出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語08-3-131922/02霊主体従未 修羅場王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
秘露の都
あらすじ
 清彦の仮日の出神は、秘露の都で館を作り三五教の宣伝に努めた。館へ蚊々虎がやってきて、「この者は、以前は地の高天原で鬼雲彦と謀反を企み、鬼城山で美山彦の部下となっていた清熊の変化である」と清彦の旧悪をすっぱぬいたので、館の人々は混乱した。そこへ、何者かの宣伝歌が聞こえてきた。
名称
蚊々虎 清彦 国人
悪神 悪魔 鬼雲彦 大国彦 仮日の出神! 清熊! 国魂 国照姫 駒山彦 猿世彦 醜国別 自在天 竜世姫命 棒振彦 美山彦
アリナの滝 鬼城山 高砂州 地の高天原 智利の国 智利の都 常世国 秘露の国 秘露の都 竜宮
 
本文    文字数=5540

第一三章 修羅場〔三六三〕

 心も清き清彦は  朝日夕日のきらきらと
 智利の都を後にして  夜はあるとも秘露の国
 秘露の都へ進み行く。  

 清彦の仮の日の出神は、昼夜間断なく三五教の宣伝に務め、都の中央なる高地を選んで宏大なる館を造り、国魂の神なる竜世姫命の御魂を鎮祭し、その名声は四方に喧伝され、あまたの国人は蟻の甘きに集ふが如く、四方八方よりその徳を慕うて高遠なる教理を聴問に来るもの、夜に日を継ぐ有様なりける。
 仮日の出神は大広前に現はれ、数多の国人に向つて三五教の教理を説き始めたるに、末席より眼光烱々として人を射る黒い顔、しかも弓のやうに腰の曲つた男、酒に酔つ払つて捻鉢巻をしながら、渋紙の如き腕を捲りて高座に現はれ、清彦に向ひ大口を開けて、
『ウワハヽヽヽー、貴様よく化よつたなあ、コラ俺の面を知つて居るか』
と黒い顔を清彦の前にぬつと突き出し、妙な腰付して右の手を無性矢鱈に振りながら、
『皆の者、眉毛に唾をつけよ。此奴は日の出神と偉さうに申して居るが、今この蚊々虎が面の皮を引剥いて目から日の出神にしてやらうぞ。ウワハヽヽヽー』
と腹を抱へ腰を叩き頤をしやくりて嘲弄し始めたり。清彦は一切構はず三五教の教を諄々として説き進めゐたり。蚊々虎は蛮声を張り上げて、
『万場の人々よ、この男は旧は地の高天原に鬼雲彦と共に謀反を企み、常世国の鬼城山に姿を隠し、美山彦、国照姫の悪神の帷幕に参じ、常世の国の会議において泥田の泥狐に欺され、泣きの涙でまたもや鬼城山に逃げ帰り、悪逆無道の限りを尽し、さしもの悪に強き美山彦さへ愛想尽かして放り出したる、鬼とも蛇とも譬へ方無き人非人、数多の神人に蚰蜒の如く嫌はれて、遂には流れ流れて秘露の都へ渡り来たれる、善の仮面を被る外面如菩薩、内心如夜叉、悪鬼羅刹の変化清熊の変名清彦と云ふ奴、此奴が智利の国へ渡つた時、二人の伴を連れて居た。其奴も同じ穴の狐、猿世彦に駒山彦、その猿世彦は今はアリナの滝に庵を結び、三五教の俄宣伝使と化け変り、あまたの国人を誑かす悪魔の変化。駒山彦は秘露の都に現はれて、これまた知らぬが仏の国人を、縦横無尽に誑かす悪魔の再来、その親玉の清熊の成れの果。贋日の出神となつて秘露の国をば闇にする、悪い企の現はれ口、この蚊々虎が見つけた上は、もはや叶はぬ運の尽き。さあさあ清熊白状いたせ、返答はどうぢや、この場に臨んで何も云はれまい。道理ぢや、尤もぢや。俺が代つて貴様の企を素破抜かうか。智利の都の町端れ、闇の夜に汝ら三人の囁く言葉、すつかり聞いたこの蚊々虎、二人の奴を闇の谷間に放つときぼりを喰はしよつて、一人逃げだし路傍の芝生に腰を下し、有りし昔の懺悔話を、後から追ひつく二人の奴に嗅つけられて甲を脱ぎ、茲に三人腹を合してこの高砂島を攪乱せむとする悪の張本人、日の出神とは真赤な偽り、鬼城山の棒振彦の参謀清熊どうぢや、往生したか、早く尻尾を出しよらぬか、ヤアヤア皆の人々一時も早くこの場を去られよ、今に本当の日の出神が竜宮の底から出て来たら、アフンと呆れて馬鹿を見るぞよ。この蚊々虎さまは勿体なくも大国彦の一の家来の醜国別の家来の、そのまた家来のその家来、沢山の家来を連れて居るのは俺ではなうて大国彦様、何処から何処まで、山の谷々、海の底まで、谷蟆のやうに嗅ぎつけ探し廻る自在天の家来の、蚊々虎さまとは俺のことだ、ヤイ清熊まだ強太い白状せぬか、ヤイ皆の奴まだ目が醒ぬか。此処は名に負ふ秘露の国、秘露の都の中央で、夢見る馬鹿があるものか、早う目を醒ませ、手水を使へ、腰抜野郎の屁古垂れ野郎奴』
と口汚く高座より呶鳴りつけたるより、数多の人々は喧々囂々その去就に迷ひ、彼方の隅にも、此方の隅にも激しき争論始まりきたり。場内はあたかも鼎の湧くが如く、雷鳴の轟くが如く、遂には鉄拳の雨処々に降り濺ぎ、泣く、笑ふ、怒る、罵る、叫喚く、忽ち阿鼻叫喚の修羅場と化し去りぬ。清彦は壇上に蚊々虎と共に仁王立となりてこの光景を看守り居たり。

『神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直せ聞き直せ
 身の過は宣り直せ』  

といふ涼しき宣伝歌が、場内の喧騒の声を圧して、手に取るが如く響きわたり、それと同時に、さしも激烈なりし修羅の光景はぴたりとやみにける。嗚呼この宣伝歌は何人の声なりしか。

(大正一一・二・七 旧一・一一 加藤明子録)



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