出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語09-3-121922/02霊主体従申 鹿島立王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
正鹿山津見司の珍の館
あらすじ
 オド山津見一行が正鹿山津見に後事を託し出発しようとしていると、三人の娘が「一緒に宣伝に行きたい」と願い出る。正鹿山津見はこれを許した。また、照彦もそれに従うことになった。
名称
珍山彦 梅ケ香姫 オド山津見津司 駒山彦 五月姫 竹野姫 照彦 正鹿山津見司 松代姫

珍の国 珍の都 エルサレム カルの国 智利 照山峠 常世の国 ハラの港 秘露 目の国 黄泉比良坂
 
本文    文字数=4900

第一二章 鹿島立〔四〇五〕

 茲に淤縢山津見神は、正鹿山津見神に細々と後事を托し、
『黄泉比良坂の戦ひまで、珍の国を五月姫と共に守らせ給へ』
と言ひ残し、珍山彦、駒山彦を伴ひ、数日滞在の後別れを告げて出でむとする時、松代姫は淤縢山津見神の袖を控へて、
『先づしばらく御待ち下されませ。妾三人の姉妹は、神様の広き厚き御恵みに浴し、恋しき父にも出会ひ、今また慈愛深き母を授かり、最早心残りもございませねば、何とぞ妾を御供に御使ひ下さいますまいか。女ながらも黄泉比良坂の戦ひに働かして頂きたう存じます。どうぞ広き大御心に見直し聞き直して是非御供に……』
と真心を面に現はして頼み入るにぞ、淤縢山津見は、
『それは感心なことです。しかしながら吾々の自由にならぬ。正鹿山津見神様に御許しを得られた上、御同道致しませう』
 竹野姫、梅ケ香姫の二人は、声を揃へて両手をつきながら、
『どうぞ妾も御供が致したうございますワ』
珍山彦『ヤア、今までは男四人と女一人、それでさへも随分道中は賑はうたものだ。何と云つても駒山さまのやうなデレのスーが混つて居るのだからなア。しかるに今度は御三人の御姫さまがお越し遊ばすとなれば、道中は随分賑はふ事であらう。女が三人寄れば姦しいと云ふことがある。イヤもう、さうなれば鹿島立でなくて、かしましい立ちだ。しかしながらその志は感心々々、どれどれこれからこの珍山彦が御父上に伺うて来て上げませう』
と正鹿山津見神の居間に引返し、三人の娘の願ひを打破つて細々と陳べ立つるにぞ、正鹿山津見神は娘の勇気に感じ、
『アヽ折角可愛い娘に会うたと思へば、もう別れねばならぬか。イヤこれも神国のため、御道のためだ。会者定離は浮世の常、どうぞ珍山彦さま、娘たちをよろしく御願ひ致します』
と声を曇らせながら答ふるを、珍山彦は、
『結構だ。その覚悟がなくては神様の宮仕へは到底勤まらない』
と三人の娘の前に現はれて、
『三人の御姉妹、喜びなさいませ。実に御父さまの心は立派なものだ。この親にしてこの児あり、この児にしてこの親あり、この夫にしてこの妻あり、この妻にしてこの夫あり、この君にしてこの臣あり、この臣にしてこの君ありだ』
 駒山彦は、
『オイ、グヅ山、なにをグヅグヅ言つて居るのだ。同じ事ばかり繰り返して、またそろそろ地金が出て来たな』
松代姫『しからば妾姉妹三人、御供に仕へませう。何分よろしく御願ひ致します。御一同様』
と頭を下げて叮嚀に挨拶なすにぞ、二人の妹も手をついて、
『何分よろしく』
と笑を浮べて頼み入る。
珍山彦『サテ、これからは長の道中だ。照山峠を越えて、ハラの港に出で、智利、秘露と長途をとぼとぼ歩んでカルの国へ渡り、目の国、常世の国と進んで行くのだから、七六ケしい挨拶は肩が凝つて困る。これからの道中は、師弟だとか、老幼男女の障壁をすつかり取つて、互に云ひたいことも言ひ合つて行くのだから、その心算で心安くして下さい』
『ハイハイ、有難うございます』
と三人は嬉し涙にくれてゐる。
 正鹿山津見、五月姫は門口に送り来り、一行の安全を祝し、立ち別れむとするところへ照彦は馳せ来り、
『モシモシ、私はヱルサレムから三人様の御後を慕つて参つたものでございます。今此処で御別れ申しては、何となく心許ない感じが致します。どうぞ特別の御詮議を以て、宣伝使の御供は叶はずとも、御姫様の御供をさして頂きたうございます』
と怨めしさうに涙含むにぞ、正鹿山津見は、
『ヤア、照彦か。儂も三人の娘を宣伝使の一行に御預けしたものの、孱弱き娘のしかも三人、嘸々御迷惑なさることであらう。照彦、其方は娘たちの後に踵いて、いろいろと世話をしてやつて下さい』
『ヤア御許し下さいますか、有難うございます』
と照彦は栄えの面色勇ましく、一行の後に踵いて、珍の都を一同の宣伝使と共に立ち去りにけり。

(大正一一・二・一三 旧一・一七 有田九皐録)



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