出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語10-1-11922/02霊主体従酉 常世城門王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
常世城
あらすじ
 常世の国では、大国彦を日の出神に、大国姫を伊弉冊神になぞらえ、鷹取別を常世神王の宰相として、広国別を常世神王と称していた。
 その常世城に照山彦と竹山彦は松代姫、竹野姫、梅ケ香姫を引き連れて(偽者)、門番の蟹彦、赤熊と問答をしている。
名称
赤熊 蟹彦 竹山彦 照山彦
伊弉冊神? 梅ケ香姫? 大国彦 大国姫 鷹取別 竹野姫? 天女 常世神王広国別 日の出神? 曲神 松代姫?
葵の紋 体主霊従 高砂の州 筑紫の国 常世城 常世の国 豊葦原の瑞穂国 一つ州 黄泉国 ロツキー山
 
本文    文字数=5395

第一章 常世城門〔四三一〕

 東と西の荒海の  浪に漂ふ常世国
 ロッキー山の山颪  吹く木枯に烏羽玉の
 暗にも擬ふ曲神が  暗き心を押し隠し
 白地に葵の紋所  染めたる旗を翻へし
 大国彦の命をば  この世を欺く神柱
 太しく立てむと種々に  心を砕き身を藻掻き
 黄泉国の戦ひに  勝鬨あげて一つ島
 浪高砂の島の面  心筑紫の神国や
 豊葦原の瑞穂国  醜の剣を抜き持ちて
 常世の国の神力を  輝かさむと大国の
 夫の命を日の出神に擬へて  大国姫は伊弉冊の
 神の命と現はれて  心も驕る鷹取別を
 しばし止めて常世神王が宰相となし  体主霊従の政策を
 広国別に事依さし  天下を偽る常世神王とこそ称へけり。

 ロッキーの峰分け昇る天津日に、丸い頭も照山彦や、竹山彦は勇ましく、松、竹、梅の宣伝使、輿に舁がせ数多の供人引き連れて、勝誇りたる手柄顔、肩を怒らし帰り来る。
 常世城の表門に現はれ出でたる二人の上使は、声を張り上げ、
『ヤアヤア門番。照山彦、竹山彦が帰城。一時も早くこの大門を開けよ』
 折から荒ぶ木枯の風。門番の蟹彦、赤熊の両人は、
『ハイ』
と答へて表門をサラリと開けば、長途の旅に疲れ果てたる照山彦、竹山彦も功名心に煽られて、馬上裕に門番を睥睨し、
『ヤア蟹彦、赤熊の両人、一時も早く常世神王に、吾等が手柄を奏聞せよ』
と云ひ捨て中門に進み入る。蟹彦はその名の如く横歩きをしながら大股に中門さして走り来り、
『これはこれは照山彦、竹山彦の御両所様、しばらくお待ち下さいませ。常世神王に奏上した上、お指図に任せ下さいますやう』
竹山彦『エイ、何を愚図々々、横さの道を歩むに妙を得たる蟹彦の門番、何彼につけて邪魔をひろぐか、平家蟹のやうな六かしさうなその面は、泣いて居るのか怒つて居るのか恥かしいのか恐いのか、但は酒に酔つたのか、顔の色まで赤熊の、赤門守る腰抜け門番、絶世の美人、松、竹、梅の天女の降臨、常世神王に伺ふも何もあつたものか、早くこの門を開けよ』
と馬上ながら叱りつけたり。赤熊はきつとなり、
『ヤア竹山彦様、それはあまり傍若無人と申すもの。吾等は卑しき門番と雖も、城内の規則を厳守致す大切の役目、たとへ天女の降臨にもせよ、城主常世神王の許しもなく、漫りにこの中門を開くこと罷りならぬ』
と渋々顔。蟹彦はその間に松代姫の輿を一寸覗いて、大地にどつかと尻餅をつき、
『ヤアヤアヤア、ヒヽヽヽ光るぞ光るぞ、光の強い、ダイヤモンドか、天に輝く日輪か、牡丹の花か、菫か、菖蒲か、黒白も分かぬ常世の国に、こんな女神があらうとは、思ひがけない蟹彦の、泡吹き廻つてヘタばつた。ヤイヤイ、赤熊の大将、黒熊のやうな黒い顔を、真赤に致して怒るより、一寸この輿覗いて見よ。白いと言はうか、清しと言はうか、春の弥生の梅か桜か、桃の花か、鼻筋通つて口許締り、紅の唇、月の眉毛、清しい眼玉は三五の月か、髪は烏の濡羽色、いろいろ女もある世の中に、情婦を持つなら、まア、まア、まア……』
 剛直律儀の赤熊は、蟹彦のこの体を見て苦笑ひ、
『常世城の鉄門を守る役目仰せつけられながら、汝の醜態は何の態、確り致せよ』
『オイオイ赤熊、さう赤くなつて怒るものぢやない。この蟹面の六かしき蟹彦の顔の紐でもサラリと解いた天女の姿、堅いばかりが能ではないぞ。貴様は常から枯木の如く、岩石の如く、味もなければ色もない、冷酷無残の人足だ。一寸お顔を拝んで見よ、貴様の心の枯木にも春の花が開くであらう。それにつけても、貴様の鼻は、一入黒い鼻高野郎、それに不思議や、今日この頃は鼻柱がまつ赤いけ、鼻息荒い表現であらうか、朝瓜、鴨瓜、南瓜のやうな妙な面して、茄子のやうにお色の黒い色男、高い鼻をば眺めて見れば、瓜や茄子の顔に似合はず、鼻赤いな』
 赤熊は声を荒らげ、
『千騎一騎のこの場合、何を吐す』
と睨め付け居る。忽ち門内より声あつて、
『照山彦殿、竹山彦殿、常世神王の御機嫌最も麗しく、首を伸ばして待たせたまふ。早くお入りあれ』
 言下に中門サラリと開けたれば照山彦は、
『ヤアヤア皆の者共、遠路の処御苦労なりしよ。各部屋に立ち帰り緩りと休息せよ、ヤア竹山彦殿、続かせられい』
と先に立ち、輿を舁がせ、奥殿深く進み入る。

(大正一一・二・一九 旧一・二三 加藤明子録)



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