出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語07-1-41922/02霊主体従午 石土毘古王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
大台ケ原
あらすじ
 白竜は、天の御柱神(伊弉諾神命)の御子の石巣比売であった。夫の石土毘古司と共に大台ケ原を守っていたのだ。
 ニ神はウラル彦に憑依していた八岐大蛇が大台ケ原を襲ったので、帰順したふりをして従っていた。そこへ、「石土毘古司が殺されそうだ」と知らせてきた者があった。石土毘古司は巌屋の中で八岐の大蛇に責められていた。
名称
石巣比売 石土毘古司 白竜 日の出神 真鉄彦 豆寅* 康代彦 八岐の大蛇
悪神 天の御柱大神 神伊弉諾命 ウラル彦 邪神 野立彦神 竜神
アーメニヤ 葦原の瑞穂の国 大台ケ原 神言
 
本文    文字数=5443

第四章 石土毘古〔三〇四〕

 日の出神は白竜に向ひ、
『いま汝が我が前に正体を現はし、帰順の意を表したるは何故ぞ。汝には最も深き謀計あらむ。一旦帰順と見せかけ、神々が心を緩ませ、その虚に乗じて我々を亡ぼさむとするか。その手は喰はぬぞ、有体に白状せよ』
と三方より詰め寄れば、白竜は両眼に涙を湛へ、頭を大地に摺りつけ絶対帰順の意を表するにぞ、真鉄彦は長剣を揮つて、電光石火、白竜の頭部を目がけて斬りつくれば、一条の血煙上空に向つて立ち昇るよと見る間に、白雲濛々として起り、咫尺を弁ぜざるに到りぬ。ややしばらくありて、濛々たる白雲の中より以前の女性茫然と現はれ来り、声も微に語るやう、
『妾こそは、天の御柱神の御子にして、石巣比売と申すものなり。我夫は石土毘古と申し侍る。常磐堅磐の松の世の礎たらしめむとしてわが父大神は、この御山に巌窟を作り我ら夫婦を此処に住はせたまふ。しかるにアーメニヤのウラル彦に憑依せる八岐の大蛇は、如何にしてこの仙郷を探りたりけむ、数多の邪神を引き連れ当山に襲ひ来りて我ら夫婦を亡ぼし、自ら代つて当山の主たらむとしたりしを、妾は佯つて彼が味方となり、汝ら救ひの神の来るを待ちつつありしが、今や天運循環してこの喜びに遇ふ』
と初めて語る巌窟の秘密、三柱の神は言葉を揃へて、
『貴女は噂にきく石巣比売に御座せしや、思はぬところにて不思議の対面、これぞ全く幽界に鎮まりたまふ、野立彦神の御引き合せ、嬉しや忝なや』
と四柱一緒に手を拍つて神言を奏上したりける。この時前方より一人の男慌しく走りきたり石巣比売に向ひ両手をつきながら、
『一大事が出来いたしたり。石土毘古は今や八岐の大蛇のために虐殺されむとしたまふ。我はその惨状を見るに忍びず、貴女に報告に参りたり。すぐさま来らせたまへ』
と云ふより早く、ひらりと体を躱し一目散にもと来し道を走り行く。
 ここは巌窟の最も奥深き一室にして、幾百丈とも知れぬ大瀑布が落ちゐたり。瀑布の傍には大小無数の鐘乳石よりなれる自然の石像、数限りなく停立し、かつ一方瀑布の左側には、水晶の母岩針のごとく立ち並び、あたかも氷の刃を立てたる如くなりき。傍の高座には白髪異様の大男、大蛇の変化は、数多の部下を従へ石土毘古を高手小手に縛め、従者共をして石土毘古の身体を氷の刃の上に、どつとばかりに投げつけ、またもやこれを頭上に差し上げ、再び投げつけ、終つて大瀑布に投じ、浮み来るを見るや再び刺股をもつて前後左右より滝壺に押し込み、虐待の限りをつくし、再び大蛇の前に引き据ゑきたつて厳酷なる訊問を始めたり。その中の大男の一人は、
『汝は石土毘古ならずや。今まで大台ケ原の竜神と佯り我らを籠絡し、日ごろの大望を破壊せむとする悪逆無道の敵なり。表面帰順せし如く見せかけ、汝が妻の石巣比売と共に我に近く仕へ巌窟の秘密を探り、これを聖地の日の出神に密告せしならむ。すみやかに白状におよべ。この上一言にても詐言をなさば汝を首途の血祭りとなし、妻も同じく虐殺し、次で日の出神を亡ぼし、直に天下に躍り出でて葦原の瑞穂の国を我意のごとく蹂躙せむ。汝いかに勇猛なりとも、敵中に陥り如何に焦慮するも衆寡敵せず及ばぬ忠義立をなさむよりは、今より我に降服し、心底より我に従ふか。返答次第によつては汝夫婦の生命は風前の燈火、所存は如何に』
と厳しく責め問ひけるに、石土毘古は些も恐れず、
『いかに衆寡敵せずとは雖も、我ら夫婦は神伊弉諾命の御子にして当山の主たり。悪魔の張本八岐大蛇の如き素性卑しき悪神に、如何でか降服せむや。汝今より悪を悔い善に移り、我々に従つて神業に参加せざるか。神は一切の神人を愛したまふ。徒に悪神を殺すは、我の欲するところに非ず。もはや今日は日の出神、康代彦、真鉄彦の三柱の勇将、巌窟の奥深く進み来れり。我こそ実に鬼に鉄棒なり。汝悪神の運命はもはや尽きた。鶏卵をもつて巌より堅きわが石土毘古に抵抗するは、自ら滅びを招くものぞ、汝速かに悔い改めよ』
と手足を縛られながら説き諭せば、八岐大蛇は大に怒り、
『いまはの際に何の繰言。皆の奴ども彼を突け、彼を打て、斬れよ』
と厳しく命令すれば、
『アイ』
と答へて数多の部下は、各自に柄物を携へ、四方八方より攻囲む。一人の伴の奴は何思ひけむ、一目散にこの場を駆け出し、行衛をくらましける。

(大正一一・一・三〇 旧一・三 加藤明子録)



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