出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-8-431922/02霊主体従午 神の国王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
筑紫の都の町外れ
あらすじ
 蚊取別が筑紫の都の町外れで大中教の宣伝歌を歌っていると、群集は「ここは三五教の国だからウラル教はだめだ。酒も飲めない」と迫る。そこへ、宣伝使一行の宣伝歌が聞こえてくる。
名称
乙 蚊取別 群集 甲 高照彦 面那芸司 祝姫 日の出神
ウラル彦 ウラル姫 大足彦 春日姫 白日別 月照彦 常世彦 常世姫 枉津 美山彦
鬼城山 大中教 筑紫の国 筑紫の都 常世城 常世の国 黄金山
 
本文    文字数=6885

第四三章 神の国〔三四三〕

 日は西山に傾いて、塒に帰る群鴉、遠音に響く暮の鐘、ゴーンゴーンと鳴り渡る、四面暗澹として寂寥の気に包まれたる筑紫の都の町外れ、前方に当つて数十人の口々に叫ぶ騒々しき物音聞えきたる。四人の宣伝使は何事ならむと、声する方に足を早めて進み寄り、暗に紛れてジツとこの様子を伺ひゐたり。見れば数多の篝火をドンドン焚いて数十人の人々、頭の光つた瓢箪面の男を中に置き、
甲『ヤイ、貴様は蚊蜻蛉とか蚤取とか、蚊取とか吐かす禿頭の、瓢箪面を下げよつて、自分の頭のやうな瓢箪を腰にブラブラと沢山にさげて、ウラル彦の宣伝歌を歌つて「飲めよ騒げよ一寸先や闇の夜、闇の後には月が出る」とは何をほざきよるのだい、これを見いこの空を。一の暗みの真の闇夜ぢやないか、月が出るなら出してみい。篝火を焚かな分らぬやうな闇の晩に、月が出るなンて、ヘン大方ウソ月が出るだらう。それ見い貴様の月は、頭に附いてゐながら分るまいが、篝がついてゐるわ。貴様のド頭は月のやうに光つてらあ、闇の後に月が出るとは自分の禿頭の自慢だらう』
乙『此処を何と心得てる。白日別といふ立派な御方の鎮まり遊ばす都だぞ。勿体無くも黄金山の麓に現はれ給うた三五教の神の教を守る神の国だ。宣り直せ、云ひ直せ』
蚊取別『ハイハイ宣り直します。どうぞ許して下さいませ』
乙『宣り直すなら許してやらう、さあ早く宣り直さぬか』
 蚊取別は慄ひ声を出し妙な疳声を張りあげて、
『飲むなよ、騒ぐなよ、一尺先は闇の夜、闇の夜さには月は出ぬ』
乙『馬鹿、何吐かしよるのだい。なほ悪い、もつと確り宣り直さぬか』
 蚊取別は悲しさうな声を出して、
『私は馬鹿な生れつきで俄に宣り直すと云つたつてロクな事は宣れませぬ。どうで貴方がたのお気に召すやうな事はございませぬが、宣れとおつしやりや仕方が無いが、命あつての物種だ。死ぬ代りに一生この歌を歌ひ通さうと思うてゐた決心を破つて、マー一遍宣り直して見せませう「除けよ、妨げなよ一同の者よ、散れよ散つた後では酒を飲む」ヘイヘイ』
乙『こいつは益々馬鹿だな。俺が教へてやろ、しつかり聞け、かう吐すのだ。「伸べよ、栄えよ、一寸咲いても神代、神の国には月が照る」よいか、サア云うたり、云うたり』
 蚊取別は頭をなでながら、
『ハイハイ、ま一遍云うて下さいな、忘れました。ハイ』
『忘れると云ふことがあるか、武士の言葉に二言はないぞ、考へ出して宣り直せ』
『ノ、エー、ノ、エー、ヘイヘイ』
乙『早く云はぬか』
『ハイハイ、ノ、ベ、ヨ、酒樽、ヘ、ヘ』
『ドツコイ違ふぞ、酒樽なンて、直に酒の事を吐かしよる。伸べよ、栄えよと、かう云ふのだい』
『カ、カ、勘忍して下さい、その代りに私の懺悔を致します。そンな六ケ敷いことは覚えられませぬ』
『ソラ面白からう。一つ汝の履歴を云つて見い。ドウデ碌な事はあるまい』

『ドウデ私は碌でなし  常世の国の常世彦
 常世の姫に見出され  常世会議に曳出され
 喉に詰まつて一言も  口も利けない悲しさに
 常世の城を放り出され  美山の彦の宣使さまに
 拾ひあげられ鬼城山  ナイヤ河原の水汲みと
 仕へてまたも馬の世話  うまいこと云うて麻柱の
 神の教の宣伝使  春日の姫や月照彦の
 ドエライ神を馬に乗せ  道に大足彦の司
 聾になつた宣伝使  砦の中に引込みて
 美山の彦に御褒美を  頂戴しやうと思うたら
 的が外れてしくじつて  一度は降参したけれど
 酒が飲みたい飲みたいと  喉の虫奴が吐すので
 思ひ切られぬ身の因果  これほど甘い酒の味
 私は死ンでも止めないと  再び心を翻し
 ウラルの彦の宣伝歌  歌うて居たら何処となく
 大中教の宣伝使  私の前に現はれて
 貴様はよつぽど偉い奴  酒を飲め飲め酒なれば
 いくらなりとも貢いでやらう  世界の奴を悉く
 酒に酔はして泡吹かせ  魂を蕩かし身を砕き
 天下万民メチヤメチヤに  やつた所でウラル彦
 ウラルの姫が現はれて  枉津の国としてしまふ
 それの使の宣伝使  蚊取別とは俺のこと
 筑紫の国までやつて来て  酒を飲むなとは情ない
 これがどうして止められよか  好きな酒をば止めるなら
 一層死ンだがましであらう  あらう事かあるまい事か
 訳の判らぬ下戸たちに  好きな酒をば止められて
 私は立つ瀬がないわいのー  妻も子供も振捨てて
 酒で苦労をする私は  何と因果の生れつき
 名酒ないではないかいな  酒も酒も世の中に
 酒ほど甘いものあろか  四百種病の病より
 辛いは酒を止める事  止めてたまろかこの酒を
 飲まず嫌ひは止めにして  皆さま一つ飲ンで見よ
 飲めよ騒げよ一寸先や闇の夜』  

『コラまた吐すか。おいおい皆の奴、あの禿頭をかち割つてやれ』
『はいはい悪うございました。私が悪いのではございませぬ、皆飲ンだ酒が悪いのです。サケ、サケ困つたことになつたものぢや』
 群衆は蚊取別を中に置いて見せ物のやうに面白がつて嘲弄つて居る。闇の中から、

『伸べよ栄えよ一寸咲いても神世  神の国には月が照る
 月より明い大空の  日の出神が現はれて
 天津御空に高照彦の  神の命の宣伝使
 酒の悪魔も祝姫  蚊取の別が今茲で
 面を曝した面那芸の  司の命の宣伝使
 一度に開く梅の花  花は紅葉は緑
 結ぶ実は神の国  結ぶ実は神の国』

と闇を破つて宣伝歌は聞え来たりける。

(大正一一・二・二 旧一・六 奥村芳夫録)



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