出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-9-481922/02霊主体従午 悲喜交々王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
瀬戸の海の船上
あらすじ
 蚊取別は女房があったが、その妻は他の男と不倫していた。
 祝姫は蚊取別をげじげじのように嫌っていたが、北光神が「蚊取別の燃え立つ心をかなえてやれ、それが宣伝使の世を救う役だ」と説諭した。祝姫はそれに従い、自分がこれまで夫をもたなかったのを悔いていたが、蚊取別と一緒になることを承諾した。
 蚊取別は後の雲依彦、祝姫は後の太玉姫となった。
名称
蚊取別 北光神 祝姫
大神 蚊取姫 雲依彦! 醜女 花光彦 太玉姫! 目一箇神!
天の岩戸 熊襲国 小波丸 筑紫州 豊の国 肥の国 黄金山
 
本文    文字数=4943

第四八章 悲喜交々〔三四八〕

 月照り渡る浪の上を客人を満載したる小波丸は、このローマンスを乗せて波に鼓を打たせつつ、東南に向つて進み行く。祝姫の歌に答ふべく以前の宣伝使は、またもや立つて声も涼しく歌ひ始めたり。

『常世の波の重浪を  渡りて漸く筑紫嶋
 虎狼や獅子熊の  猛り狂へる熊襲国
 肥の国豊の国越えて  漸うここに北光の
 三五教の宣伝使  目一箇神と謳はれて
 錦の機を織りながら  千尋の海を打渡り
 黄金の山に進み行く  思へば同じ教の船
 同じ教を宣べ伝ふ  この世の曲を祝姫
 蚊取の別に狙はれて  苦き思ひの汝が心
 幾重にも量り参らせる  さはさりながら世の中は
 恋はれ恋ふるも前の世の  尽せぬ縁と聞くからは
 仇に捨てなよ祝姫  蚊取の別の顔は
 しこの醜女に似たれども  汝が身を思ふ真心は
 生命かけての恋の闇  闇を晴らして助くるは
 世人を救ふ大神の  心を現はす宣伝使
 幸ひ汝は独身者  何れ一度は夫を持つ
 汝の身の上表面の  花に迷ふな実を求め
 どうなり行くも人の身は  この世を造りし大神の
 心のままよ祝姫  蚊取の別の妻女なる
 蚊取の姫のその面  花にも紛ふ優姿
 されど心は腐り切り  夫ある身をも打忘れ
 花光彦と手を取りて  今は常世の佗住居
 頼る術なき独身の  男心の哀れさを
 汲みて助けよ祝姫』  

と歌ひければ、祝姫は蛇よりもげぢげぢよりも、何よりも嫌なる蚊取別に恋慕され、力限りに遁げ隠れつつありし矢先、執念深くも何処よりともなく蚊取別がこの船に乗りゐて、いやな歌を歌ひしに縮み上り、胸苦しく嘔吐を催すやうな思ひに悩みゐたりしが、力と思ふ宣伝使の北光神は、
『蚊取別の燃え立つ思ひを叶へてやれ、それが宣伝使の世を救ふ役だ。幸ひ独身だから』
と勧められたのには倒れぬばかりに驚きける。
 祝姫は心の中に思ふやう、あゝこンな事なら何故もちと早く夫を持つて置なかつた。彼方からも此方からも夫にならう、女房にくれいと、沢山の矢入れがあつた。その中には立派な男も沢山あつたのに、まあ世界は広い周章てるには及ばぬ、大神様のため世界のために宣伝使となり、一つの功名を立てて立派な神司となつたその上では、どんな好い夫でも立派な男でも持てると思つたのは誤り、あまり玉撰びをして男の切ない思ひを無下に辞つた。その天罰が報うて来て、世界に二人と無いやうな醜い男を夫に持たねばならぬか、それとも、せめて智慧なりと人に優れ、心の高尚な男ならたとへ色が黒うても、ひよつとこでも構ひはせぬが、選りに選つて世界の醜男に添はねばならぬか。あゝ情ない。どうしようぞや。とばかりに船底にしがみついて泣き伏しける。祝姫は決心の臍を固め、またもや立つて歌もて北光神に答へたり。

『昨日に変る今日の空  定め無き世と云ひながら
 浮世の義理に絡まれて  嬉しい悲しい船の上
 嬉しい悔しい波の上  心の浪は騒げども
 なみなみならぬ北光の  神の命の御教は
 我身の胸にひしひしと  釘を打たるる如くなり
 あゝ何事も人の世は  吾身のままにならぬもの
 切ない思ひの恋男  切ない思ひの我心
 雪と炭ほど変れども  切ない思ひは同じ事
 身の行く末も恐ろしや  頑固心振り捨てて
 汝が命の愛み  酬い奉らむ祝姫
 蚊取の別の宣伝使よ  必ず無情き女ぞと
 憎み玉はず末長く  千代も八千代も愚なる
 妾を妻と愛み  虎伏す野辺も山奥も
 互に手に手を携へて  睦びに睦ぶ玉椿
 鴛鴦の契を何時迄も  続かせ給へよ蚊取別』

と歌をもつて北光神並に蚊取別に承諾の旨を答へたりける。
 茲に祝姫は蚊取別によく仕へ貞節並びなく、婦人の亀鑑と謳はれて夫婦は共に東西に別れて神の教を宣伝し、天の岩戸の変において偉勲を立てた雲依彦は蚊取別の後身にして、太玉姫は祝姫の後身なりける。

(大正一一・二・二 旧一・六 湯浅仁斎録)



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