出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語09-5-301922/02霊主体従申 救の神王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
間の国春山彦の館
あらすじ
 一同が身代わりになってくれた神恩に感謝していると、竹山彦が戻って来た。竹山彦は実は鬼武彦が名を偽って鷹取別に仕えていた。鬼武彦は「身代わりに立てたのは、白狐の高倉、旭、月日であった」と告げた。
名称
秋月姫 梅ケ香姫 竹野姫 竹山彦? 橘姫 夏姫 春山彦 白狐 松代姫 深雪姫
悪神 旭 鬼武彦 眷属 木花姫命 皇大神 高倉 鷹取別 月日 野立彦命 野立姫命
神言 大江山(たいこう) 目の国 黄泉島 黄泉比良坂 ロツキー山
 
本文    文字数=4422

第三〇章 救の神〔四二三〕

 春山彦、夏姫を始め、松、竹、梅の宣伝使、並に月、雪、花の姉妹はこの場の不思議に合点ゆかず、夢かとばかり驚喜の念に駆られゐる。夏姫は漸くに口を開き、
『実に尊き有難き神様の御恵、誠と誠が天地に通じて、神様の尊きお救ひに預かつたのでございませう。日頃信ずる野立彦、野立姫、木花姫の御身代り、思へば思へば有難し、勿体なし三五教の御教』
『オー、女房、解つたか。娘でさへも、父の心を酌み取つて、宣伝使様のお身代りに立たうと言ふ健気な心を有つて居るに、汝はまた何とした未練な心であつたか。夫が女房に手を合はして、どうぞ娘を身代りに立ててくれと頼んだ時、其方は一言の返辞もせなかつたであらう。腹を痛めて藁の上から育て上げた、天にも地にも懸がへのない三人の娘を、身代りに立てるのであるから、そなたが一遍に、ウンと言はぬのも強ち無理ではない。お前は信仰が徹底してゐないのだ。信仰の力は山をも動かすとかや。かくのごとき結構な霊験の現はれたるも、まつたく松、竹、梅の宣伝使様の御神徳と御盛運の強いのは申すに及ばず、吾々親子の天地に通じた真心を皇大神は憐み給ひ、救うて下さつたのであらう。アヽ、有難や忝けなや』
とまたもや嬉し涙をしぼる。
 松、竹、梅の宣伝使、月、雪、花の三人の娘は、夫婦二人を労はりながら、改めて宣伝歌を歌ひ神言を奏上する折しも、門戸を叩く者あり。春山彦は僕にも言付けず、自ら起つて表門に駆け行き、戸を開くや否や、ヌツと入り来る一人の男、見れば今三人の宣伝使を伴れ帰つた竹山彦なるにぞ、春山彦はハツと驚き、一つ免れてまた一つ、折角助かつて、ヤレ嬉しやと思ふ間もなく、竹山彦のあとへ引返して、これに来りしは、途中において身代りを悟り、再び来りしならむ。吾家に入れては一大事と、物をも言はず猿臂を延して首筋をグツと掴み、大地へ撃ち倒し、一刀の柄に手をかけて、頭上より真ツ二つにせむと、真向に振り翳すを、竹山彦は大地に倒れながら悠々迫らず、
『春山彦、心を落着けられよ。これには深い仔細がある。吾が申す事を一通り聞いて疑ひを晴されよ』
と起き直つて、門口の閾を跨げようとする。跨げさしては大変と、春山彦は、
『主人の許しなくして、たとへ荒屋なりとも、勝手気儘に吾家の閾を跨ぐるとは無礼千万、思ひ知れよ』
とまたもや斬つてかかるを、竹山彦はヒラリと体を躱したまま、ツカツカと座敷へ進み入る。夏姫を始め六人の娘は、竹山彦の再び現はれしに驚き、夢に夢見る心地し、呆然として顔を凝視ゐる。春山彦は、両刃の剣を抜き翳し、座敷に上り、
『ヤア、悪逆無道の鷹取別に組する悪魔の張本竹山彦、この春山彦が正義の刃喰つて見よ』
と、またもや斬り付くるを、竹山彦は利腕を確乎と握り、
『アハヽヽヽ、春山彦、心を落着けられよ。吾こそは、大江山に現はれたる鬼武彦の化身にして、竹山彦とは仮の名、松、竹、梅の三人の宣伝使を救はむがために、竹山彦命と偽つて、悪神鷹取別の部下となり、今日あるを前知して、吾部下の白狐、高倉、旭、月日の眷属神を使ひ、身代りを立てたは狐の七化、もうかうなる上は大磐石、何方も御安心なされよ』
と一部始終を物語れば、春山彦夫婦を始め六人の娘は、一度に思はず手を拍つて神徳を讃美し、鬼武彦に向ひて感謝の意を表しける。
 これより、松、竹、梅の三人は、鬼武彦に護られて目の国に渡り、追々進んでロッキー山に登り、再び船に乗り黄泉島に無事安着し、黄泉比良坂の神業に参加しぬ。

(大正一一・二・一六 旧一・二〇 河津雄録)



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