出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/kihshow.php?KAN=10&HEN=1&SYOU=8&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=&CD=

原著名出版年月表題作者その他
物語10-1-81922/02霊主体従酉 善悪不可解王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
常世城
あらすじ
 遠山別が春山彦の三人の娘を連れて戻ったが、蟹彦、赤熊は門を開けない。蟹彦と赤熊は呼ばれて奥に入る。蟹彦は竹山彦の助けを借りて、鷹取別と照山彦を門番に降格させた。遠山別は門を開けて入るも、秋月姫、深雪姫、橘姫は遠山別に門番に降格を命ずる。
 そんなところで、常世神王他全員が気がつくと、泥田の中におり、狐の声が聞こえる。
名称
赤熊 秋月姫? 梅ケ香姫? 蟹彦 鷹取別 竹野姫? 竹山彦 橘姫? 照山彦 常世神王 遠山別 中依別 松代姫? 深雪姫?
照彦? 春山彦
高野川 常世城 間の国
 
本文    文字数=5456

第八章 善悪不可解〔四三八〕

 鳩、雀、鵯、つむぎ脅かす、鷹取別の秘蔵の臣下、間の国に使して、片道さへも三百里、山河荒野を打渉り往復したる遠山別、漸う此処に月、雪、花の三人を、肩肘はる山彦の館より、意気揚々として駒に跨り、濁流漲る高野川を打渡り、門前に立ち現れ、
『遠山別帰城せり、門番早くこの門開放せよ』
と呼ばはりゐる。
蟹彦『エー、矢釜しいワイ。奥から一寸来てくれ、門外からも開けてくれ、これだから人気男になるのも困るワ。彼方からも袖を引かれ、此方からも袖を引かれ、去んでは嬶にボヤかれ困つた事だ。アヽア、色男も辛いものだなア。オイ赤熊、その方に門番を申し付ける、この方は奥へ行つて休息致す』
赤熊『洒落るない。この赤熊は今日只今より中依別と申すお歴々の役人様、ヤア蟹彦、その方に門番を申し付くる』
『何を吐しよるのだ』
と言ひながら両人は、中門ガラリと開いて奥殿に進み入る。
 鷹取別、鼻声で、
『フラフラ、ホノホハ、ホンパカギリノ、ハンヒラカナイカ、ハニヒホ、ハカフマヂヤナイカ、ハガレオロー』
蟹彦『ヤアヤア、中依別が申付くる。鼻ベチヤの鷹取別は門番を仕れ。ヨウ照山彦、その方も同然、門番に昇級させる。有難く思へ』
照山彦『オイ蟹彦、赤熊、その方は気が違うたのか。血迷うたか。確り致せ』
蟹彦『ワツハツハヽヽヽ、血迷ひもせぬ。呆けも致さぬ。この方の申す事、一時も早く承はり、門番となつて表門を堅く守れ。イヤ何、竹山彦殿、今日よりは貴下と同役、今後はお心安くお願ひ申す』
竹山彦『これはこれは痛み入つたる御挨拶、何分よろしく御願ひ申す』
 鷹取別は呆けたる顔をシヤクリながら、
『ハテさて合点のゆかぬ事だワイ。天が変つて地となり、地が天となり、山は海となり、海は山となり、桑園化して湖水となり、墓場は化して観劇場となる。何と合点のゆかぬ事でござるワイ』
竹山彦『ヤア鷹取別、照山彦、何をグヅグヅ致して居るか、早く表門を開けぬか。中依別は何故この場を立ち去らぬか』
 何時の間にやら表門をガラリと開いて、威勢よく入り来る遠山別、三人の娘を引つたてながらこの場に現はれ、
『ヤア、某は間の国に使して首尾よく御用を仕遂げ、華々しき功名手柄を顕はして帰城致せしものぞ』
蟹彦『ヤア、遠山別か、大儀』
『何ぢや、その方は蟹彦、門番の身として、畏くも奥殿に入り居るさへあるに、この方に向つて恰も臣下を扱ふが如き雑言不礼、何と心得居るか』
『ヤア、何とも、カニとも心得居らぬ。一時も早く月、雪、花の三人をこの場に御案内申せよ』
『何だツ、怪体な、訳の分らぬ事になつて来たワイ。ヤア、鷹取別のその鼻は如何なされた。照山彦、その頭は如何なされしか』
『エイ、頭も顔もあつたものか、早くこの場へ姫を出さぬか、何はともあれ、某が三人の娘の首実検いたさむ』
と玄関先に据ゑられたる駕籠を一寸開き、中を窺いて呆れ声、
『ヤア、赤熊よ、何ともかとも言へぬ。呆れ果てたるばかりなりけりだ』
赤熊『また、照彦か』
蟹彦『照るの照らぬのと、イヤもう偉い照りでござる。空照り渡る秋月姫、眩きばかりの真白けの深雪姫、四季時を論ぜず咲き匂ふ橘姫、某も腰抜かさむばかりビツクリ仰天致した』
『コラ蟹彦、タカが知れた三人の女、何だ恐ろしさうに何をビクつく』
 三人の娘は悠然としてこの場に現はれ、
『ヨー、遠山別とやら、お迎へ大儀であつた。その褒美として今日ただ今より常世城の重役を免じ、門番に命ずる。一時も早く門番部屋へお下りあれ』
 この時奥殿より常世神王を始め、松、竹、梅の三人の局はこの場に現はれ来り、
常世神王『ヤア、遠山別、御苦労御苦労』
『ハイ、実に以て遅なはり候段、平にお許し下さいませ。愈松、竹、梅の三人、アー否々、月、雪、花の三人の乙女、これへ引き連れ申候。篤と御実検下さいませ』
 何処ともなく、何神の声とも知らず、中空より、
『ワツハツハヽヽヽ、オツホツホヽヽヽ、常世神王をはじめ一同の者、足許に注意致せよ』
と呼はるにぞ、常世神王はこの声にハツと気がつき四辺を見れば、常世城の馬場にヘタ張り、その他一同の役人も泥にまみれて蠢いて居る。またもや中空に声あつて、
『ヤア、コンコンチキチン、コンチキチン、ネツカラホントカ、コンチキチン、コンコンチキチン、コンチキチン』

(大正一一・二・二一 旧一・二五 北村隆光録)



オニドでるび付原文を読む    オニド霊界物語Web