出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語08-5-311922/02霊主体従未 谷間の温泉王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
珍山峠の山麓の温泉
あらすじ
 谷間の温泉に男が倒れていた。オド山津見が鎮魂を施すと男は起き上がった。男は正鹿山津見であった。彼は一行より先に巴留の国で宣伝をしていたが、鷹取別の兵士に槍で刺されて、やっとのことで逃げのびて、温泉で体を治していたのだった。
名称
オド山津見 蚊々虎 駒山彦 五月姫* 正鹿山津見
鷹取別 日の出神
珍山峠 神言 鎮魂 巴留の国 巴留の都 秘露の国
 
本文    文字数=4169

第三一章 谷間の温泉〔三八一〕

 三人の宣伝使は、声を知辺に崎嶇たる谷道を、流れに沿うて登り来たり、見れば湯煙濛々と立ち昇り、天然の温泉が湧き居る。蚊々虎は一人真裸になつて、倒れてゐる男の前に双手を組み、神言を奏上し、鎮魂を施しゐたり。
 駒山彦はこれを見て、
『ヤア、蚊々虎さま、そら何だ』
 蚊々虎は鎮魂を了り、
『ヤア、何でもない。此処に一人の人間が倒れて居るのだ。身体を探つて見れば、まだ血の循つて居るせいか、この湯のせいか知らぬがそこら中温い。どうぞして助けたいものだと、一生懸命鎮魂してるのだが、俺らの力では此奴ばかりはいかぬ。淤縢山津見の宣伝使に、一つ鎮魂をやつて貰ひたいと思つて呼んだのだよ。モシモシ先生、一つこの男に鎮魂を施してくださいな』
 淤縢山津見は、
『やつて見ませうかな』
と云ひながら、天の数歌を歌ひ了つて双手を組み、ウンと一声、鎮魂の息を掛た。裸体になつて倒れて居た男は、ムクムクと起上り、目を擦りながら、四人の宣伝使が前に在るに気がつき、
『ヤア、何れの方か存じませぬが、一命をお救ひ下さいまして有難う存じます』
と顔を上ぐる途端に、蚊々虎は、
『ヨー、貴方は秘露の都で御目に懸つた、正鹿山津見の宣伝使ではござらぬか』
『アア貴方は蚊々虎殿か。ヨーヨー、淤縢山津見殿、思はぬ処で御目に懸りました。これも全く三五教の神様の御引合せ、有難う存じます』
淤縢山津見『貴方はどうして、かかる山奥に御越しになつたのですか、これには何か深き仔細がありませう』
『ハイ、私は秘露の都で、日の出神様や貴方らと袂を分ち、それより巴留の国を宣伝せむと、この珍山峠を越え、鷹取別の城下に宣伝歌を歌つて参りました。所が俄に数百の駱駝隊が現はれて、前後左右より取囲み、槍の切尖にて所構はず突刺され、失神したと思へば、沙漠の中に葬られて居た。私は砂を掻き分けて這ひ上り、夜陰に紛れて巴留の都を逃げ出し、この峠に差しかかる折りしも、傷所はますます痛み、最早一歩も進むことが出来なくなり、喉の渇きを谷水に医さむと、細谷川の清水を汲んで見れば、何とも知れぬ芳き香と味がある。さうしてこの水は谷水に似ず実に温かい。これは薬の水ではあるまいかと、手に掬つて傷所に塗つて見た所が、忽ちその傷は癒えました。されど身体の疲労はどことなく苦しく、それに堪へかね、この谷川を遡れば屹度良い温泉があらう、其処へ行つて身の養生を致さむと、漸くこの温泉を尋ね当ました。それより日夜この温泉に身を浸し、数多の槍傷はすつかり癒えましたが、あまり浴湯が過ぎたと見えて逆上し、知覚精神を喪失してこの場に倒れて居た処、尊き神の御引合せ、貴方方に巡り合ひ、命を助けて貰ひました。コンナ有難い事はありませぬ』
と両眼に涙を湛へながら、両手を合せて感謝の意を表したり。
 淤縢山津見は、
『何事も神様の御引き合せ、吾々は神様の綱に操られて、貴方を救ふべく遣はされたものでありませう。吾々は感謝の言葉を受けては、実に勿体ない気がする。天地の大神に早く感謝をして下さい。吾々も共に神言を奏上いたしませう』
と淤縢山津見の言葉に従ひ、一同はこの温泉の周囲に端坐して神言を奏上したりける。

(大正一一・二・九 旧一・一三 土井靖都録)
(第二六章~第三一章 昭和一〇・三・三 於天恩郷透明殿 王仁校正)



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