出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語12-3-191922/03霊主体従亥 呉の海原王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
呉の海をゆく国武丸
あらすじ
 時置師神は牛公の飛び込んだ海面に向って祈ってから元の席に帰った。時置師神は馬公、鹿公、虎公に対しても改心を迫る。その時、牛公が海の神の亀の背に乗せられて助けられる。

***ウラル教主義***
 今日の時節は、ほんとのことを言えば、悪い奴じゃといって、酷い目にあわされる世の中です。嘘が宝となる世の中、嘘から出た誠、誠から出た嘘、嘘か誠か、雨か風か、そこはそれ、よい加減にあやつってわたるのが当世のやり方、決して決してこの世の中に逆らうような、悪い人間じゃございませぬ。時世時節に従うのが善のやり方。
名称
石凝姥* 牛公 馬公 国光彦* 鹿公 高光彦* 玉光彦* 時置師神 虎公 行平別*
曲津神
ヤッコス ウラル教 国武丸 コーカス山 霊界物語
 
本文    文字数=6983

第一九章 呉の海原〔五一五〕

 時置師神は牛公の投身したる海面に向ひて、暗祈黙祷しつつあつた。しばらくあつて満面に笑を湛へ、悠々と元の席に返つて行くのであつた。馬公は小声になつて、
馬公『オイ鹿、虎、どうだ。三五教の宣伝使でさへも、牛公が海へ飛込むだのを見て、助けようともせず、愉快さうに、ニタリニタリと笑つて居つたぢやないか』
鹿公『ウン、さうだのう、偉さうに人を助ける宣伝使だと云つた処で、口ばかりだよ。どうでコンナ世の中になつて来れば……誠の者は薬にするほども無い……と云ふ神様の教通りぢや。大きな声で喋つて居ると、またどんな目に逢はせられるか知れやしないぞ。静にせい、静にせい、云ひたけら黙つてものを云ふのだよ』
馬公『黙つてものを云ふ事が出来るかい、手品師でもあるまいし』
虎公『出来いでかい、そこが以心伝心だ。目は口ほどにものを云ふと云ふ事がある。霊界物語にも耳で見て目で聞き鼻で物食うて口で嗅がねば神は分らぬ、と出て居るぢやないか』
馬公『そんな事はどうでも良いわ。マア静にしようかい。オイオイ時置師神が大きな目をむいて、ギロギロと見廻し出したぢやないか。どうやら御鉢が廻りさうだぞ』
と云ひながらクルクルと帯を解きかける。
鹿公『オイ馬公、貴様帯を解いてどうするつもりだ』
馬公『喧し云ふない、これには秘密があるのだ。手廻しだ』
虎公『手廻して何だい』
馬公『牛公のやうに着物を着たなりで、飛び込むでもつまらぬから、時置師神が「コラツ」とやつて来よつたら、俺はチヤンと御先にこの帯解き置かしの神様となつて、真裸のまま海の中へドブンだ。貴様等も用意せ、用意を』
 時置師神は四辺キヨロキヨロ見廻しながら、三人の囁き話を聞き、
『ヤアー、久しく逢はなかつた。御前等は牛公の同役、ウラル教の目附の馬、鹿、虎の三人ぢやないか』
虎公『トラ違ひます、シカと見て下さいませ、決してウマい事人を詐るやうな、正直な男ぢやございませぬ』
時置師『アハヽヽヽヽ、その狼狽へやうは何だ、裸になつて居るぢやないか』
馬公『裸で物は落しませぬからなア。肝腎の一つより無い命を落しては約らぬから、まさかの時の用意に裸になつて置きませうかい。烈しい時津風が吹いて、舟が覆るやうな事があつては耐りませぬから』
時置師『御前は確に牛公の連だらう、人間は正直にするものだぞ』
馬公『ハイハイ、ドウド許して下さいませ。正真の事を云つたら命がありませぬわ。今日の時節は、真実の事を云へば、悪い奴ぢやと云つて、酷い目に逢はされる世の中です。嘘が宝となる世の中、嘘から出た誠、誠から出た嘘、嘘か誠か、雨か風か、そこはそれ好い加減に操つて渡るのが当世のやり方、決して決してこの世の中に逆らうやうな、悪い人間ぢやございませぬ。時世時節に従ふ善のやり方、時さまに従ひます』
時置師『アハヽヽヽヽ、どこまでもウラル教主義だなア』
鹿公『斯様かうかうシカジカの因縁によつて、しかも同じ国武丸に一蓮托生、袖振り合ふも他生の縁、躓く石も縁の端、団子食ふのも囲炉裡の框』
時置師『コラコラ何を云ふのだ、貴様の云ふ事は時々脱線するから困る』
鹿公『鹿り鹿り、時にとつての時さんへの御慰み、時世時節は恐いもの、この広い世の中、一つや二つ悪い事をしたつて、まさか時さまに遭遇すとは思はなかつた。アーアー広いやうで狭いはこの世の中だ、まだまだ狭いのは舟の中、も一つ狭いは腹の中』
時置師『ナカナカよう囀る奴だなア』
鹿公『泣く鹿よりも泣かぬ螢が身を焦す』
時置師『シカタの無い奴だ。何だビリビリと震ひよつて』
鹿公『身体に憑いたる曲津神を震ひ落して居るのですよ。どうぞもう私の古い罪は、貴方もさつぱりと、これで見直し聞直し、都合がついたら、他の船にでも乗り直して下されば、大変に都合が好いのだがなア』
時置師『貴様は面白い奴だ、イヤ面黒い奴だ。まるで渋紙様のやうな男だ。顔に渋味があつて一寸確りした目附役、捕手の役には持つて来いだ』
虎公『モシモシ時様、鹿公は最前から随分云うて居ましたぜ。それはそれは大変に云うてましたよ』
時置師『何を云うて居たのだ』
鹿公『ユフユフ自適、神様の有難い事を云うて居たのです。さうして三五教は結構な教立派な宣伝使が沢山ござる。中にも取り分けて御慈悲深い、神力の強い、男前のよい活神さまのやうな宣伝使と云うたら、マー時さまの時置師神さまより外にはあるまい……と云うて御賞め申して居つたのですよ』
虎公『コラ鹿公、ユフユフ云ふない。モシモシ宣伝使様、鹿公のは嘘から出た誠でなくて誠から出た嘘ですよ』
鹿公『構ふない、虎の野郎、貴様は余程卑怯な奴だ。俺等二人はどうなつても好い、貴様一人助かりさへすれば好いと思ふのか。よし、それなら俺にも考へがある。モシモシ宣伝使様、この虎公と云ふ奴、コーカス山の八王から沢山の手当を貰ひよつて、実の処は貴方の後を追従て来よつたのです、その証拠には此奴懐に呑んでますぜ』
時置師『呑んで居らうが呑んで居るまいが、どうでも好いぢやないか』
虎公『モシモシ宣伝使様、私をよく了解して下さいませ』
鹿公『何を吐しよるのだ。そりや了解もして下さるだらう。宣伝使を何々しようと思うて、追従覘うて居る悪い奴だから、懐へ呑んで居ると云う事を、御了解して下さるワイ。蛙は口から、匕首が塞がらぬワイ』
 かく話す折しも、舟の前面に見上げるばかりの水柱立昇るよと見る間に、巨大なる亀の背に載せられて、牛公は嬉しさうに海面に浮むで来た。馬、鹿、虎一度に、
『ヤアー牛公が……助かつた』

(大正一一・三・一〇 旧二・一二 岩田久太郎録)



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