出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語12-1-61922/03霊主体従亥 招待王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
イホの都夏山彦の館(偽)
あらすじ
 一行は夏山彦の館でもてなしを受け、白瀬川の滝に悪魔を言向け和しに出発する。
名称
蚊取別 国光彦 高光彦 玉光彦 夏山彦 初公
金毛九尾 国魂 祝姫 春公 八岐大蛇
天の岩戸 イホの都 白瀬川の滝 筑紫州 豊の国
 
本文    文字数=7989

第六章 招待〔五〇二〕

 四人の宣伝使は夏山彦の案内に連れ奥の間に請ぜられ、間もなく鄭重なる馳走は運ばれた。夏山彦は恭しく一同の前に現はれ来たり、
『貴方がたは我が信ずる三五教の宣伝使様、かかる見苦しき荒家を、よくもお訪ね下さいました。何卒ゆつくりと御飯を召し上つて、お話を聞かして下さいませ』
蚊取別『ヤアこれはこれは、思ひがけなき御馳走、恐れ入つてござる。その恐れ入つた序には昨夜の国魂の森の騒動、貴方も随分恐れ入つたやうな為体で尻に帆をかけ、サツサと四十八手の奥の手を出してお帰りになりましたな。ああいふ乱暴な酒の酔を相手にしても結りませぬ。サツサと逃げるが一番賢いやり方「負てのく人を弱しと思ふなよ、智慧の力の強ければなり」だ。アハヽヽヽヽ』
夏山彦『昨夜は町内の者が、あまり御陽気が悪いので、難儀を致して居りますので、これは何かお天道様のお叱りを受けて居るのであらうと思ひ、お神酒に事寄せて、国魂の宮様にお参りをさし、少しでも敬神の念を起させようと思つて俄に布令を廻し、この町の富豪春公と云ふ男に酒を献納させて祭典を営みました。今の人間は神様に参れと云うたところが、参るものは一人もありませぬ。酒が呑まれると云ふので皆やつて来たのですよ。本当に困つたものです。皆八岐の大蛇とか、金毛九尾の狐とかの悪神の捕虜となつてしまつて居るのですから、始末に了へないのです。酒を飲めば管を巻く熱を吹く、怒る、暴れる、喧嘩をする、いやもう酋長の役も骨の折れたものです』
高光彦『これだけ悪魔の蔓る世の中にもかかはらず、酋長の貴方が神様を信仰されると云ふ事を聞きまして余程我々も心強くなりました。こんな常闇の世の中になつて来たら到底人間の力でどうする事も出来ませぬ。神様のお力を借りるより道はありますまい』
夏山彦『仰せの通りです。しかし困つた事には筑紫の島の豊の国を流れる白瀬川の六つの滝に大変な悪魔が現はれて、其処から黒雲を起し妖気を立て、数多の人民を苦しめます。どうかしてこれを言向け和したいものですが、我々の力には到底およばないと断念して、一日も早く神力の強い宣伝使がお出になつて言向け和して下さるやうと、朝な夕な神様に祈つて居ました。その甲斐あつて今日は結構な宣伝使が、しかも四人連れ、この荒家にお越し下さつたのは、全く神様の尊き御恵み』
と言ひながら落涙に咽ぶ。
高光彦『ともかく悪魔退治の前祝ひとして一同打ち揃うて宣伝歌を歌ひませう。サアサア蚊取別さま貴方から歌つて下さい』
蚊取別『よろしい、あまり私の声は聞え過るので悪魔が滝から逃げると困るから、まづ三等位な声を出して歌つて見ませう。貴方がたは本当の私の言霊を聞いた事はありますまいが、上中下三段の言霊の遣ひ分け、マア一番お安価ところで願ひませうかい。アハヽヽヽヽ』
と一人笑ひながら元気よく立ち上り、少し低い声で、

