出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語08-4-291922/02霊主体従未 原山祇王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
巴留の都
あらすじ
 五人の宣伝使は巴留の城下に入った。城下の人々は「前に来た宣伝使は砂漠に埋められたが、今度のはどうか」と噂している。中空に明るい光(日の出神の化身)が出ると、鷹取別の城から数え切れない鳥船が逃げ去った。
 オド山津見は高彦に原山津見と名づけ巴留の国の守護とした。
名称
乙 オド山津見 蚊々虎 甲 駒山彦 五月姫 高彦 丙
木花姫 鷹取別 原山津見! 日の出神 八王神
天津祝詞 天の磐船 言霊 天教山 鳥船 巴留の国 巴留の都 火の玉
 
本文    文字数=5904

第二九章 原山祇〔三七九〕

 五人の宣伝使は、巴留の城下を指して宣伝歌を歌ひながら、ドンドンと進んで行く。蚊々虎は先頭に立ち眼を白黒しながら、前後左右に眼を配り、何時敵の襲来せむも図り難し、寄らば鉄拳を加へむと拳を握り、肩を怒らし、異様の足つきにて進み行く。城下には彼方にも此方にも三人、五人、十人と集つてこの宣伝使の扮装を見て、種々の噂をやつて居る。
甲『オイこの間来た宣伝使は、鷹取別さまに惨酷い目に遭つて、沙漠の中に埋められてしまひよつたと云ふ事だが、今来た奴はよつぽど強さうな奴ぢや無いか。きつと仕返しに来よつたのだらう。また一つ面白い騒動がオツ始まるぜ。あのギロギロした眼の玉を見い。あんな眼で一つ睨まれたら、なんぼ御威勢の高き鷹取別さまでも、縮み上つてしまふぜ』
乙『何、あの腰を見よ、くの字に曲つてしまつてるぢやないか。偉さうに大道を大手を振つて、八王神のやうに六方を踏んで歩いてるが、コンナ奴は腰のくの字のやうに苦もなく撮み出されてしまふよ』
甲『ヨウ、あれは何だ。素適な別嬪が居るぞ。気楽な宣伝使だなあ。嬶を伴れよつて、コンナ敵城下へ、歌を歌つて来るなんて、よほど度胸が無くては、やれた芸では無いぜ』
甲『たつた今、御城内の駱駝隊が豪い勢で行きよつたが、帰る時は蒼白な顔して火の玉が出たとか云つて逃げて帰つたでないか。彼奴は余程偉い奴だぜ』
 蚊々虎はこの声を耳に挿んで得意顔、
『オーイ、其処に居る人間共、今何と云つた、火の玉が出たと云つたらう』
一同『ハイハイ申しました』
『その火の玉は何処から出たのか分つてるか。勿体なくも三五教の宣伝使様のこれが光つたのだよ』
と指で自分の眼を指して見せる。
高彦『コラコラ道草を喰はずにズツと行かぬか』
『何だい、人を牛か馬かのやうに吐かしよつて、何でもいいワイ。蚊々虎さまに踵いて来い。恐相に五人の真中に這込りよつて、高彦、その態ア何んだ。矢面に立つのは矢張り蚊々虎さまだ。歌へ歌へ』
 一同は声を揃へて、

『神が表に現はれて  善と悪とを立別る
 傲り高振り世の人を  目下に見下す鬼瓦
 寒い暑いも知らず顔  天狗の鼻の鷹取別が
 巴留の都に現はれて  生血を搾り民草の
 汗や膏を吸うて飲む  神が表に現はれて
 善と悪とを立別て  誠のものは久方の
 天津御国へ救け往く  地獄のやうな巴留の国
 春は来れども花咲かず  秋は来れども実は実らず
 冬の寒さにブルブルと  慄ひ戦く民草を
 救けむための宣伝使  巴留の都の人々よ
 神の教に目を醒せ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  たとへ大地は沈むとも
 誠の神の守ります  三五教は世を救ふ
 音に名高き淤縢山津見の  貴の命の宣伝使
 光り輝く蚊々虎の  二つの眼に照されて
 常世の枉津見逃げて行く  黒白も分ぬ五月空
 日の出神が現はれて  世界を照す五月姫
 四方に塞がる村肝の  心の駒山彦の司
 さしもに広き大沙漠  駱駝の背に跨りて
 神徳高き高彦の  道を教ふる宣伝使
 巴留の都の人々よ  眼を洗へ目を覚ませ
 眼を洗つて目を覚ませ  ただ何事も人の世は
 直日に見直し聞き直す  誠の神の宣伝使
 怯めず怖れずドンドンと  吾らが前に現はれて
 救ひの道を早く聞け  救ひの船に早く乗れ
 乗り後れなよ神の船』  

と歌ひながら何の恐れ気もなく、鷹取別の城門に向ふ。このとき天空を轟かして幾千とも数へきれぬ天磐船、鳥船が北方の天高く姿を隠しける。
 淤縢山津見は平然として、
『アハヽヽヽさすがの鷹取別も言霊の偉力に恐れ宣伝歌に縮み上つて逃げよつたな。刃に衂らずして勝とはこの事だ。しかし油断は大敵、一同の者気を注けられよ』
『何と宣伝使様、蚊々虎の言霊に限りますなあ。最前も最前と云ひ雲霞の如き大軍が吾々の鼻息に吹き散つたかと思へば、またもや吾々の宣伝歌に縮み上がつて逃げてしまつた。真実に何で是程、この蚊々虎は神力が多いのか知らぬ。吾ながら驚嘆するの外は無いぢやないですか』
『コラコラ貴様ばつかり功名を横取り仕様と思つても、さうはさせぬぞ。皆日の出神様の御守護だ。貴様は俺の目が光つたのだなんて法螺を吹きよつたが、あれを見よ。城の櫓の上に大きな火の玉が現はれて居るぢやないか』
 一同は櫓に眼を注げば、高彦の言のごとく皎々赫々たる巨大なる火の玉は、五色の輝きを見せて空中に揺らいで居る。一同は思はずアツと云ひながら大地に平伏し、拍手して天津祝詞を奏上したり。茲に淤縢山津見は高彦をこの国の守護神として原山津見と命名し、急使を馳せて天教山の木花姫の御許に認許を奏上したりける。

(大正一一・二・九 旧一・一三 北村隆光録)



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