出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語08-1-61922/02霊主体従未 火の玉王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
高砂州の智利の都へ向う道筋
あらすじ
 猿世彦と駒山彦は「清彦が日の出神を語っている」と人々に触れ回ると言っている。清彦は「元の清彦の名前で悪事ばかり働いてきたので、日の出神という名でないと人々を説得できない」と考えていると、火の球が飛んできて、目の前に落ちて、清彦は日の出神と同じ姿になった。
名称
清彦 駒山彦 猿世彦 火の玉
日の出神 霊魂
鬼城山 高砂州 智利の都
 
本文    文字数=3910

第六章 火の玉〔三五六〕

 清彦は猿世彦、駒山彦の二人を、闇の谷間に置き去りにして、自分はコソコソと谷を降り、夜昼大道を濶歩しつつ、智利の都に肩臂怒らし脚を速めけるが、日も黄昏に近づき、疲労れ果てて、路傍の芝生に腰打ち掛けて独語。
『あゝあゝ、とうとう厄介者を撒いてやつた。この広い高砂島だ。滅多に出会すこともあるまい。彼奴ら二人が踵いて居ると、気がひけて仕方がない。日の出神になりすまして居るこの方を、清彦と云ひよるものだから、せつかく信仰をした信者までが、愛想をつかすやうな事があつては、百日の説法屁一つになつてしまふ。まあまあ、これで一と安心だ』
 夜の帳は下されて、塒に帰る烏の声さへも、聞えなくなりて来たりぬ。このとき闇を縫うて怪しき声聞え来たる。清彦は耳を澄まして聞き入りぬ。
『偽の日の出神の宣伝使。俺ら二人を深山の奥へ、連れて行きよつて、闇に紛れて駆出したる、心の暗い、身魂の悪い、闇雲の宣伝使、もうこれからは俺らは声の続く限り、仮令清彦が天を翔り、地を潜らうとも、一人と二人ぢや。二人が力を協して、清彦の欠点を剥いてやらう。オーイ智利の都の人たちよ、日の出神と云ふ奴が現はれて来ても相手にするなよ。彼奴は山師だ。偽物だ』
と呶鳴りながら、闇を破つて行き過ぎる。清彦は吐息を漏らし、
『あーあー、悪い虫がひつ着きよつたものだナア。鳥黐桶に足を突込んだとは、この事だな。今までの清彦なら、彼奴の声を目標に、後から往つて、あの禿頭を目がけ、ポカンとやつてやるのだが、三五教の教理は何処までも、忍ばねばならぬ。腹を立てて神慮に背き、大事を過るやうな事があつては、それこそ日の出神様に申訳はない。俺がいま日の出神と云つて、この島へ渡つたのも、決して私のためではない。日の出神様が、俺の霊魂が守護するから、俺の代りになつて往け、とおつしやつたからだ。それだから自分が日の出神といつた所が何が悪からう。清彦といふ名は世界中に、悪い奴だと響いて居る。何んぼ神の道は、正直にしなくてはならなくつても、一つは方便を使はなくては、鬼のやうに云はれた鬼城山の清彦では、相手になつてくれる者もありやしない。それでは人を改心さすことも、神徳を拡むることも、絶対に不可能だ。俺の名を聞くと泣いた児も、泣き止むといふ位、世界に恐怖がられて居るのだから、何処までも日の出神で行かねばならぬ。それにつけても二人の奴、吾々の行く先々を、今のやうなこと云つて、歩かれては耐つたものぢやない。アヽ思へば昔の傷が今に報うて来たのか。エヽ残念なことだ』
と思はず大声に叫びゐる。猿世彦は小声で、
『おい駒山彦、的様の声だぜ。何処か此処らに、闇に紛れて潜伏しとるらしいぞ、野郎だいぶ弱りよつたと見えるな。おいもう一つ大きな声で呶鳴つてやろかい』
 このとき前方より闇を照して唸を立てながら、此方に向つて飛び来る火の玉あり、清彦の前に墜落するよと見るまに、清彦は闇中に光を現はして、立派なる日の出神と少しも違はぬ容貌と化したり。二人はあつと云つて口を開けたままその場に倒れける。

(大正一一・二・六 旧一・一〇 土井靖都録)



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