出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-6-301922/02霊主体従午 天狗の親玉王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
肥の国の山中
あらすじ
 肥の国では八島別が城を作るために、朝から晩まで人々に石を切り出して運ばせていた。石工たちは日の出神に「えらい目にあっている」と訴える。宣伝使一行は石工に案内させて都へ向う。
名称
面那芸彦 伝公 人夫達 八公 祝姫 日の出神
おせん 天狗 八島別
言霊 肥の国
 
本文    文字数=4583

第三〇章 天狗の親玉〔三三〇〕

 暗き谷間は辿れども  心は明き宣伝使
 狭き山道通へども  心は広き宣伝使
 常夜の暗を晴らし行く  日の出神の宣伝使
 四方に塞がる村雲を  気吹き祝りの宣伝使
 連なる憂を薙ぎ払ふ  面那芸彦の宣伝使
 八島の国を開き行く  八島の別の宣伝使
 とどまる都も近づきて  心も勇む宣伝使

と、歌ひながら谷道を下り来る。谷底には石運に余念なき数十の人夫ありける。
伝『オイ八公、貴様の親分が来たぜ。ソレ、今そこを好い気な顔して鼻唄歌つて、宣伝使、宣伝使とおつしやつてお通り遊ばすだらう。早く行つて拝ンで来い。石運どころぢやあるまい』
八『やかましう言ふない。チヤンと肥の国の都へ行つて、八島別の宣伝使と一緒に俺等のお出ましを、鶴のやうに首を長くして、八は来ぬか、まだ来ぬかと指折り数へて時の経つのを待つてゐて下さるのだ。この仕事が済みたら、俺は家へ帰る。さうすると、立派な乗物をもつて、サア八さま、宣伝使がお待ち受でございます。八さまに来て貰はぬと宣伝使もねつからやりきれない。八さまでなければ夜も明けぬ、日も暮れぬ。鳥が啼かぬ日があつても、八さまの顔の見えぬ日があつたら、この世に生きとる甲斐が無いとおつしやるのだ』
伝『馬鹿、何吐しよるのだ。惚けよつて、貴様はスベタ嬶アの真黒けの黒助の炭団玉の烏の親分みたいな嬶アのおせんに惚けよつて、おせんと宣伝使とを間違へたりして居るのだ、オイ確りせぬかい』
とポカンと横面を撲りつける。
八『喧嘩か、よし来い』
と捻ぢ鉢巻をしながら、手の掌に唾して、四股を踏む。今や両方から掴み合はうとする時、
『待てツ』
と大喝する者あり。この言霊に、伝と八は吃驚して、思はず谷底へペタリとへたばりける。
八『オイ伝公、立たぬかい。喧嘩しやうと吐したぢやないか。立て立て』
伝『泰然自若動かざること巌の如しだ。大丈夫正にこの慨なかるべからざらむやだ』
八『何を吐しよるのだい。腰を抜かしよつて、ビクとも動けねえのだらう。どうだ謝つたか、腰抜け野郎奴』
伝『最前のは戯談だ。どうぞ俺をおぶつて帰つてくれ、腰が立たぬわい。あまり大きな声で雷が落ちたやうに呶鳴りよるのだからなア』
八『それや天狗さまだよ。貴様何時も鼻が高いから、天狗さまが鼻を折つてやらうとなすつたのだ』
 鼻を撫でて見て、
伝『まだそれでも鼻はあるぞ。鼻は大丈夫だが、腰の骨が折れよつたらしい。天狗奴勘違ひしよつたな』
 上の方から、
日出神『オイ、そこにゐる数多の人々、このやうに沢山の石を運ンで、一体何をするのか』
 二三人口を揃へて、
『これはな、八島別さまが肥の国の都へお出になつて、城を築き遊ばすそのために、吾々は朝から晩までエライ目に会うとるのだ。困つた奴が肥の国へ天降つて来よつてな、本当に堪つたものぢやありやしない』
日出神『ウンさうか、それで解つた。御苦労だがその肥の国の都へ案内してくれないか』
二三人『ハイハイ御案内申上げます。貴方は見れば蓑笠をお召しになつて、みすぼらしいお姿をしてござるが、どこやらに貴方のお言葉に何とも言へぬ力がある。最前唸らしやつた大きな声で、伝公は腰を抜かすなり、吾々一同は膽を潰してしまひました。天狗さまの親方だらう。いつぺんあの八島別の奴、あまり吾々を酷き使ひよるから、貴方様のその大きな声をもつともつと大きうして、八島別を呶鳴つて腰を抜いてやつて下さい。あンな奴が居つては、肥の国の人民も気楽に遊ンで暮すことはできやしない。サアサア御案内いたします』
と、先に立つて坂道を二三人の黒い男が案内する。

(大正一一・二・一 旧一・五 桜井重雄録)



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