出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-2-101922/02霊主体従午 附合信神王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
白雪郷
あらすじ
 日の出神は恐がる三人の男を連れ山中に向った。男達の中の一人は、「健寅彦の宣伝使が子分を連れてくる」と震っている。男達は「殺されてまで信仰をつらぬくのはばかなことだ」と言うので、日の出神は彼らを一喝した。
名称
乙 甲 健寅彦 日の出神 丙
幽霊 ウラル彦 お照
 
本文    文字数=4268

第一〇章 附合信神〔三一〇〕

 日の出神は、ビクビク顫ふ三人を先頭に立て山深く進みけるが、先頭に立てる甲は忽ち『キヤツ』と一声、その場に仆れたり。
 乙は驚いて抱き起さうとするを、甲は眼を塞ぎ首を左右に振りながら、
『おい最うこらへてくれ、ドエライこつちや。今それ、健寅彦の宣伝使が仰山乾児を連れて此方へ来るぢやないか。それツ』
と目を塞ぎながら前方を指さしてブルブル顫へて言ふ。
『何にも来やあせぬぢやないか。猫一匹居りはせぬのに、貴様何だい、大方幻でも見たのだらう』
『此奴は何時もビツクリ虫を腹の中にやつと飼うとるからな。此奴と歩くと俺までが顫ひ出すわい。こんな腰抜は帰なしてやつた方がよからう。モシモシ宣伝使様、こンな奴を連れて行つては足手纏ひになつて大変な御迷惑をかけるかも知れませぬ。我々二人がお供をしますから、此奴はもう帰してやつて下さい。おい、もう除隊だ。勝手に帰つて留守の家で鼠と一緒に仲ようせい。貴様の嬶アは今ウラル彦の宣伝使に喰はれてしまつてるかも知れぬぞ。早う帰つて線香でも立ててやれ。俺はかういふものの独身者だから、脛一本、ラマ一本だ。しかし貴様や甲になると、さういふ訳には行かぬから気の毒なものだ。それだから、三五教の宣伝使様が荷物を軽うして置けとおつしやつたのだよ』
丙『馬鹿な事を言ふない。貴様だつてあのお照を嬶アにすると言つたぢやないか。そのお照は今ごろ宣伝使に殺されとるぞ。あまり大きな声で太平楽を言ふない』
『おい、好い加減に話を切り止めて案内せぬか』
『ハイハイ、今案内いたします』
と拳を握り人指し指をニユーツと出して、
『モーシ、宣伝使様、どうにもかうにも足が向ふへ出ませぬ。かう行つて、かう行つて、かう曲つて、かう寄つてツーとお出なさいませ』
『そんなことを言つたつて分るか、この深山が』
『俺だけ、それなら堪へてくれるか。家まで送つてくれ。丙は俺の後について乙は前になつて俺の所まで送つた上で、宣伝使様のお供をしてくれ』
『コラコラそンな悠長な事ではない。貴様はそンな弱いことでどうするのか。苟も三五教の教を聞いた者のする所作か』
『ハイ、私は何の事ぢやかテンと分りませぬが、酋長様が拝めとおつしやるので拝まぬと叱られますからなア。邪魔くさいけれどイヤイヤ祭つとりますので』
『この郷の奴は皆そンな信仰か』
『ハイ』
と言ひかけて、首を振り、
『イエイエそれは私一人のことです。他の奴共はどンな信仰有つとるかテンと分りませぬ。何だか知れませぬが、しぶとい信仰を持つとります。ウラル彦の宣伝使にエライ目に遇はされても信仰は変へぬといつて気張つてます』
『たとへ殺されてもこの神様には離れぬと言つてますぜ。命知らずですなア。ほンとに馬鹿ですなア。私らの思ふのには、敵はぬ時に助けて貰うための信仰なのに殺されてまで信仰する馬鹿があるものか。トンと合点が行かぬがなア』
『何ツ、殺されても信仰を変へぬというか。エライ奴だ。見込みがある』
『へー殺されても信仰するつて幽霊になつて信神するのですか。ケタイな神さまですなア』
日の出神は大喝一声、
『馬鹿!』
と言つたその声に三人は驚いて、両手をひろげ口を開けて、思はず知らず、二三尺飛び上る。日の出神はこれらの弱虫に目もくれず、ドシドシとまたもや宣伝歌を歌ひながら、山奥さして進み行く。

(大正一一・一・三〇 旧一・三 桜井重雄録)



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