出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語06-2-121922/01霊主体従巳 起死回生王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
長白山
あらすじ
 日の出の守は薬草を使って春日姫を治した。日の出の守は春日姫に「モスコーに帰って家を守り、夫の帰りを待て」と勧めるが、春日姫の宣伝の決意は変わらなかった。三人は長白山を降って、三方へ散った。
名称
春日姫 春姫 日の出の守
皇神 鷹住別 南天王!
伊吹山 顕恩郷 モスコー 山薊 山芹
 
本文    文字数=4091

第一二章 起死回生〔二六二〕

 久方の天と地との大道を、解き分け進む宣伝使、世は烏羽玉の闇の世を、洽ねく照らす日の出の守、深山の奥に分け入りて、神の御旨を伝へ来る、月日も長き長白の、山分け進む神司の、雄々しき姿今ここに、三つの身魂のめぐり逢ひ、深き縁の谷の底、底ひも知らぬ皇神の、恵みの舟に棹さして、大海原や川の瀬を、渡る浮世の神柱。
 ゆくりなくも、ここに一男二女の宣伝使は邂逅したりける。春日姫は苦しき息の下よりも幽な声をふり絞り、
『貴下は大恩深き南天王の日の出の守にましますか。みじめなところを御目にかけ、御耻かしく存じます』
と言葉終ると共に、息も絶え絶えにまたもや打伏しにける。日の出の守は両眼に涙をたたへ、黙然として春日姫を打ち眺めつつありしが、ツと立ち上り、傍の叢を彼方こなたと逍遥しながら、二種の草の葉を求めきたり、両手の掌に揉み潰し、雫のしたたる葉薬を春日姫の疵所にあて介抱したりける。
 これは各地の高山によく発生する山薊と、山芹にして、起死回生の神薬は、これを以て作らるるといふ。日本では伊吹山に今に発生し居るものなり。
 見るみる春日姫は、熱さめ痛みとまり腫れは退き、たちまちにして元の身体に復し、さも愉快気に笑顔の扉開きける。ここに三人は歓喜極まつて、神恩の厚きに落涙したり。
 日の出の守はおもむろに春日姫に向ひ、
『貴女は顕恩郷の南天王として夫婦睦じく住まはせ給ふならむと思ひきや、思ひがけなき宣伝使のこの姿。変り易きは浮世の習ひとは言ひながら、何ンとしてかかる深山にさまよひ給ふぞ。また鷹住別は如何はしけむ、その消息を聞かまほし』
と訝かしげに問ひけるに、春日姫は一別以来の身の消息を、こまごまと物語り、かつ世の終末に近づけるを坐視するに忍びず、身命を神に捧げて、歩みも馴れぬ宣伝使の苦しき旅路の詳細を物語りけるに、日の出の守は言葉を改めて、
『至仁至愛の神心を奉戴し、世を救ふべく都を出でての艱難辛苦お察し申す。さりながら、女たるものは家を治むるをもつて第一の務めとなす。汝が夫鷹住別の宣伝使として浪路はるかに出でませし後のモスコーは、年老いたる両親の御心のほども察しやらねばなりますまい。貴女はすみやかにモスコーに帰り、父母に孝養を尽し、神を祈りて、夫の帰省を心静かに待たせたまへ』
と勧むるにぞ、春姫はその語に次いで、
『隙間の風にもあてられぬ貴き女性の御身の上として、案内も知らぬ海山越えて、神のためとは言ひながら、御いたはしき姫の御姿、一日も早くモスコーに帰らせたまへ。妾は今よりモスコーに汝が命を送り届け参らせむ』
と真心面に表はして、涙と共に諫めけるにぞ、春日姫は首を左右に振り、
『二司の妾をかばひたまふその御心は、何時の世にかは忘れ申さむ。されど一旦思ひ定めた宣伝使、たとへ屍を山野に曝し、虎狼の餌食となるとも、初心を枉ぐる事のいとぞ苦しければ』
と二司の諫めを拒みて動く色見えざりければ、日の出の守も春姫も、巌を射抜く春日姫の固き決心に感歎し、三人の司は相携へて長白山を下り、東、西、南の三方に宣伝歌を謡ひつつ袂を別ちたりける。

(大正一一・一・一七 旧大正一〇・一二・二〇 嵯峨根民蔵録)
(第一一章~一二章 昭和一〇・一・二八 於筑紫別院 王仁校正)



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