役人をすつぱりと今日から辞めますと云つたのに、貴方はお前の天職だから辞めなとおつしやつたぢやございませぬか。それだから私は捕手の役をして三五教の宣伝使を随分苦めたのですが、かう見えても従順な男、貴方のおつしやる通り固く守つて来たものを、今更竜宮へやるとは胴欲だ。アンアンアン、オンオンオン』
時置師『アハヽア、此奴は妙な馬だ。世が変れば変るものだなア。ヒンヒンと云うて嘶く馬は沢山あるが、アンアンオンオンと云ふ馬の声は聞き初めだ。アハヽヽヽ、こんな嘶声をする馬は面白くないから、今度は同じ四つ足の鹿の番だ。鹿はカイロと啼くさうだ。かう見えても海には道がついて居る。海路があるのだ。鹿なれば海の中に放り込むでも滅多に困りはすまい。カイロウと思へば直ぐ帰れるから、船にさへも櫂艪がついて居る。サア鹿公、お前の番だぞ』
鹿公『馬は海馬と云つて海にでも棲むで居ます。虎は千里の藪でも飛び越えると云ふのですから、竜宮行は馬公か虎公が適任でせう。鹿と云ふ奴は山の奥に居る奴で、海は一向不調法でございます。さうして今は春でございます。春駒と云つて馬の時節、筍の出る春先は虎の時節、鹿は秋が時節、秋まで待つて貰ひませう。三五教の教にも、時世時節には神も叶はぬとおつしやるぢやございませぬか。竜宮行をする者はシカクが違ひます』
時置師『アハヽヽ、面白い面白い、しかたがないなア、それなら思ひ切つて虎公かな』
虎公『モシモシ、私は不適任です。虎穴に入らずんば虎児を獲ずと云つて、山に穴を掘つて穴の中にこけついて居る代物ですから、竜宮行は性に合ひませぬ。ウミの父上母様は何処にどうしてござるやら、こけつ輾びつ探して見れば、人目に心奥山の、巌窟の中の佗住居、どうぞ許して下さいませ』
時置師『遉は虎公だ。名詮自称、とらまへどころのない事を云ふ奴だ。そんなら竜宮行はこれで免除してやらう。その代りに俺について来るのだ』
虎公『ハイハイ、竜宮行さへ止めさせて下されば、何処へでもお伴致します』
時置師『私の云ふ事は何でも諾くなア。張子の虎のやうにまさかの時になつて首を横に振りはせぬかな』
虎公『トラ御心配下さいますな、決して違背は致しませぬ』
時置師『これから橘島へ船が着いたら、あの島には大きな虎が棲居をして居る事は聞いて居るだらうなア』
虎公『トラもう昔の昔のトラ昔から聞いて居ります』
時置師『トラ昔と云ふ事があるか、去昔だらう』
虎公『十二の干支の寅の裏は申、丑のうらは未だから一寸表の方から申上げました』
時置師『橘島の虎の穴には大きな虎が二匹棲居をして居る。さうしてこの頃沢山の児を産むで居ると云ふ事だ。その児を捕まへに行くのが虎公の役だ。虎の児と虎公はいい釣合だ、虎穴に入らずんば虎児を獲ず、どうだ勤めるだらうなア』
虎公『トラ、モー、ニヤン、です、シカと、ウマくやれませぬワ』
 月は西海に没し、久振にて東海の浪を割つて金色の太陽隆々と昇り来る。その光景は得も云はれぬ爽快と畏敬の念に打たれざるを得ざりしと云ふ。
 宣伝使を初め船中の人々は、この太陽に向つて拍手再拝、口々に神恩を感謝する声天にも届くばかりなりける。

(大正一一・三・一〇 旧二・一二 加藤明子録)



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