出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語12-2-121922/03霊主体従亥 化身王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
夏山彦の館
あらすじ
 祝姫は夫の蚊取別と会えたことを喜ぶ。しかし、蚊取別は、「自分と祝姫とは肉体関係はない。自分は本物の蚊取別ではなく神の化身であり、尊い神の命を受け宣伝使の育成の使命があり、妻は持てない」ので、祝姫を離縁するので、夏山彦と結婚せよと告げる。祝姫と夏山彦はそれに従い結婚する。
名称
蚊取別 国光彦 高光彦 玉光彦 夏山彦 初公 祝姫
大自在天
秋月の滝 イホ シナイ山 白瀬川
 
本文    文字数=5777

第一二章 化身〔五〇八〕

 夏山彦と共にこの場に現はれた祝姫は、轟く胸を撫で擦りながら、
祝姫『これはこれは御一同様、御苦労様でございました。妾は三五教の宣伝使祝姫と申すもの、白瀬川の魔神を言向和さむと難処を伝ひ漸く秋月の滝に着く折しも、魔神のために悩まされ生命危き折柄、イホの酋長即ち此処に在します夏山彦様に助けられ救はれて当家にお世話となり、漸く病労の身を元に復し、これより世のために神様の御用に立ち出でむと思つて居た処でございます。アヽ貴神は我夫、蚊取別の宣伝使、ようマア御無事で居て下さいました』
と涙と共に語る。
 蚊取別は儼然として容を更め襟を正し、祝姫をグツと睨みながら、
『今日より都合によつて汝を離縁する』
祝姫『エ、それはまた、どうした理由』
蚊取別『我は女房を持てぬ因縁があるのだ。それ故汝と結婚の約を結ぶは結んだものの、未だ一度も枕を共にした事は無い。実に二人の仲は清浄潔白、汚しも穢されもせぬ仲、今日限り離縁を致す。かくなる上は従前の通り押しも押されもせぬ互に三五教の宣伝使だ。サア祝姫さま、その覚悟で交際つて下さい』
祝姫『これは心得ぬ貴方の御言葉、妾が貞操の点について何か御心に触へられたるには非ざるか、心許なし、包まず隠さず宣らせ玉へ』
と涙を袖に拭ひつつその場にワツと倒れ伏しける。
蚊取別『祝姫殿、切なるお心はお察しする。貴女の潔白なる心は私は十分諒解して居る。この蚊取別は、もと大自在天の臣下たりし蚊取別に姿を変じ居れ共、実は贋物である。我はある尊き神の命を受け、宣伝使の養成に全力を注いで居るもの、実際の処を言へば大化物だ。安心して何卒夏山彦と結婚して下さい』
祝姫『エ、貴神は何れの神様』
蚊取別『それを明かす事だけは待つて貰ひたい』
初公『ヤア蚊取別、なヽヽヽ何だ、ばヽヽヽ化物見たやうな男だな。夜前お前が忍び足に聞きに行きよつたのが、不思議だと思つて居つたら、天にも地にも無い最愛の女房だつたのだな。それは無理もない、尤もだ。しかしながら今聞けば一回も枕を並べた事も無いと言ふ事だが、随分素気ない男だなア。さうして夏山彦の酋長の女房になれとは何が何やら訳が分らぬ。オイ、も一遍俺の鼻を捻つて見てくれないか。根つから葉つから目から口から鼻から合点の虫が承知せぬワイ』
蚊取別『アハヽヽヽヽ』
 高光彦は蚊取別の顔を穴のあくほどながめながら、
『貴神は初めてお目にかかつた時から、何だか不思議な宣伝使だと思つてゐました。いやもう感心致しました。夏山彦さま、蚊取別の宣伝使はこれや屹度三十三相に身を変じてござる神様ですよ、仰の通り祝姫さまと御結婚を遊ばしませ。神様の結むだ結構な縁だから祝姫さまも決心をして、この方のおつしやる通りなさるがよろしからう。夏山彦さまもよもや嫌ひな仲ではありますまい。これで貴神の心の暗も杜鵑もをさまりませう』
夏山彦『アヽ勿体ない、どうしてどうして祝姫さまを女房に持つことが出来ませうか。今承はれば蚊取別の宣伝使の奥さまとやら、聞いて驚愕致しました。私の今迄の心を打ち割つて申せば、初めは三五の教に帰依し次に神様に帰依し、遂には宣伝使に帰依するやうになり、それが重なつて恋の病におち、煩悶苦悩を続けて居りました。人民の頭となりながら実にお恥しい心でございます。私も因縁が恐ろしくなつて来ました。どうぞこのことばかりは許して下さいませ、今迄の恋愛心をスツカリ捨ててしまひますから』
蚊取別『それはいけませぬ。帰依した宣伝使を忘るれば従つて道を忘れ、神を忘れる事になつて来る。帰依心、帰依道、帰依師だ。凡て信仰は恋慕の心を持たねばならぬ。サアサ、私がこれから媒酌を致しますから、御心配なく結婚の式を一時も早く挙げて下さい。神が許した夫婦の縁、誰に憚る事もない、御両人共、少しも蚊取別に遠慮して貰つては困る』
玉光彦『ヤア、これで私の夢も実現した。矢張正夢であつたか』
国光彦『不思議な事ですな。兄さまの夢にまでチヤンと分つて居るのだから、これや屹度神の許された縁でせう。御主人様、蚊取別の神様の仰しやる通り、素直に結婚の式を挙げたがよろしからう』
初公『イヤ、もう昨晩の夢と言ひトンと訳が分らぬやうになつて来たワイ。こう百日も月日の御光が拝めぬやうになつた世の中だから、何れ種々の化物が現はれるのだらう。こいつは矢張怪しいものだ』
 蚊取別の媒酌によつて此処に二人は結婚の式を挙げ、祝姫は一行五人と共に白瀬川の魔神を言向和すべく、館を後に六人連れ宣伝歌を歌ひながら、朧月夜の如き春の日をシナイ山の山麓指して進み行く。

(大正一一・三・九 旧二・一一 北村隆光録)



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