出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語08-1-51922/02霊主体従未 三人世の元王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
東海の海上朝日丸 高砂州
あらすじ
 日の出神は面那芸司を救うため、宣伝を清彦に託し、海に飛び込み、亀に乗って竜宮へ向った。清彦、猿世彦、駒山彦は高砂の州に上陸した。猿世彦と駒山彦は改心したわけではないが、三五教を宣伝することとなった。三人は山間の森に向った。清彦が二人を置き去りにした。
名称
大亀 清彦 駒山彦 猿世彦 日の出神
竜世姫神 月照彦神 面那芸司
鬼城山 高砂の州 智利の国 智利の都 竜宮
 
本文    文字数=6160

第五章 三人世の元〔三五五〕

 日の出神はこの雑談を聴き、黙然として、稍しばし思ひに沈みけるが、忽ち清彦に向ひ、言葉厳かに、
『清彦、吾はこれより智利の都に出張することを見合せ、面那芸の司を救はむため一先づ竜宮を探険せむと思ふ。吾れは汝の身辺を守護するから、心配なく智利の都に致つて三五教を宣伝せよ。高砂の島には竜世姫神、月照彦神守護し給へば勇むで行け。また猿世彦、駒山彦も、今迄の心を改め神の教に随へよ。船の諸人よ。吾れはこれよりお別れ申さむ』
と云ふより早く身を躍らして、海中へ飛び込み玉へば、清彦を始め諸人は、周章狼狽、
『あゝ身投げだ身投げだ』
と口々に叫ぶ。清彦は舷頭に立ち、声を限りに、
『日の出神様 日の出神様』
と号泣したりしが、遥の海面に忽然として人影現はれたり。よくよく見れば日の出神は、巨大なる亀の背に乗り、悠々として、彼方を指して進み行く。清彦は、猿世彦、駒山彦に向ひ、
『あの方は日の出神だぞ。今のお詞を聞いたか。俺はこれから竜宮へ往つて来るからお前たちは心配するな、清彦守つてやらうと仰しやつたであらうがナ。日の出神の御魂の憑依つた清彦は今迄とは違ふぞ。これから俺を日の出神と崇めまつれよ。ドンナ御神徳でもお目にかけてやる』
猿世彦『フム、目から火の出の神の、臀から屁の出の神奴が、人を盲目にしよつて、尻が呆れるわい』
駒山彦『尻から屁の出の、何んにもよう宣伝使様、宣伝歌とやらを聴かして貰はうかい』
清彦『日の出神は、亀に乗つて竜宮へ往かれた。そこであの広い高砂の都を、俺が拓くのだ。貴様もこれから高砂の島へ行くのなら、俺の許しがなくては上陸する事はまかりならぬぞ』
駒山彦『俄に、鉛の天神様見たいに、燥ぎよつて、ちつと海の水でもぶつかけて湿してやらうか』
猿世彦『コラコラ ソンナ暴言を吐くな、結構な宣伝使様だ。しかし俺らも三五教の、一つ宣伝使に化けて、高砂の島を宣伝したらどうだらう』
駒山彦『面白からう、オイ日の出神さま、ドツコイドツコイ。モシモシ日の出宣伝使様、わたしを貴所の弟子にして下されいな』
清彦『改心いたせば許してやらう』
猿世彦『ヘン、偉さうに仰せられますワイ。改心が聞いて呆れるワ』
 清彦は得意然として宣伝歌を歌ひ出したり。

『神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 この世を造りし神直日  御魂も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直せ聞き直せ
 身の過ちは宣り直せ』  

駒山彦『結構な歌だ喃、一つやつて見やうかい、……亀が表に現はれて、日の出神を乗せて行く……』
猿世彦『オイ違ふぞ……亀が表に現はれて、日の出神を乗せて行く、……ソンナ馬鹿な事があるかい、神が表に現はれてと言ふのだよ』
駒山彦『嬶が表に現はれて、猿世を棄てて鹿に従く。ただ何事も人の世は、嬶のすべたに身を任せ、船から亀に乗り直せ』
猿世彦『馬鹿ツ、ソンナ事で宣伝使になれるかい。貴様の耳は木耳か、節穴かイ』
駒山彦『猿世の泣き声きくらげの、嬶左衛門鹿が奪る、嬶左衛門鹿が奪る、鹿がお亀と乗りかへて……』
猿世彦『またソンナ事を言うと風だぞ、浪が立つぞ』
駒山彦『大丈夫だ。日の出神さまがいらつしやるもの』
猿世彦『コンナ日の出神が何になるかい、俄日の出神だ。まあまあ前のが日の出神なら、こいつは、ドツコイこの御方は日暮神位なものだよ。そして貴様は夜半の神だよ』
と無駄口を叩いてゐる。船は漸くにして智利の国の港に着きぬ。三人は一目散に船を飛び出し、どんどんと奥深く進みゆく。
清彦『貴様ら二人は日の出神の御伴は叶はぬぞ。貴様みたやうな、瓢箪や、徳利面した奴を美人の叢淵地たる高砂島を伴れて歩くと、俺までが馬鹿に見えて仕方がないから、ここで三人は別れて、思ひ思ひに宣伝に行かうかい』
猿世彦『オイ清彦、そりやあんまりじやないか。今まで俺の居つた鬼城山に世話になつて居つて、ちつたあ恩も知つとらう。なぜ伴れて行かぬか、幸ひ高砂の人間は吾々の素性はちつとも知らないから、清彦は天下に声望高き日の出神さまとなり、この方さまは荒のカミとなり、駒山彦は雨のカミとなつて、一つ高砂島を日和にしたり、大風にしたり雨にしたりして、神力を現はし、肝玉を潰さしてやつたら、感心するかも知れぬよ。さうだ三人寄れば文殊の智慧、我々三人は三人世の元だ。結構々々と言はれて、一つ無鳥郷の蝙蝠でも気取つたらどうだらうナア』
清彦『蝙蝠は御免だ、あいつは日の暮ばかり出る奴だ。俺は日の暮のカミぢやない。日の出神じやからなあ、まあ山奥にでも這入つて、今晩はゆつくり相談でもしようかい』
と言ひながら樹木鬱蒼たる森林を目がけて、清彦は足を速めける。二人はぶつぶつ小言を言ひながら、清彦の後を追ふ。日は西山に没し、鼻を抓まれても判らぬやうな闇の帳に鎖されたるに、清彦は闇に紛れて、二人を置去りにし、何処ともなく姿を隠したりけり。

(大正一一・二・六 旧一・一〇 河津雄録)



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