『三五教の宣伝使  高光、玉光、国光の
 神の司や蚊取別  三人四人四柱の
 この世の柱と現はれた  神力強い宣伝使
 中に取り分け蚊取別  神の命は天が下
 四方の国々かけ廻る  神の司に擢んでて
 姿も優れた黒い顔  頭も優れてよく光る
 こんな顔でも女房は  人並優れて美しい
 天女のやうな祝姫』  

高光彦『モシモシ蚊取別さま、そんな宣伝歌がありますか、奥さまのお惚けは止めて貰ひませうかい』
蚊取別『ヤア、あまり堅苦しい事を云ふと肩が凝る。マア一寸お愛想に白瀬川の悪魔を誤魔化すために歌つて見たのです。肝腎要の宣伝歌は正念場にならぬと出せませぬ。それよりも高光さま、貴方も飛び切り上等の言霊を出して歌つて下さいナ』
 初公は、ヌツとこの場に現はれ来り、
初公『ヤア皆さま、遅刻致しました。遅刻した罰金にホヤホヤの宣伝使に一つ歌はして下さいませぬか』
高光彦『ヤアよい処へ助け船が来た。初さまどうぞ頼みます』
初公『宣伝歌も今日が本当の初ですから彼方へはつれ此方へはつれはつはつするやうな事を言ふかも知れませぬ。膳もつて椀もつて箸もつてお断り申して置きます』
蚊取別『コラコラ脱線するな。直に喰ふ事を云ふから困る。ちと真面目にならぬか』
初公『ハイハイ、確に承知仕りましてございますでございまするでございます』
蚊取別『アハヽヽヽ、まする、ますると、ますます可笑しい胡魔する男だなア』
初公『初にお聞きに達しまする宣伝歌の儀は、まづもつて左の通りでございまする。』

『イホの都の主宰神  夏山彦の酋長は
 人の頭を春公と  共に参つた神の前
 鰌のやうに人を見て  酒で殺そと甘くない
 酒をどつさり持つて来て  飲めよ騒げよ歌へよ舞へよ
 酔うて管まけ改心せいと  何を云ふやら分らない
 町の奴等は業煮やし  泣くやら笑ふやら怒るやら
 飛んだり跳ねたり舞ひ狂ひ  酔が廻つてそろそろと
 人の頭を春公に  お米を出せと強請つたら
 何ぢやかんぢやと頭ふる  此処へ出て来た蚊取別
 渋かみさまのやうな顔  服装に似合ぬよい声で
 歌を歌つて面白く  両手を組むで指先で
 ウンと一声初さまも  町の奴等も一時に
 化石のやうな霊縛り  これや耐らぬと各自が
 目をむき鼻をむくひまに  夏山彦の酋長や
 春公の奴が飛んで逃げ  サアしまつたと思ふうち
 この三人が現はれて  ウンとも云はず蚊取別
 皆の体をぐにやぐにやに  旧へ返してくれた故
 この初さまも驚いて  四人の方の供となり
 漸う此処へやつて来た  サアこれからはこれからは
 神の神力身に受けて  白瀬の川の六つ滝に
 障る魔神を悉く  天地の神の言霊に
 伊吹払うて世の中の  曇りや塵を掃き清め
 天の岩戸を押開き  いかい手柄をたててやろ
 これが初公の第一の  後前にない楽しみぢや
 神が表に現はれて  善と悪とを立て別ける
 この世を造りし神直日  御霊も広き大直日
 直日の神の御教を  如何なる悪の曲神も
 聞いたら往生せにや止まぬ  サアこれからはこれからは
 吹いて吹いて吹き捲り  天地を清めて神の世に
 初めて澄ます初さまの  行末こそは頼もしい
 行末こそは頼もしい  七十五米の風じやもの』

 一同は初公の手つきの可笑しさに腹を抱へて笑ひこける。
 宣伝使一行は初公を従へ、夏山彦に別れを告げ、白瀬川の一の滝さして勢込んで進み行く。

(大正一一・三・六 旧二・八 加藤明子録)



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