出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語10-1-101922/02霊主体従酉 注目国王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
目の国のカタハの町
あらすじ
 牛雲別や蟹雲別を投げ飛ばした宣伝使は蚊々虎だった。牛雲別と蟹雲別は逃げ去った。蚊々虎とオド山津見、松竹梅達は再会を喜ぶ。
 この縁から、目の国は三五教の国となった。また、目の国には珍山彦の霊縁が今にわたまで伝わっている。
名称
牛雲別 梅ケ香姫* オド山津見 蚊々虎 蟹雲別 群集 竹野姫* 松代姫*
珍山彦! 醜の曲津 鷹取別 中依別 曲津神
ウラル教 言霊 常世の国 冥罰 目無堅間の船 目の国 霊主体従 ロツキー山
 
本文    文字数=5095

第一〇章 注目国〔四四〇〕

 神力無双の宣伝使に打つてかかつた牛雲別は、さしもに高き巌上より地に抛げ落され、鋭利なる頭上の角をへし折り、ギウ牛云ふ目に遇はされて、牛叶はぬとも何とも云はず、雲を霞と群衆を別けてのたのたと姿を隠しぬ。蟹雲別は横腹を、倒れた拍子に岩に打ちつけ、蟹のやうに平たくなりて、カニしてくれとも何とも云はず横這になり、雲を霞と群衆を別けて、ガサリガサリと逃げ出しける。
 宣伝使は声張り上げて、
『ロッキーの山より高き、天狗の鼻の鷹取別は、火玉に打たれて鼻をめしやがれ、中依別は、常世の狐に魅まれて、大事の役目を仕損じた。鬼のやうなる角の出た牛雲別は、力の強い麻柱の、神の教の宣伝使、蚊々虎に、大事の大事の角折られ、牛々言はされ牛叶はぬと、群衆に紛れて逃げ帰り、たうとう姿を牛なうた。蟹雲別は、鋏のやうな鋭い腕を振り上げて、蚊々虎に飛びかかり、胆を摧がれ腰痛め、蟹面をして、暗にまぎれてガサガサと、雲を霞と逃げ失せたり。サアこれからは次の番、百人千人一時に、かかれかかれ、欲に目のない目の国の、心の聾の曲津神、これからこの方が鷲掴み、鷲にはあらで鷹取別の、烏のやうな黒い面、鳩の奴めが豆鉄砲、喰つたやうな面をして、ずらりと並んだ皆の奴、蚊々虎の目の前に、阿呆面さらした可笑しさよ。つらつら思ひ廻らせば、常世の国は盲目国、盲が垣を覗くよな、恰好致してこの方を、十重や二十重に取囲み、アフンと致して空むいて、もろくも白くも目の玉を、白黒々と剥きながら、未だ目が醒めぬか盲ども、こんな苦しい目に遇うて、かち目もないのにちよん猪口才な、盲千人目の開いた、奴は一人もないとは情ない、ホンにお目出度い奴ばかり。コンナ結構な麻柱の、教が滅多に聞けるかい、目無堅間の救ひの船だ、摧げる恐れは一つもないぞ、今に眩暈が出て来るぞ、面目なげにめそめそと、吠面かわくも目の前ぢや、吾はこれから目の国を、めげ醜国と云うてやる。醜の曲津の遠近に、荒ぶる罪穢の深い国、何を目あてにウラル教、一寸先は暗の夜と、曲の教に目が眩み、心の眼は真の暗、何と哀れなことぢやらう。声を烏の蚊々虎が、鳶のやうにかけて来て、つる鶴述べる言霊を、首を長うして聞くがよい。聞く耳もたぬ木耳の、松茸、椎茸、湿地茸、毒茸、滑茸を食はされて、黒血を吐いて目を廻し、終にや冥土の旅枕、首も廻らぬ真暗がり、なまくら者の寄り合うた、この目の国をよつく見よ。四方の山々禿だらけ、大野ケ原は草だらけ、茨の中を潜るよな、この国態は何事ぞ、蚊々虎の申すこと、馬鹿にするならするがよい、天の冥罰立所、神の恵にあひたくば、今目を醒ませ目をさませ、前途の見えぬ目の国の、人こそ実に憐れなれ、人こそ実に憐れなれ』
と巌上に突立ち、群衆に眼を配りながら呶鳴り立てて居る。
 この時、男女の声を交へし宣伝歌が、暗の帳を破つて音楽の如く聞え来る。折しも東の海面を照して、まん円き月は下界を覗き給ふ。今まで百舌鳥か、燕か、雀か、雲雀か、山雀のやうに囀つて居た牛、蟹の手下の者共は、蛇に狙はれた蛙の如く、蟇蛙に魅られた鼬の如く、なめくじりに追ひかけられた蛇の如く、縮かまりて大地に喰ひつきしがみつき、地震の孫か、ぶるぶると慄ひ戦き居たりける。
『月は照る照る目の国曇る、荒れた目の国暗となる』
と涼しき声またもや聞え来る。蚊々虎は巌上より声する方に向つて、
『ホー、その声は淤縢山津見か、よい処でお目にかかつた。マアマア、緩り話さうかい』
 珍山彦の化けの蚊々虎は、涼しき声を張り上げて宣伝歌を歌ひ始めたるに、四人の宣伝使は声に応じて共に歌ふ。月は海よりいづの御霊のすみきり渡る、心も赤き言霊に打たれて、一同は思はず宣伝歌につられて歌ひ始むる。歌の調子に乗せられて、今まで足腰立たぬ憂目に遇ひし悪神等も、嬉し涙を流しながら立ち上つて舞ひ踊る不思議さ。これよりこの国の神人は三五教の教を固く守り、今までの悪心を残る隅なく払拭し、霊主体従の身魂となり変りたるぞ畏けれ。この国は今に珍山彦の血縁伝はり居るといふ。

(大正一一・二・二一 旧一・二五 加藤明子録)



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