出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語10-1-231922/02霊主体従酉 神の慈愛王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
ロッキー山
あらすじ
 大国姫が敗戦に呆然としているところへ、日の出神を自称する大国彦がやってきて、「ロッキー城は常世神王によって蹂躙されている」と告げる。大国彦は大国姫を黄泉島へ出陣させる。その後、大国彦に帰順したと見せかけていたオド山津見と固虎彦は、「自分たちは三五教の宣伝使である」と名乗り、大国彦に改心を迫った。大国彦はツムガリの太刀で斬りかかった。固虎彦は「危急の場合だから、刀を抜いて対抗しよう」と言うが、オド山津見は「自分たちは至仁至愛の心でこの場を逃げる。彼を斬るか、斬られるか、彼も神の子、吾も神の子、神の御子同士傷つけあうは、親神に対して申し訳なし」と逃げ出す。大国彦はオド山津見の優しさに触れて、遂に改心した。
 一行常世城に戻ったが、竹山彦他の武将は抵抗しない。一同が奥に入ると、今まで見えた大軍は消え去った。一同は感謝の祝詞をささげる。
名称
オド山津見 大国姫 固虎彦 狐 武虎別 竹山彦 大自在天大国彦 日の出神?
悪鬼 悪霊 伊弉冊尊? 固山彦! 醜国別! 神軍 常世神王広国別 魔神
天津祝詞 天の磐船 神界 天国 常世城 常世の国 黄泉島 ロツキー山城 ロツキー城
 
