出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語08-4-231922/02霊主体従未 黒頭巾王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
巴留の都への道筋 闇山津見の館
あらすじ
 蚊々虎と高彦は五月姫がオド山津見を好いているということで二人で言い争いをする。一行は館に到着する。オド山津見は五月姫と一緒に館に入るが、蚊々虎と高彦は言い争いをしている間に取り残された。三人の若い女が二人を迎えにくる。
名称
オド山津見 蚊々虎 五月姫 三人の若い女 高彦
醜国別!
 
本文    文字数=6273

第二三章 黒頭巾〔三七三〕

 五月姫の従者は松明を点しながら、先に立つて道案内をなす、三人の宣伝使は後に随いて行く。蚊々虎、高彦の二人は途々話しを始める。
(小さい声で)『おい、縁は異なもの乙なものじやないか。吾輩のやうな目許の涼しい鼻筋の通つた、口許の締つた男らしい、そしてお負に立派な毛の生えた男を嫌つて、あの禿茶瓶の醜国別が好きだとは、何処で勘定が合ふのだらう。彼奴が頭巾を着てよるから、夜の事なり間違へよつたのだぜ。頭巾を脱いだら五月姫は吃驚しよつて「矢張り人違ひでござりました。こちらのお方」ナンテ言ひよつて、俺の方へ秋波を送るに決つてるわ。アンナ男を可愛がつたところで、何処が尻やら頭やら判つたものぢやない。物好もあればあるものだね』
高彦『俺が女だつたら……』
『さうだつたら、俺に惚れるだらう』
『自惚れない。貴様の腰はくの字に曲つて居るなり、皺嗄声の疳声を出して、石原を薬罐でも引摺るやうな宣伝歌を歌はれたら、愛想が尽きてしまふわ。マア何かい、宣伝使の禿頭の化が露はれて、五月姫が尻を振つたら、第二の候補者はマア高さまかい』
『高が知れたる高彦が、何だい。山道の関守奴が、余り自惚れな』
『へつぴり腰の薬罐声の貴様に、五月姫も有つたものかい』
『何、馬鹿にしよるない』
と蚊々虎は、高彦の横面を拳骨を固めてポカンとやらうとするを、高彦は、
『おい、三五教だよ、堪へ忍びだ』
『ヤアー、宣伝使も辛いものだナ。俺が今迄の蚊々虎だつたら、貴様の頭を思ふ存分やつてやるのだけれど、あゝ神様も胴欲だワイ』
 五月姫は二人の争ひを聞いて、思はず知らず、
『ホヽヽヽ』
と笑ひ出したり。
『おい高公、ホヽヽホケキヨーぢやと。まるで鶯のやうな声だね』
『そらア貴様の薬罐声とは、テンデ物が違ふよ。金と鉛か、お月さまと鼈か、雲と泥か、まあソンナものだなあ』
『何つ! キリキリキリキリ』
『こら、歯軋りを噛んで握り拳を固めよつて、そら三五教だよ。見直し、聞直しだ』
『直に人に轡を篏めよつて、コンナ奴に生半熟教理を教へると都合が悪いわ』
『皆さま暗夜に御苦労に預りました。これが妾の両親の住まつて居ります破屋でござります。さあさあお上り下さいませ』
 淤縢山津見は、
『しからば御免』
と、五月姫に導かれ、先に立つて進んで行く。蚊々虎はその口真似をして、
『暗夜の処、ご苦労でございました。これが妾の両親の住まつて居ります荒屋でござります。さあさあお上り下さいませ。……しからば御免』
『貴様独言いうて、一人返事をしてるのか。馬鹿だなあ』
『おい高彦、馬鹿と言ふ事があるか、宣り直せ』
『馬鹿々々しい目に逢つたワイ。おい蚊々虎、愚図々々しとると門から突出されやしまひかな』
『何、突き出しよつたら突き出たらいいのだ。つき出て、月出る彦の神さまに成るのだ。あゝ、月が上つた、あれ見い、三五の明月だ』
 四辺は月光に照されて、昼の如くに明るくなりぬ。
 二人は今や東天をかすめて差昇る満月の光を眺めて、色々と無駄話に耽る内、中門はガラガラ ピシヤツと閉められ、五月姫、淤縢山津見は、深く門内に姿を隠したりける。
『おい高公、ガラガラ ピシヤンぢや』
『オイ蚊々虎、ガラガラ ピシヤンて何だい』
『何だつてガラガラ ピシヤンぢや無いか』
『ガラガラ ピシヤンが何だい。閉る時はピシヤンと云ふし開ける時はガラガラと云ふのだ。何処の門口だつて、ガラガラ ピシヤンはするよ。何が珍しいのだ』
『貴様も血の環りの悪い奴だな。それでは宣伝使も落第だよ。天の岩戸はピツシヤリと閉つて、俺ら二人は放つとけぼりだ。人を雲天井に寝さしよつて、自分らは綾錦に包まれて淤縢山津見の奴、今晩は神楽をあげて面白さうに岩戸開きをやりよるのだよ。馬鹿々々しいぢやないか。一つ今晩門の戸でも叩いて囃してやらうかい、むかつくからなあ』
『三五教だ。堪へ忍びだ。怒つちやいかぬよ』
『馬鹿にしやがるなアー、辛抱せうかい』
 この時またもやガラガラと音がして、三人の若い女、徐々と二人の前に現はれ、
『これはこれはお二方様、夜の事と言ひ、取り込んで居りますで、つい忘れました。お姫様がお二人の方は何処へゐらつしやつたと、大変にお尋ねでございます。どうぞ早く此方へお這入り下さいませ』
『おい、これだから堪へ忍びが第一だと言ふのだナ。俯伏いた拍子に頭巾を辷り落して光つた頭を五月姫に見られて、落第しよつたのだぜ。かう成ると矢張り蚊々虎さまだよ』
『糠喜びをするない、お前のやうな腰付きでは誰だつて惚やしないよ。それは目のまん丸い鼻の大きい口の大きい締りのある、一寸見ても強さうな高彦さまに、白羽の矢が立つのだよ。まあまあ明日の朝に勝敗が分るわ』
『もしもしお客様お話は後でゆつくりして下さいませ。お姫様が大変お待ちでございます』
蚊々虎『吐したりな吐したりな、お姫様がお待遠だとい。エヘン』
と蚊々虎は肩怒らして先に立ち門内に姿を隠したりけり。

(大正一一・二・八 旧一・一二 東尾吉雄録)



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