出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語06-8-481922/01霊主体従巳 鈿女命王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
ローマ
あらすじ
 ローマの十字街で群集は敵味方の別なく混乱状態となる。そこへ出雲姫が現れて、面白い歌で混乱を静めた。元照別天使の行列は城に戻った。その後、城から宣伝使たちを迎えに来た。
名称
出雲姫 岩彦 仁王 広道別天使 元照別
天津神 天宇受売命! 天の御柱大御神 岩戸別神! ウラル彦 ウラル姫 櫛岩窓神! 国の御柱大御神 手力男神! 地獄 撞の御柱大御神 豊岩窓神! 元暗別
天の岩戸 十字街 根底の国 ローマ ローマ城
 
本文    文字数=5986

第四八章 鈿女命〔二九八〕

 一旦逃げ散つたる群集は、再び十字街頭に潮のごとく集まつて来た。さうして互ひに争論をはじめ、つひには撲り合ひ、組打の修羅場となつた。敵味方の区別なく、手当り放題に、打つ、蹴る、撲る、たちまち阿鼻叫喚地獄の巷と化し去りにける。
 例の仁王は依然として、十字街頭に硬くなり佇立しをる。
 一方元照別の従者は、声をかぎりに制止した。されど争闘はますます激しくなりぬ。
 このとき女の宣伝使は、群集の中に蓑笠を脱ぎ捨て、花顔柳腰あたりに眼を欹てながら、悠々として長袖を振り、みづから謡ひつつ舞ひはじめける。

『羅馬の都の十字街  押し寄せきたる人の浪
 心も暗く身も暗き  常夜の暗のウラル彦
 ウラルの姫の曲事に  相交こりて村肝の
 心も曇る元暗の  別らぬ命の誕生日
 飲めよ騒げの宣伝歌  一寸先は真の暗
 暗の夜には鬼が出る  鬼より恐い仁王さま
 十字街頭に待ち受けて  元暗別の素首を
 抜くか抜かぬかそりや知らぬ  知らぬが仏の市人は
 元暗別に欺されて  眉毛を読まれて尻ぬかれ
 尻の締りはこの通り  渋紙さまが現はれて
 渋い顔して拳骨を  固めてござる恐ろしさ
 殿さま恐いと強飯を  こはごは炊いて泣面で
 おん目出目出たい御目出たい  目玉の出るよな苦面して
 血を吐く思ひの時鳥  ホツと一息する間もあらず
 現はれ出たる荒男  その振り上げた拳骨に
 荒肝とられてあら恐い  荒肝とられてあら恐い
 恐い恐いと言ひながら  何が恐いか知つてるか
 何程威勢が強くとも  心の暗い元暗別の
 醜の霊や仁王さま  それより恐いは踵の皮
 まだまだ恐いものがある  天地を造り日月を
 造つてこの世を守られる  神の律法は厳しいぞ
 律法を破ればその日から  根底の国へと落されて
 焦熱地獄や水地獄  地獄の釜の焦おこし
 それも知らずに今の奴  盲目ばかりが寄り合うて
 飲めよ騒げと何のざま  一寸先は火の車
 廻る因果の報いにて  羅馬の都は眼の当り
 焼けて亡びて真の暗  栄華の後には月が出る
 月は月ぢやが息尽きぢや  きよろつきまごつき嘘つきの
 嘘で固めた羅馬城  天津神より賜ひたる
 元の心を研き上げ  元照別の神司となり
 三五教の神の法  耳を浚へて聴くがよい
 お前の耳は木耳か  海月の如く漂うた
 この人浪をどうするぞ  浪打ち噪ぐ胸の中
 さぞや無念であろほどに  慢心するにもほどがある
 羅馬の都を輿に乗り  吾物顔に練り歩く
 貴様は脚はどうしたか  虎狼や豺の
 やうな心で世の中が  治まる道理は荒浪の
 浪に漂ふ民草を  どうして救ふ元暗の
 別の判らぬ盲目神  か弱き女人の吾なれど
 天津御空の雲別けて  降り来れる出雲姫
 出雲の烏が啼くやうに  うかうか聞くなよ聾神
 盲目聾の世の中は  なにほど立派な神言も
 どれほど尊い神さまの  声も聞けよまい御姿も
 見えはしまいが神様に  貰うた身魂を光らして
 元照別の天使となり  昔の心に立復り
 撞の御柱大御神  天の御柱大御神
 国の御柱大神の  御前に詫びよ伏し拝め
 元は尊き大神の  分けの御魂と生れたる
 元照別にはあらざるか  甲斐ない浮世に永らへて
 吾物顔に世の中を  振れ舞ふお方の気が知れぬ
 ヤツトコドツコイ、ドツコイシヨ  ヨイトサー、ヨイトサ
 ヨイヨイヨイの  ヨイトサツサ』

と節面白く、手つき怪しく踊り狂うた。
 木綿の洗濯物に固糊を付けたやうに、街頭に鯱張つて居た岩彦も、大の男も、この歌にとろかされて、何時のまにか菎蒻のやうに、ぐにやぐにやになつてしまつて居た。
 広道別天使は女宣伝使にむかひ、
『貴方は噂に聞く、出雲姫におはせしか。存ぜぬこととて、無礼の段御許しくだされませ』
と慇懃に挨拶した。
 出雲姫は丁寧に挨拶を返す折しも、礼服を着用したる四五の役人らしき者、前に現はれ丁寧に辞儀をしながら、
役人『私は羅馬の城に仕へまつる端下役であります。今城主の命令により参りました。どうかこの駕籠に乗つて羅馬城へ御出張を願ひたい』
と頼み入つた。
 元照別天使の輿は何故か、後へ一目散に引返してしまつた。
 この群集の中から現はれ、十字街頭に拳を固め、口を開いたなり強直してゐた大の男は、いよいよ改心して宣伝使となり、天の岩戸の前において手力男命と相並び、岩戸を開いた岩戸別神の前身である。
 手力男神のまたの名を、豊岩窓神といひ、岩戸別神のまたの名を、櫛岩窓神と云ふのである。さうして今現はれた出雲姫は、岩戸の前に俳優をなし、神々の顎を解いた滑稽洒落の天宇受売命の前身である。

(大正一一・一・二四 旧大正一〇・一二・二七 井上留五郎録)



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