出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-5-251922/02霊主体従午 建日別王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
熊襲の国の岩窟
あらすじ
 日の出神、祝姫、面那芸津司の三柱の宣伝使はアフリカの山や谷の絶景にみとれる。そこに、うなり声のようなものが聞こえるので行ってみると、三五教の宣伝使小島別が数十人の男のいる岩窟に捕らえられていた。
名称
赤銅色の男達 面那芸 祝姫 日の出神
天津日の神 荒熊別 伊弉諾神 伊弉冊命 鬼 大蛇 小島別 醜の曲津 建日別 常世神王 虎 狼
亜弗利加 綾の高天 熊襲の国 筑紫州 常世の国 八州国
 
本文    文字数=6673

第二五章 建日別〔三二五〕

 大海原を撫で渡る  科戸の風の吹き廻し
 常世の波の重波の  寄せ来るままに思ひきや
 筑紫島なる亜弗利加の  広き陸地に着きにけり
 暗世を照らす天津日の  光を浴びて照妙の
 衣を捨てて蓑笠の  身装も脚もいと軽く
 崎嶇たる山を登り来る  ここに一条の急潭は
 怪しき巌と相打ちて  激怒突喊飛ぶ沫の
 万斛の咳咤を注いで  怪岩の面を打てば
 巌はその奇しき醜き  面を背けて水は狂奔する
 奇絶壮絶勝景の  谷間の小径に差懸る
 春とはいへど蒸暑き  日に亜弗利加の山の奥
 暫時木蔭に佇みて  この光景を三柱の
 名さへ芽出度き宣伝使  飛瀑の声と相俟つて
 壮快極まる宣伝歌  天地の塵を払拭し
 山野を清むる如くなり。  

 三柱の宣伝使は、この谷川の奇勝を眺め、日の出神は、
『あゝ実に天下の絶景だ。吾々も宣伝使となつて、天下を横行濶歩して来たが、未だ嘗て見ざる壮快な景色である。山といひ、谷川といひ、実に吾々の心境を洗ふやうな心持がするね』
祝姫『左様でござります。長い間波の上の生活を続けて、少々勿体ないことながら飽き気味になつてゐましたが、世界はよくしたものですな。かう云ふやうな天下の奇勝を見ることの出来るのも、全く神様の御引合はせ。旅は憂いもの、辛いものと申せども、宣伝使でなくては到底かう云ふ絶景を見ることは出来ない。吾々は神様に感謝を捧げねばなりますまい』
面那芸『あゝ時に何だか谷底に流れの音か、猛獣の呻き声か、人の叫び声か、はつきり分りませぬが妙な響がするではありませぬか』
 日の出神は、衝と立つて耳を澄しながら、
『はー、如何にも何だか合点のゆかぬ唸鳴り声ですな。何はともあれ、私はその声を目標に調べて来ませう。貴使は此処にしばらく待つてゐて下さい』
 二柱は口を揃へて、
『いや、吾々も御伴いたしませう』
日出神『しからば私が一歩先に参ります。貴下は見え隠れに跟いて来て下さい。万一の事があれば合図を致しますから、こちらが合図をするまで、出て来てはなりませぬぞ』
と云ひながら、日の出神は谷深く声を捜ねて進み行く。
 行くこと二三町ばかり、此処には見上ぐるばかりの大岩石が谷間に屹立し、五六尺もある大なる巌窟が、彼方にも此方にも、天然に穿たれあり。髪の毛の赤い、顔の炭ほど黒いやや赤銅色を帯びた数多の男が、幅の分厚い唇を鳥の嘴のやうに突出した奴数十人安座をかいて、一人の色の蒼白い少しく眼の悪い男を中に置いて何か頻に揶揄つてゐる。日の出神は、木蔭に身を忍ばせこの様子を聞き入つた。
『やい、貴様は三五教の宣伝使とか、何とか吐かしよつて、この島に案内も無く肩の凝るやうな歌を歌つて参り、俺らの一族を滅茶々々にしよるのか。此処を何と心得てをる。勿体なくも常世の国の常世神王様の御領分だぞ。それに貴様は大きな面を提よつて、この世が変るの、善と悪とを立別けるのと、大きな喇叭を吹きよつて何のことだい。もうこれ限り宣伝使を止めて、俺らの奴隷になればよし。ならなならぬでこれから成敗をしてやる。返答せい』
 一人の男は、少しも屈せず四辺に響く声を張上げて、
『神が表に現はれて 善と悪とを立別る』
『こら、しぶとい奴だ。未だ吐かすのか。おい、皆の奴、石塊を持つて来い。此奴の口を塞いでやらうぢやないか』
『おい、宣伝使、此処は畏れ多くも常世国に現はれました伊弉冊命様が、常世神王といふ偉い神様を御使ひになつて、その御家来の荒熊別といふ力の強い御威勢の高い神様が、御守り遊ばす結構な国だぞ。此処の人間は毎日々々、神様の御蔭で、一つも働かず無花果の実を食つたり、橘や、橙その他の結構なものを頂いて、梨の実の酒を醸つて「呑めよ騒げよ一寸先や暗よ、暗の後には月が出る」と日々勇ンで暮す天国だ。それに何ぞや、七六ケ敷い劫託を列べよつて、立替るも立別るもあつたものかい。さあ、これから皆寄つて此奴を荒料理して食つてしまつてやらうかい』
『やい、そんな無茶をするない。此奴は剛情我慢の奴だが、しかしあの細い目から恐ろしい光を出して居るぞ。何でも天から降つて来た神さまの化物かも知れやしない。うつかり手出をしたら、罰が当るぞよ』
『気の弱いことを言ふな。吾々は伊弉諾神様の立派な氏子だ。天から降つたか、地から湧いたか知らぬが、こンなものの一疋位にびくびくするない』
 一人の男、声を張上げて、

『神がこの世に現はれて  善と悪とを立別ける
 天地四方の国々や  島の八十島八洲国
 教を開く宣伝使  神の恵みも大島や
 小島の別の神司  眼は少し悪けれど
 汝の眼に映らない  心の眼は日月の
 光に擬ふ小島別  わけも知らずに言さやぐ
 醜の曲津の集まれる  虎狼や鬼大蛇
 熊襲の国の山の奥  山路を別けて進み来る
 われは汝の助け神  世は常暗の熊襲国
 残る隈なく照らさむと  綾の高天を立出でて
 心のたけの建日別  神の命と現はれて
 この国魂と天津日の  神の命のよさしなり
 神の命のよさしなり  荒ぶる神よ醜人よ
 善と悪とを立別る  誠の神の神勅』

と歌ひ始むるや、一同は耳を塞ぎ、目を閉ぢ、
『やあ、こいつは堪らぬ』
と大地にかぶりつく。この時またもや、森林の中より宣伝歌が聞えきたりぬ。

(大正一一・二・一 旧一・五 外山豊二録)



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