出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-4-231922/02霊主体従午 色良い男王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
竜宮海 筑紫の州
あらすじ
 竜宮を離れた船は、船客がつまらない話をしていたので風が変わり、筑紫の州に漂着してしまった。
名称
船頭 面那芸彦* 祝姫* 日の出神
ウラル彦 竜宮の乙姫
筑紫の州 常世の国 竜宮島
 
本文    文字数=4668

第二三章 色良い男〔三二三〕

 船頭はまたもや立つて船歌を唄ひ始めたり。
『金は世界の宝と聞けど ここの宝は手に合はぬ』
と歌ひながら進み行く。船頭は日の出神に向ひ、
『漸く竜宮島の区域は離れました。これから先はどンな話をしても構ひませぬ。どうぞ珍らしい話を聞かして下さい。長い海の上、嘸御退屈でせうから、充分面白い話をして下さいませ』
と、荒つぽい船頭に似ず日の出神に向つては、力限り丁寧な言葉を列べ立てたり。而て一般の船客に向ひ、
『おい、皆の御客さまよ、これからどンな話をしてもよいわ。もう竜宮島の上は越えた。面白い歌でも唄はつしやれ』
 船客の中から、
『あゝヤレヤレ、口に虫が湧くかと思つた。これからチツと喋らして貰はうかい。おい船頭衆、何言つても好いかい』
『生命の洗濯ぢや、面白い事を話さつしやい』
『どうも立派な宝が浮いたね。一つ俺も欲しかつた。彼れ一つ有つたら、一生涯親子兄弟が「呑めよ騒げよ一寸先は暗よ」と云つて、ウラル彦さまのやうに暮されるのに、一つ位くれたつて好ささうなものだに、竜宮の乙姫といふ餓鬼や、よつぽど欲な奴ぢやナア』
『欲な奴は皆、竜宮の乙姫見たやうな奴だと云はうがな、欲有る奴ぢやから偉いのだ。ヨク無い奴は即ち悪いのだよ。よくよく思案をしてみれば、金が仇の世の中か』
『何を吐かすのだい。貴様の云ふ事は、チツとも分りやしないよ』
『分らぬ筈だよ。深い深い海の底に隠してあるのだもの、分つたら貴様のやうな欲心坊が、みな持つて帰ンでしまふ。それで乙姫様が分らぬやうにしてござるのぢや』
『益々分らぬことを言ふ奴だなあ』
『そンなことは牛の爪だい、先から分つてらあ』
『そンなけなりさうな話はやめてくれ。何だか羨ましくなつてきた。それよりも酒を呑ンで喧嘩でもして見ようかい。俺が呑まぬ役の狸彦とか、狐彦とかになるさ。貴様らは徳利彦と、酔払彦になつて歌を唄つて酒を呑むのだ。さうすると俺の狸彦が、貴様の頭をポカンとやるのだ。さうすると日の出神さまが、貴様は狸かいとおつしやるのだ。さうするとタヽヽヽタヽヽヽタノでございますと云ふのだ。しかり而して日の出神さまが、其処に居るのは徳利彦か、酔払彦かと御訊ね遊ばすのだ。そこで俺がトヽヽトヽヽトツクリと分りませぬと噛ますのだ。さうすると今度は日の出神さまが、そこに居るのは酔払彦かとおつしやるのだ。さうすると俺がヨヽヽヽヨヽヽヽヨウ酔うてゐますと噛ますのだ。さうすると日の出神さまが、御感心遊ばしてな、俺にはまた色好い男とか、何とかいふ神名を下さるなり、貴様にはクヽヽクヽヽ黒狸とか、クヽヽクヽヽ黒狐とかいふ名を賜つて、竜宮島の神さまにして下さるのだ』
『やい、貴様は色好い男なンて吐かしよつて、俺を黒狐の黒狸と、何だい馬鹿にするな。それそれ日の出神さまが、大きな目を剥いて睨んでゐらつしやるぞ。蝸牛蟲のやうに、すつこめすつこめ』
と他愛なく馬鹿口を叩いて酒をチビリチビリと呑ンでゐる。船頭は、
『オイ、御客様、常世の国に行くつもりだつたが、お前達が仕様もない話をするものだから、さつぱり風が変つてしまつたよ。これはどうしても一旦は、筑紫の島へ押流されにや仕方が無い。これもお前達の身から出た錆だ。必ず船頭を悪いと思つてくれるなよ』
『船頭、吾々の前途を見届けるのは、船頭の役ぢやないか。飯は船中の虱のやうにセンドセンドかかつて喰ふなり、そンなことで船商買は務まらせんどうだアハヽヽヽ』
 霧をすかして遥向方に、波に浮べるこンもりとした島かげ現はれたり。船頭は、
『やあ、たうとう筑紫の島が見えました』
 日の出神は立ち上り、筑紫の島に向つて、またもや歌を唄ひたまう。

(大正一一・一・三一 旧一・四 外山豊二録)



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