出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-7-341922/02霊主体従午 時の氏神王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
肥の国の八島別の館
あらすじ
 日の出神は八島別の館にやって来た。群集が館を取り囲み、館内では虎転別が乱暴狼藉の限りをつくしている。日の出神は虎転別を霊縛して、八島別と一緒になって、「目をえぐってやろうか」などと脅す。
名称
秋姫* 乙 群集 甲 面那芸彦* 虎転別 夏姫* 祝姫* 春姫* 日の出神 丙 門番 八島別

鎮魂 肥の国 黄金山
 
本文    文字数=5866

第三四章 時の氏神〔三三四〕

 日の出神は二人の宣伝使を伴ひ、数万の群集を押分けて、またもや宣伝歌を歌ひながら人波分けて進み行く。群集は三人の姿を見て口々に囁き合ふ。
甲『オイ、八島別とか云ふ、天から降つたやうな豪い力の強い神さまが、この肥の国へ降つて来たと思へば、またもや妙な姿をした神さまがやつて来たぞ、一寸見た処は見窄らしいが、アノ声を聞くと俺等は何ンとなく恐ろしくつて身体が縮み上るやうだ。一人でさへも肥の国の人間は持余して恐れ入つてゐるのに、三人もやつて来るとはコラまたどうしたものだい』
乙『心配するな、天道は人を殺さずと云ふ事があるよ』
丙『乙、貴様は天道天道て一体ソラ何ンだい、テンと分らぬではないか。一つ後をつけて行つたらどうだらうか』
甲『それもさうだな。素知らぬ顔にて何処に行きよるか、踵いて行つてやらうよ』
 ここに三人の宣伝使の後に、見えつ隠れつ踵いて行く。日の出神は館の門前に立止まり、
『吾こそは黄金山の三五教の宣伝使日の出神の一行なり。この門を速かに開けられよ』
と呼はれば、門番は『ハイ』と答へて直ちに門を左右に開きぬ。
『御苦労でござる。八島別は在館か』
門番『ハイ、在らつしやいます。貴下は音に名高き、日の出神様でありましたか、好い処へ来て下さいました。奥は大変でございます』
『大変とは何ンだ』
『大変も大変、さつぱり天地がヒツクリ覆るやうな、館の内は大騒動がオツ始まりました。虎転別と云ふこの国の豪い大将が、何時も八島別さまに向つて、酢に付け味噌につけ小言を申すなり、反対を致すなり、それはそれは大変な悪い奴でございますが、たつた今も無理にこの門を開かして、奥へ四五人の家来を連て進ンでゆきました。さうして結構な酒を喰ひ酔つた揚句は、そこら中を荒れて荒れて荒廻し、戸を叩き破るやら敷物を引裂くやら、女連をとつ捉まへてキヤアキヤア云はすやら、終ひには八島別さまをとつ捉まへて、大きな握り拳で拳骨を喰はすやら、それはそれは豪い乱暴、門番の私もあまりの事で腹が立ち、疳癪玉も舞上つて、胸のあたりにぐつと詰つてしまひました。それに八島別さまは、虎転別の支度ままにさして、拳骨まで喰はされても些も抵抗なさらぬので、段々と付け上り、有るに有られぬ乱暴狼藉、私ザザヽヽヽヽ残念で堪りませぬ。どうぞ貴下が日の出神さまなら、一時も早く虎転別をふン縛つて、敵を討つて下さい、御頼みです』
と手を合して拝む。日の出神はまたもや宣伝歌を歌ひながら、悠然として奥深く進み行く。一行の姿を見るより、三人の若き美人は袖に取り縋り、
『何れの御方かは知りませぬが、よくまあ来て下さいました。奥は大変でございます』
と各々涙声にて訴ふる。三人は軽く打頷きながら、女の後を逐うて、奥深く進み入る。
 八尋殿の中央に、虎転別は真裸となり安座をかき、仁王の如き拳を頭上高く振上げ眼を怒らし居る。日の出神は鎮魂の姿勢を取つて、ウンと一声叫び給へば、虎転別は如何にしけむ、腕を振上げたまま木像の如くに、身体硬直して、ビクとも動けず、ただ両眼のみギロギロと廻転さすのみなり。奥殿よりは八島別、乱れたる髪を撫で上げながら、静々と出で来り、日の出神一行に向ひ、慇懃に挨拶を述べたるに、日の出神も叮嚀に答礼し八島別に向つて、
『貴下の内には見事な木像がありますな。何処からお求めになりましたか。なかなか立派な細工ですネ、ほとんど虎転別の生写し、よくも刻むだものですなあ』
 八島別はフト気が付き傍を見れば今まで荒れ狂ひ居たりし虎転別は、腕を振上げたまま固まり居るを見て、八島別は微笑みながら、
『イヤ、これは左程貴重なものではありませぬ、ホンの仕入細工のヤクザ物、貴下の御意に召しますなら、御土産に進上いたします。貴下は叩きなりと、崩しなりと、砕くなりと御勝手になさいませ』
『それなら頂戴致しませう。貰つた上は私の物、しかし木像は奇妙に目玉が動きますね。眼ばかりギロギロと動いて居るのは見つともない。こンな怪体な眼は抉り出して動かぬ品のよい眼を入れ替へてもよろしいか』
『さあさあ、貴下の御自由に』
 四人の供人はこれまた恐怖心に駆られて、同じく平太張つたまま、カチカチになつてゐる。
日出神『いやここにも乾児がをりますねー。これも一緒に頂戴いたしませうか』
八島別『さあさあ、御安い事』
 虎転別は心も心ならず、如何成り行く事ならむと胸を跳らせたるが、遂には、涙をポロリポロリと零し出したりける。
日出神『やあ、縁起の悪い、涙を零しかけました。打ち斬つてしまひませうか』
と云ひながら、両刃の剣をスラリと抜いて、虎転別の眼の前に突付けたまひける。

(大正一一・二・一 旧一・五 高木鉄男録)



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