本文    文字数=7985

第二三章 神の慈愛〔四五三〕

 大国姫命は、武虎別と共に、この場の怪しき光景に胆を奪はれ、呆然として何の辞もなく佇み居る折しも、日の出神と称する大自在天大国彦は、四五の従者と共にこの場に現はれ来り、
『ヤア、ロッキー城は大変な事が起つて来た。常世城常世神王、数多の軍勢を引連れ叛逆を企て、味方においては淤縢山津見、固虎彦を以てこれに当らしめ居れども、始終の勝利は覚束なし。汝大国姫、今より秘かに黄泉島に渡り伊弉冊尊と称して出陣し、味方の士気を鼓舞し以て大勝利を博し、神軍を追払へよ。しからば如何に広国別勢猛く攻め来るとも、汝が武威に恐れて忽ち降服せむ。本城に立籠り、暗々広国別に滅ぼされむは策の得たるものに非ず。吾はこれより本城に止りて、寄せ来る敵を待ち討たむ。汝は一時も早く黄泉島に向へ』
大国姫『委細承知仕りました。しかしながら怪事多きこの城中、十二分の御注意あれ』
と言ひ棄て、天の磐船に乗りて天空を轟かしながら、四五の従兵と共に、黄泉島に向つて急ぎ進み行く。
 この時またもや門外騒がしく、淤縢山津見は、固山彦と共に周章しく入り来り、
『日の出神に申上げます。ロッキー城は、最早刀折れ矢尽き、遂に敵の占領する所となりました』
日出神『エヽ腑甲斐なき奴輩奴。吾はこれより広国別の軍に向ひ勝敗を決せむ。淤縢山津見、固虎、吾に続け』
と言ひながら、駿馬に跨り、威風凛々として少数の軍卒を率ゐ、ロッキー山城を後に見て、ロッキー城に向つて駆けつくる。
 ロッキー城に致り見れば、表門は開放され、一人の敵軍もなければ味方の影もなし。贋日の出神は怪しみながら、将卒を率ゐて四方に心を配りつつ奥深く進み入る。見れば、狐の声四方八方より、
『狐々怪々』
 寂として人影もなし。
日出神『合点の行かぬ今の鳴声。アイヤ、淤縢山津見、固虎彦、残る隅なく捜索せよ』
淤縢山津見『オー、吾こそは三五教の宣伝使、今まで汝が味方と云ひしは、汝の悪逆無道を懲さむためなり。サア、かくなる以上は尋常に降服するか』
『エヽ』
固山彦『汝は日の出神と名を偽り、ロッキー城に立籠り、神界の経綸を根底より破壊せむとせし悪鬼羅刹の張本、かくなる以上は、隠るるとも逃ぐるとも、最早力及ばぬ。覚悟を致せ』
日出神『ヤー残念至極、大国姫は黄泉島に向つて進軍し、部下の勇将猛卒は、或は出陣し或は遁走し、今はわが身一つの、如何とも術なし。サア、汝等斬るなら斬れよ、殺すなら殺せよ』
淤縢山津見『アイヤ贋日の出神、よつく聴け。天地の神明は愛を以て心となし給ふ。吾々人間として如何ともなし難きは空気と水と死とである。死するも生くるも神の御心だ。徒に汝が如き命を奪ひて何の効かあらむ。仮令肉体は死するとも、汝の霊は再び悪鬼となりて天下に横行し、妖邪を行ふは目に見るが如し。吾は汝の生命を奪ひて以て事足れりとなすものでない。汝が霊魂中に割拠せる悪霊を悔い改めしめ、或は退去せしめ、改過遷善の実を挙げさせむと欲するのみ。三五教は汝らの主張の如き、武器を以て人を征服し、或は他国を略奪するものにあらず。至仁至愛の神の教、よつく耳を洗つて聴聞せよ』
『オー、小賢しき汝の言葉、聞く耳持たぬ。かくなる以上は最早吾等の運の尽、鍛へに鍛へし都牟刈太刀を味はつて見よ』
と言ふより早く、太刀をズラリと引き抜いて、淤縢山津見、固山彦に斬つて掛かるその勢凄じく、恰も阿修羅王の荒れ狂ふが如し。淤縢山津見、固山彦は剣の下をくぐり、一目散に表門指して逃げ出す。
日出神『ヤア、卑怯未練な奴。ナゼ尋常に勝負を致さぬか』
固山彦『エヽ残念だ、淤縢山津見さま、如何に三五教の玉の教なればとて、かくの如き侮辱を受けながら、旗を捲き鋒を納めて、この場を逃ぐるは卑怯と見られませう。変事に際して剣の威徳を現はすは、神も許し給ふべし』
淤縢山津見『イヤイヤ、至仁至愛の神の心を以て吾はこの場を逃ぐるなり。竜虎共に戦はば勢ひ互に全からず。彼を斬るか、斬らるるか、彼も神の子、吾も神の子、神の御子同士傷つけ合ふは、親神に対して申訳なし。しばらく彼が鋭鋒を避けて、更めて時を窺ひ悔い改めしめむと思ふ』
『エヽ三五教は誠に以てやり難い教であるワイ』
と地団駄踏んで口惜しがる。日の出神は見え隠れに後をつけ来り、この話を聞いて大いに驚き、思はず、
『ワツ』
とばかり泣き伏しにける。
固山彦『ヤア、なんだか暗がりに泣声が致しますよ』
淤縢山津見『さうだなア、何だか妙な泣声だ、よく似た声だ。ヤア、暗中に泣き叫ぶは何人なるぞ』
 暗中より、
『私は日の出神と名を偽つた大国彦であります。只今貴方の仁慈に富める御言葉を聞いて、感涙に咽び思はず泣きました。私は今迄の悪を翻然として悔い改めます。どうぞ御赦し下さいませ』
淤縢山津見『ホー、満足々々、かくならば敵も味方もない、全く兄弟だ。兄弟を助けたさに、吾は宣伝使となつて苦労を致して居るのだ。貴方の知らるる如く、吾も旧は大逆無道の醜国別、神の仁慈の雨に浴し、悔い改めて宣伝使となりし者、かくなる上は貴下と共にこれより常世城に進み、常世神王広国別を神の教に帰順せしめむ』
固山彦『ヤア、流石は淤縢山津見さま、本当に感心だ。実地の良い教訓を受けました。サアサア日の出神……ではない大国彦殿、これより常世城に向ひませう』
 嚇し上手の淤縢山津見、固い一方の固山彦、目から火の出る日の出神の、意外な憂目に大国彦、今は全く悔い改めて、心の駒も勇み立ち、三人一同に連銭葦毛の駿馬に跨り、魔神の猛る常世の暗の常世城、群がる敵を物ともせず、神を力に信仰を杖に、生死の境を超越し、勇気を鼓して敵の群衆に向つて、馬の蹄の音勇ましく、ハイヨーハイヨと鞭を加へて進み行く。
 竹山彦その他の部将は、この光景を見て、抵抗するかと思ひの外、馬上より、
『ヤア、大国彦命、ウローウロー、目出度しめでたし、一時も早く奥殿に入らせられよ』
と案に相違の挨拶ぶり、大国彦は怪訝の念に駆られながら、淤縢山津見、固山彦と共に、馬上ゆたかに奥へ奥へと進み行く。今まで雲霞の如き大軍と見えしは、夢幻と消え失せて跡形もなく、奥殿には嚠喨たる音楽響き渡り爽快身に迫る。一同は奥の間に端坐し、天津祝詞を奏上し宣伝歌を唱ふ。
 これよりロッキー城も常世の城も、十曜の神旗翻へり、神徳を讃美する声天地に響き、常世国は一時天国楽園と化したるぞ目出度けれ。

(大正一一・二・二五 旧一・二九 松村真澄録)



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