出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-5-261922/02霊主体従午 アオウエイ王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
熊襲の国の岩窟
あらすじ
 小島別は襲ってきた郷人たちは撃退したが、岩窟の中から不思議な声がした。声は、「自分は熊襲の大曲津神八岐の大蛇の眷属蛇々雲彦」と名乗り、小島別の旧悪をあばきはじめる。
名称
小島別 郷人 蛇々雲彦
天の御柱大御神 神伊弉諾大神 伊弉冊命 閻魔 大曲津神 国の御柱大御神 眷属 言霊別 木花姫 醜の曲津見 撞の御柱大御神 常世神王 常世姫 埴安彦神 枉津 八頭八尾の大蛇 八岐の大蛇
熊襲 筑紫の州 天教山 天仙郷 常世の国 常世国 真澄の鏡 竜宮城 黄金山
 
本文    文字数=6082

第二六章 アオウエイ〔三二六〕

 小島別は尚も進むで宣伝歌を歌ふ。数多の人々は息を凝し一言一句その歌に胸を刺さるる如く、苦しみ呻き冷汗淋漓として雨の如く、滝の如くに流し、焦暑さと宣伝歌に責められて、頭はますますガンガンと痛み出したり。小島別は大喝一声、
『赦す』
と声をかくれば、諸人はその声を聞くと共に頭痛はぴたりと止まり、忽ち各自は大地に両手を突き、犬突這となりて謝罪の意を表したりける。
 小島別は眼を擦りながら、諄々として三五教の教理を説きければ、いづれの人々も感に打たれて恐れ入り、宣伝使の顔を穴のあくほど眺め入りぬ。このとき巌窟の奥より何とも云へぬ呻き声聞こえきたる。人々は耳を聳立て眼を見張り、期せずして巌窟の方に向き直れば、奥深き暗き巌窟の中より茫然として白き怪しき影が、蚊帳を透して見るが如くぼんやりと現はれ、不思議な声にて、
『アハヽヽハー。オホヽヽホー。ウフヽヽフー。エヘヽヽヘー。イヒヽヽヒー。腰ぬけ野郎、屁古垂野郎、ばばたれ野郎、ひよつとこ野郎、弱虫、糞虫、雪隠虫、吃驚虫ども、とつくりと聞け。ここは何と心得てゐるか。勿体なくも常世国に現はれ玉へる、国の御柱大御神伊弉冊命のその家来、常世神王の隠れ場所と造られし、一大秘密の天仙郷、この八つの巌窟は、八頭八尾の大蛇の隠れ場所ぞ。その眷属の貴様たちは、たつた一人の宣伝使小島別の盲どもの舌の先にちよろまかされ、木の葉に風の当りしごとく、びりびり致す腰抜け野郎、馬鹿ツ、馬鹿々々々々ツ』
と呶鳴り立てたれば、数多の黒坊はこの声に二度吃驚、
『ヒヤツ! こいつは耐らぬ』
とまたもや大地にべたりと倒れる。小島別は巌窟に向ひ両手を組み「惟神霊幸倍坐世」と唱へながら、
『我々は、畏れ多くも天教山に現はれ給へる撞御柱大御神、天御柱大御神、木花姫の神教を開かせたまふ黄金山下の三五教の守神、埴安彦神の宣伝使小島別なるぞ。何者ならば断りもなく筑紫の島に打ち渡り、この巌窟に巣を構へ、悪逆無道の限りを尽し、天命つひに免れ難く、この巌窟に忍び入るこそ汝悪神の運の尽き。早く汝が素性を名乗り、悪を悔ひ善に立ちかへり、撞御柱大神に心の底より謝罪せよ。否むにおいては我に天授の宝剣あり。サアどうぢや。抜いて見せうか抜かずに置かうか。醜の曲津見返答致せ』
 巌窟の中よりまたもや、
『アハヽヽハー阿呆につける薬はないワイ、オホヽヽホー臆病者の空威張り奴、ウフヽヽフー迂濶者の世迷ひ言、エヘヽヽヘー得体の知れぬ宣伝使、イヒヽヽヒー行きつきばつたりの流浪人、吾は熊襲の大曲津神、曲つた事は大の好物、汝が頭のど天辺から塩でもつけて噛ぶつて喰はうか、股から引き裂いて炙つて喰はうか、八岐の大蛇の大棟梁、蛇々雲彦とは吾事なるぞ。返答聴かう、小島別の宣伝使』
と四辺に響く大音声に呶鳴りつけたれども、小島別は莞爾として、
『アハヽヽアー熊襲の国の枉津神、味をやり居るワイ。正義に刃向ふ刃は無いぞ。善と悪とを立別る神の使の宣伝使だ。真澄の鏡に照されて、赤耻掻き頭を掻いて吠面かわくな。かく申す某は、天教山に名も高き神伊弉諾大神の遣はせ玉へる、心も膽も天下無雙の太柱、太い奴とは俺の事、喰ふなら見事喰つて見よ。古手な事をして泡を喰ふな』
 巌窟の中より、
『アハヽハー仇阿呆らしいワイ。オホヽホー脅喝文句のお目出度さ。ウフヽフー迂濶者の迂濶事、熱に浮かされてうさ事を吐くな。エヘヽヘー豪い元気だのう、閻魔も裸足で逃げやうかい。イヒヽヒー勢ばかり強うても心の弱味は見え透いた。イヒヽー憐愍いものだ。いま俺の手にかかつて寂滅為楽頓生菩提、一寸先の見えぬ盲ども、これを思へば憐愍うて涙が溢れる。アハヽハー悪の身魂の年の明きとは貴様の事、悪の栄える例はないぞ。イヒヽヒーいつまで身魂が磨けぬか。オホヽホー己の事は棚に上げ、人を悪い悪いと慢心いたしてその権幕は何の事だい。ウフヽフー動きの取れぬ今日の首尾、迂濶出て来た偽宣伝使。エヘヽヘー枝の、末の、貧乏神、腰抜け野郎の分際で、常世の国に使ひして、言霊別に騙されて、竜宮城に帰つて何の態。イヒヽヒー何時まで経ても改心せぬか、心の岩戸は何時開く、一度に開く梅の花、善に見えても悪がある。悪に見えても善がある。善と慈悲との仮面を被り、吾物顔に天下を横行濶歩する小島別の偽宣伝使。この世の中の穀潰し、生て益なき娑婆塞ぎ、地獄の釜のどン底に落してやらうか小島別、常世姫に玉抜かれ、言霊別に力の限り根限り、邪魔をひろいだ盲者の張本、どの面提げて臆面もなく三五教の宣伝使。アハヽハー、ほンに世界は広いものだなあ、オホヽホー、ウフヽフー、エヘヽヘー、イヒヽヒー、』
とまたも笑ひ出したり。
 小島別は胸に鎹打たるる心地、ハツと胸を衝いて思案に暮れゐたりける。

(大正一一・二・一 旧一・五 加藤明子録)
(第一九章~第二六章 昭和一〇・二・二三 於徳山市松政旅館 王仁校正)



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