出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/kihshow.php?KAN=07&HEN=5&SYOU=28&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=&CD=

原著名出版年月表題作者その他
物語07-5-281922/02霊主体従午 不思議の窟王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
熊襲の国の岩窟
あらすじ
 岩窟のうなり声に驚き、小島別は大地に倒れた。そこへ日の出神、祝姫、面那芸の宣伝使が来て舞い踊る。すると、うなり声はおさまった。この神は建日別とは仮の名で、尊い神であるということであった。日の出神は小島別に建日別という名を与えこの神を祭らせて肥の国へ向った。
名称
国人 小島別 面那芸宣使 祝姫 日の出神
天津神 大神 国治立神 純世姫命 建日別! 常世神王 日の大神 曲津 分魂
亜弗利加 天津祝詞 天の岩戸 浦安国 帰神 熊襲の国 心の岩戸 言霊 神界 筑紫 豊の国 根の国 肥の国
 
本文    文字数=6453

第二八章 不思議の窟〔三二八〕

 巌窟内の唸り声は刻々強烈となり、百千万の虎狼の一時に吼え猛るが如く、四辺の山々も木草も凡て一切のものを戦慄せしめたり。小島別は殆ど失神の状態にて、大地に仰向けに倒れたるまま、手足をビクビク慄はせ居たりける。日の出神は、
『オーイ、オーイ』
と合図をすれば、この声に応じて何処よりともなく祝姫の宣使と面那芸の宣使は現はれきたり、ここに三柱は小島別の倒れたる巌窟の前に立ち現はれ、日の出神は歌を歌ひ、面那芸の宣使は石と石とを両手に持ち拍子を取り、祝姫は日蔭葛を襷に掛け、常磐の松を左手に携へ右の手に白扇を広げ舞ひ始めたり。
 祝姫の歌、

『天と地との火と水の  呼吸を合せて国治立の
 神の命の造らしし  心筑紫の神の島
 大海原を取囲み  浦安国は豊の国
 熊襲の国は神の園  常磐堅磐に築立てし
 天の岩戸はこれなるか  国治立の大神は
 心の汚き八十神の  曲神の企みの舌の根に
 懸らせ玉ひて天津神  日の大神の戒めを
 受けさせ玉ひて根の国に  退はれませど皇神は
 何も岩戸の奥深く  隠れ玉ひて世を忍び
 天地四方の神人の  身魂を永遠に守ります
 その勲功は千代八千代  常磐の巌の弥堅く
 穿ちの巌の弥深く  忍ばせ玉ふこれの巌
 忍ばせ玉ふこれの巌  岩戸を開く久方の
 天津日の出の神言を  堅磐常磐に宣る神は
 日の出神と祝姫  面那芸彦の三柱ぞ
 浮船伏せて雄々しくも  踏み轟かす巌の前
 神の小島の宣伝使  建日の別と現はれて
 天の三柱大神の  任のまにまに上り来る
 されど心は常暗の  未だ晴れやらぬ胸の闇
 心の岩戸は締め切りて  開かむよしも無きふしに
 恵も深き国治立の  神の命の分け魂
 建日の別の大神は  天の岩戸を開かむと
 導きたまふ親心  神の心を不知火の
 小島の別の宣伝使  千々の神言蒙りて
 心に懸る千万の  雲霧払ひ晴れ渡る
 御空に清く茜さす  日の大神の御恵みに
 常世の暗も晴れぬべし  赦させ玉へ建日別
 熊襲の国の守り神  人の心も清々と
 誠の道に服従ひて  心安らけく純世姫の
 神の命の御魂をば  これの巌窟に三柱
 千木高知りて斎かひつ  天津祝詞の太祝詞
 宣るも尊き巌の前  日の出神の言霊を
 建日の別も諾なひて  御心和め玉へかし』

と涼しき声を張上げ調子よく歌ひながら、汗を流し帰神して舞ひ狂ひける。面那芸神は石と石とを打ち合せて面白く拍子をとりしが、さしも猛烈なりし巌窟の大音響は夢のごとくに止まりにける。小島別はムツクと立上がり細き目を開きながら三柱の神を眺めて驚き、夢か現か幻か、合点の行かぬこの場の光景と、自ら頬を抓めり指を噛み、
『アヽ矢張り夢では無かつたかナア』
 日の出神は、
『オー貴下は小島別の宣伝使、最前よりの貴下の様子、如何にも怪しく何事ならむと、木蔭に佇み聞きをればこの巌窟の唸り声、如何なせしやその顛末を詳細に語られよ』
と尋ねられ、小島別は三柱の宣伝使に黙礼しながら、
『イヤモウ、大変でしたよ。私は神界に仕へてより、何一つ功名もいたさず、智慧暗き身の悲しさ、大慈大悲の大神の御心を誤解し普く天下を宣伝して、やうやうこの亜弗利加の嶋に参りましたのは一月以前のことであります。国人の話によれば、此処には立派な巌窟ありて、時々唸りを立てるといふ事。私も一つ修業のためと思ひ、嶮しき山坂を越へ谷を渡りて、漸くこの巌窟に辿り着きし間もなく、色々の国人がこれこの通り参拝いたして、頻りに何事か祈つてをる。耳を澄して聞けば、常世神王の教を奉ずる人間ばかり、これでは成らぬと背水の陣を張りて、命を的に三五教の宣伝歌を歌ひ始めました。数多の人々は私の宣伝歌を非常に嫌つて四方八方より迫害せむとする。なに、吾々は天地の教を説く神の使の宣伝使だ。たとへ火の中水の底も、潜りて助けるは吾々の天職と、有らゆる勇気を出して漸く彼らを改心させ、ホツト一息吐く間もなくこの巌窟の奥の方より異様の姿朦朧と現はれ、「アハヽヽハー、オホヽヽホー」と嘲弄はれ、あらむかぎりの吾々の弱点を並べ立てられ、イヤハヤモウ埒もなくきつく油を搾られました。吾々は未だ身魂が磨けて居りませぬ。いよいよ一つ決心をして、今までの取違を改めねばなりませぬ』
と大略を物語りける。日の出神は厳然として宣るやう、
『ここは尊き神様の御隠家、建日別とは仮りの御神名、やがて御本名を名乗り玉ふ時も来たるべし。貴下は此処へ永らく鎮まりて、この巌窟の前に宮を建て、純世姫命の御魂を祭り、熊襲の国の人民を守つて下さい、吾々はこの山を越えて肥の国に行かねばなりませぬから』
 これを聞くより小島別は、
『如何なる神の御引合せか、思ひ掛なき尊き日の出神様に御目にかかり、こンな嬉しきことはありませぬ。仰せに従ひ大神様の岩戸の神の御名を戴き、これより建日別と改め永遠に守護をいたします。どうぞ御安心下さいませ』
と答へける。日の出神は満足の色を現はし、この場を後に三柱の宣伝使を伴ひ、またもや宣伝歌を歌ひながら、この谷間をドンドン登り行く。

(大正一一・二・一 旧一・五 高木鉄男録)



オニドでるび付原文を読む    オニド霊界物語Web