出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語08-4-211922/02霊主体従未 滝の村王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
滝の村
あらすじ
 蚊々虎は喧嘩虎にいくら打たれても耐えた。今度は喧嘩虎は喧嘩芳と喧嘩を始める。そこへオド山津見の一行がやってきて、荒熊が自分の話を始めると、多くの人が三五教に入信した。
名称
荒熊 オド山津見 蚊々虎 群衆 喧嘩虎 喧嘩芳
高彦! 芳公! 霊魂
ウラル教 滝の村 巴留の都 ブラジル山
 
本文    文字数=5137

第二一章 滝の村〔三七一〕

 蚊々虎は喧嘩虎に、蠑螺の如き拳を以て、頭といはず顔と云はず、身体一面、嫌といふほど打擲せられ、平気の平左で宣伝歌を謠つて居る。群衆の中よりまたもや一人の泥酔者現はれきたり、
『おい虎公、そんな手緩い事であくかい。俺が手伝うてやらう』
と云ひながら、脚もひよろひよろと進み来り、棒千切を以て、
『こうやるのだ』
と云ひつつ、ポンと喰はしたり。酒に酔ひ潰れて眼も碌に見えない泥酔者は、蚊々虎と間違へて、喧嘩虎の頭を嫌といふほど打ちのめす。喧嘩虎は、
『コラ、何をしよるのだ、喧嘩芳。貴様は蚊々虎の贔屓をしよつて、何だ。こんな酒を飲むなと云ふやうな馬鹿な奴に、味方をすると云ふことがあるかい。喧嘩なら負けはせぬぞ』
と云ふより早く鉄拳を振り上げて、芳公の頭を打擲る。芳公は矢庭に棒千切を以て、虎の頭を打つ。虎公はますます怒つて、芳公の髪を掴んで引摺り廻す。芳公は悲鳴を挙げて泣き叫ぶ。群衆の中より口々に、
『オイオイ、誰か這入らぬか這入らぬか』
『這入れと言つたつて彼様酒癖の悪い奴の中に、誰が仲裁に這入る奴があるものか、放つとけ放つとけ』
 二人は組んづ組まれつ、血塗になつて、死物狂に闘ひ出したるを、蚊々虎は二人の中に分け入り、
『マアマア待つた待つた。喧嘩は止めた止めた。オイ虎公、芳公、貴様らが喧嘩してるのではない。酒が喧嘩をしてるのだ。それだから俺が酒を止めろと云ふのだ。どうだ止めるか』
『ヤア何だい。貴様だと思つて喧嘩して居つたのに、俺の友達の虎公だつたのかい、此奴あ、的が外れた。虎公勘忍せ。これからこの宣伝使にかかるのだ』
 芳公と虎公は両方より、蚊々虎に向つて、頭にポカポカと鉄拳を加へる。蚊々虎は泰然自若として打たれて居る。群衆は口々に、
『何と豪いものだな。三五教の宣伝使は本当に忍耐力が強い。吾々も彼の宣伝使に見倣つて、何事も辛抱するのだ。さうすれば喧嘩も何もいりはしない。立派な教だ。ウラル教の宣伝使のやうに口ばつかりと違ふ。本当に立派な行ひだ。我々も三五教が俄に好きになつたよ』
 この時またもや暗中より、

『朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 たとへ大地は沈むとも  誠の力は世を救ふ』

と云ふ宣伝歌が聞えて来た。群衆は耳を澄まして、声する方に向き直る。
 松明の火はドンドン燃え立つて、周囲は昼の如く明かである。そこへ宣伝歌を歌ひながら淤縢山津見は、荒熊の高彦を従へて、悠々と出で来たる。
『ヤア蚊々虎か。お前その頭はどうした。ひどく血が流れて居るではないか』
『血ぐらゐ流れたつて、血つとも応へぬ。誠の力は世を救ふ。血を以て世界を洗ふのです。血つとも心配はいりませぬ。力とするは神ばかりです』
とニコニコ笑つて居る。
 荒熊は大音声を張り上げて、
『我こそはブラジル山の関所を守る荒熊である。今迄の悪を改め、善に立ち帰り、三五教の宣伝使に従つて、此処まで来たのだ。今此処に居る蚊々虎は、宣伝使のお供だ。供でさへも、これほどの忍耐力を持つて居る。人間は忍耐力がなくては、何事も成就せないぞ。七転八起は世の習ひとはいふものの、転ぶは易い、亡ぶのは容易だ。されど起き上るのは却々六ケ敷い、これには堪へ忍が肝腎だ。皆の人たちよ、三五教の教を聞いて心のドン底から霊魂の洗ひ替をなさるがよからう。この世はウラル教の宣伝歌ぢやないが、一寸先は闇の世だ。弱い人間の力で、この世が渡れさうな事はない。俺も今までの我慢や悪を止めて、三五教に入信したのだ。皆の人々よ。俺が鏡だ。皆揃うて改心して下さい』
と呶鳴り立てる。群衆は各小声になつて荒熊の話を聞き、
『アヽ、人間も変れば変るものだ。彼奴の口から、どうして、あんな言葉が出るのだらう。きつと好い教に違ひない』
と口々に誉め称へて居る。
 淤縢山津見は中央の高座に登り、諄々として三五教の教理を説き初めたり。これよりこの群衆の七八分は一度に三五教の信者となり、沢山の駱駝を宣伝使に贈つて、巴留の都行きを助けたり。この村は滝の村と云ふなり。

(大正一一・二・八 旧一・一二 土井靖都録)



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